夢の話

この前昼寝をしていたときに見ていた夢の話。

 僕は超能力者だった。なんの超能力かはわからないがそれでもそれなりに楽しく暮らしていた。しかし、超能力者だとバレた自分は命を狙われることになった。
 僕は〈理性〉と〈感情〉に分裂した。それは比喩としてではなく、実体として分裂した。そして〈感情〉のほうが敵と対峙する。近くで爆ぜると10秒間意識を失うカプセルを投げてくる敵に対してそれを避けながら仲間と〈理性〉のもとへと逃げる。彼は一度カプセルの爆発に巻き込まれたふりをして油断して近づいてきた相手に一撃をお見舞いする。
 そうして〈理性〉や仲間のところへ戻るが、そこもじきに追い詰められた。「くそっ」と言葉を残して仲間が撃たれる。〈理性〉は意を決する。〈母〉からバターナイフを受け取り彼はそれを自らの首に突き刺す。薄れゆく意識の中で彼は思う。「これでいいのだ」〈理性〉と〈感情〉の両方が逃げおおせるのは無理な状況であった。であれば、実体の死を偽装することで〈感情〉を逃すのが最善の策であった。この状況で〈感情〉が死を選ぶことはできないのだから。

 僕はバターナイフが首に深く突き刺さる感覚を覚えて目覚めた。夢とはそのようなものだ。僕は自らの首筋をさする。もちろん何も変わったところはない。そして僕はまた浅い眠りへと戻っていく。

 〈感情〉はとある部屋で目を覚ます。隣には女が寝ている。まだ的には見つかっていないようだった。〈感情〉はどこか衰弱していた。逃走生活がそうさせたのかもしれないし、尽きつつある逃走資金の悩みがそうさせているのかもしれない。女が目を覚ます。女は〈感情〉に付き合おうと言う。感情は逃走前に残してきた女のことを思い答えを出せずにいた。

 感情は我儘なのかもしれない、しかし、それでも自由とは言えないだろう。もちろん何かが自由であるかそうでないかと言う議論において何が自由であるかの策定は必要であろうが。
 〈感情〉には〈理性〉必要なのかもしれない。分裂すべきではなかったのかもしれない。そもそも〈感情〉と〈理性〉が分離可能だと考えるのも傲慢かもしれない。しかし、それは夢の話。

 

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