【中医基礎理論 第37講】 - 五行学説 - 相生 + 相克 = 制化
前回は、五行の「相克関係」を学んだ。
相生というアクセルと、相克というブレーキがバランス良く働くことで、人も自然も世界も正常に運行している。
相生と相克が正常に機能している状態を「制化」という。
今回は、「制化」について学んでいく。
制化
制化とは、「五行間において相互に化生(相生)し、相互に制約(相克)することで、協調関係の平衡を維持すること(相生と相克の結合)」である。
生中有克(相生の中に相克あり)
もし、相生しかなければどうなるだろう?
木は火を生み、火は土を生み・・・水は木を生み、そしてまた木は火を生み・・・と、これが延々と続くと生産が過剰となってしまう。
そこで、相生の過剰生産を抑制するために相克が働く。
これを「生中有克(相生のなかに相克あり)」という。
木・火・土の関係でみてみよう。
「木が火を生み、火が土を生むが、同時に土には木からの相克が働き、過剰な生成が抑制される」となるのだ。
これと同じことが他の五行にも働いている。
「火が土を生み、土が金を生むが、同時に金には火からの相克が働き、過剰な生成が抑制される」
「土が金を生み、金が水を生むが、同時に水には土からの相克が働き、過剰な生成が抑制される」
「金が水を生み、水が木を生むが、同時に木には金からの相克が働き、過剰な生成が抑制される」
「水が木を生み、木が火を生むが、同時に火には水からの相克が働き、過剰な生成が抑制される」
この様に、相生の中には必ず相克があり、結果的に過剰な生成を抑制しているのだ。
うまくできているなぁ。
克中有生(相克の中に相生あり)
今度は、相克の観点からみてみよう。
もし、相克しかなければどうなるだろう?
木は土を克し、土は水を克し・・・金は木を克し、そしてまた木は土を克し・・・と、これが延々と続くと何も生まれない状態になってしまう。
そこで、物事を生み出すために相生が働くのだ。
これを「克中有生(相克のなかに相生あり)」という。
木・土・水の関係でみてみよう。
「木が土を克し、土が水を克すが、同時に水は木を生み出すので、過剰な抑制が防がれる」となるのだ。
これと同じことが他の五行にも働いている。
「火が金を克し、金が木を克すが、同時に木は火を生み出すので、過剰な抑制が防がれる」
「土が水を克し、水が火を克すが、同時に火は土を生み出すので、過剰な抑制が防がれる」
「金が木を克し、木が土を克すが、同時に土は金を生み出すので、過剰な抑制が防がれる」
「水が火を克し、火が金を克すが、同時に水は木を生み出すので、過剰な抑制が防がれる」
この様に、相克の中には必ず相生があり、結果的に過剰な抑制を防いでいるのだ。
うまくできているなぁ。
この様に、相生と相克が同時に機能することで、五行は平衡協調(バランスをとって調和する)し、持続的な発展・変化をしていのである。
そして、この状態を「制化」という。
相克だけで動的平衡
五行も陰陽と同じく「動的平衡」によりバランスをとっている。
それぞれのパワーが増えたり減ったりしながらも、正常な範囲に治まっているのだ。
「制化」により動的平衡が維持されているのだが、実は相克だけで動的平衡を維持できるという考えがある。
それが「五行勝復」だ。
五行勝復
五行勝復とは、「五行のある一行が偏盛した場合、偏盛と偏衰が順番に起こり、最終的に原因となった五行の一行が制約され、全体のバランスが整うこと」を意味する。
難しい・・・
実際に例をみていこう。
例えば、木の力が盛んになったとする(勝気という)。
盛んになった木は土を強く制御する。
その結果、土は力を失い弱まってしまう。(①)
ここまでは大丈夫だろうか?
力を失った土は水を制御できず、制御を失った水は力が増加する。(②)
水は増加した力で火を制御する。
結果、火は力を失い弱まる。(③)
力を失った火は金を制御できず、制御を失った金は力が増加する(復気という)。(④)
金は増加した力で木を制御する(⑤)。
その結果、盛んだった木は正常な状態に戻る(⑥)。
盛んだった木が正常になった。ここまでは大丈夫だろうか?
話はまだ続く。
木が正常になれば、土に対する強い制御が治まるので、土は正常な状態に戻る。
土が正常な状態になれば、水へ適切な制御がかかるので、水は正常な状態に戻る。
水が正常になれば、火への強い制御が治まるので、火は正常な状態に戻る。
火が正常な状態になれば、金へ適切な制御がかかるので、金は正常な状態に戻る。
そして、金はいつも通りの正常な制御を木に対して行う。
こうして、五行全てが元通りの状態(平衡状態)になるのだ。
これが「五行勝復」の流れである。
すごく良く出来た仕組みだと思わないだろうか?
五行勝復に隠された人間ドラマ
五行勝復は、「子復母仇(子が復讐して母の仇をうつ」とも言われる。
すごいパワーワードである。
先ほどの例をみてほしい。
過剰な力で木に抑制された土がいた。
最終的に、その木を抑制したの金である。
金は土の子なのだ。
まさに、木(敵)に虐げられた土(母)の仇を、金(子)がうったのである。
五行勝復の中に、そんな人間ドラマがあったなんて・・・つくづく中医学は奥が深いと痛感する。
勝気と復気の調節機構を通じて、五行は局所的な不均衡が発生した場合でも自己調整を行い、全体が調和の取れた状態に回復することができるのだ。
五行ってスゴくない?
まとめ
今回は五行学説の「制化」について学んだ。
ポイントは3つ。
相生の中に相克があり、相克の中に相生がある
相生と相克を合わせて「制化」という
相克関係だけでも動的平衡が保たれる(五行勝復)
相生と相克、そしてそれらが同時に働いている「制化」は人体が正常に機能するのに必須の法則である。
この「相生」や「相克」が失調したとき、人は病気になる。
今後は五行の「病理」について学んでいくのだが、その前に、次回は相克にスポットを当てて、相克が歴史的にどの様に使われてきたのか、その例をいくつかご紹介していきたいと思う。
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