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驅里 志南 最少の笑いで邦を修めし宰相

第1話 超参なる王(ワン)ちゃん


驅里 志南なる人物が最古の文献に現れる以前から、彼に関する伝承がある。

現在の學説では、彼の名前の存在は、役職名又は政策集団所謂シンク・タンクとでも云うのが、適当であり、遥か古の或る邦の宰相であり、其の邦は王を戴いていた。

王も宰相もある時は世襲又其の係累に相応しい者無き時は禅譲であり、大変栄えていた、と伝わっている。

王は傀儡などではなく、威厳も能力も持ち合わせてはいたが、飽く迄権威及び象徴であり元首、宰相は権力を用いて経世済民を実行し、王を重んじ、其の権威に服していた。

以下は、俗謡でも最古の伝承である。

超参王は苛立った。

彼は冗談や笑いが嫌いな様子なので、彼が現れると人人は笑いを辞め、真摯な顔つきをする、のが慣いとなっていた。

王室に慶事があり、宴が開かれた。

だが、王の手前、招かれた者は皆、厳粛な表情で、通夜みたいな状況であった。

此処で、宰相である驅里志南が現れ、一席、謳いながら舞いを──


「饗応ありて、皆、難しき顔、主の様子ばかりを窺って、笑うも出来ず、まるで通夜、艶ある話も出もせず、怖い顔を和らげて、どうぞ、笑ってくだしゃんせ──」

斯くなるを見し超参王、彼は素素、聡明で、或る時、冗句を言ったのだが、誰も其れに気づかず、其の事にナイーブな彼は傷つき、いつも難しい表情を浮かべていたのだ。

「あーはっはっはっはー」

大声で彼が笑うと、皆も釣られて、大笑い。

斯くして、宴は大盛り上がり。



素素、気さくで人懐こい、愛らしい性格の王は邦民にも敬愛され、何時しか、親しみを込めて、「王(ワン)ちゃん」と呼ばれるようになるのだが、彼も其れを好しとし、大いに明るき御代であった。

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