【中医基礎理論 第46講】 -人体の基本物質- 元気って何?元気の生成、分布、機能のまとめ!
人体の「気」の分類
人体の「気」は、その生成の由来、分布する部位、および機能の特性に応じてさまざまな名称を持っています。「気」の分類は次の三つの層次に分かれます。
第一層次:人全体の気、すなわち「人身の気」、または「一身の気」とも呼ばれるもの。
第二層次:元気、宗気、営気、衛気という特定の気。
第三層次:臓腑の気と経絡の気。
(一) 元気
元気とは、腎精から化生される気です。《難経》では「原気」ともよばれ、人体で最も根本的かつ重要な気であり、生命活動の原動力となる気です。
1. 生成と分布
元気は、腎精から化生します。腎精は先天の精を基礎とし、同時に後天の精によって滋養されています。そのため、元気が充実しているかどうかは先天の精だけでなく、脾胃の運化機能や飲食による栄養吸収、およびそこから生じる後天の精の充実度にも依存します。先天の精が不足して元気が虚弱な場合でも、後天の滋養を通じて元気を補うことが可能です。
《景岳全書・論脾胃》には「故人之自生至老,凡先天之有不足者,但得後天培養之力,則補天之功,亦可居其强半,此脾胃之気所関于人生者不小。(生まれてから老いるまで、先天の不足がある場合でも、後天の養育の力を得ることでその不足を補うことができる。その効果は大きく、脾胃の気は人生において重要な役割を果たす。」と記されています。
元気は三焦を通じて全身へ流れます。《難経・六十六難》では「三焦者,原気之別使也,主通行三気,経歴于五臓六腑。(三焦は原気の使者であり、三気(宗気、営気、衛気)を通行させ、五臓六腑へ行き渡らせる。」と記されています。元気は三焦を通り道として全身を循環し、内では五臓六腑、外では肌表や腠理に至るまで、身体中どの場所にも行き渡ります。
2. 生理機能
元気の生理機能は主に以下の二つです。
人体の生長発育および生殖機能を推動し調節する
元気が充実していると、身体は正常に生長発育し、臓腑、経絡、形体、官竅の生理機能も盛んになるため、健康で病気も少なくなります。もし、先天的に身体が弱かったり、後天の養育が不十分であったり、長期の病気で元気が損なわれたりすると、元気の虚衰によって生長発育が遅れたり、生殖機能が低下したり、あるいは未老先衰(若くして衰える)といった症状がみられることがあります。各臓腑、経絡、形体、官竅の生理活動を推動し調節する
元気は「元陰」と「元陽」を含み、人体の陰陽の根源で、臓腑の陰陽の基礎です。元気は「元陽」として推動、興奮、温煦といった機能を発揮し、「元陰」として安定、抑制、涼潤といった機能を発揮します。元陰と元陽が調和・均衡していると、元気は生命活動の推動と調節の機能を十分に果たすことができます。
《景岳全書・伝忠録下》では、「命門為元気之根,為水火之宅,五臓之陰気非此不能滋,五臓之陽気非此不能発。(命門は元気の根であり、水火の宿る場所である。五臓の陰気はこれによって滋養され、五臓の陽気もこれによって発動される。」と記されているように、元気は臓腑の陰陽を支え、全身の生理機能を調節する重要な役割を担っています。
アントニオ猪木さんの「元気があればなんでもできる!」はとても的を射ているのです。
次回は宗気について学びます。