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海外進出 何故失敗する!?
【海外進出を検討する経営者の悩み】
機械部品業を営んでいます。取引先の要請があり、インドへの工場進出を検討しています。成功事例はセミナーや書籍等によく取り上げられていますが、失敗の事例からも学びたいと思います。その原因はどこにあるでしょうか?
【質問に対するお答え】
主要な海外進出の失敗事例を分類すると、販売問題、労務問題、合弁相手、調査不十分、放漫経営、カントリーリスク等が挙げられます。海外は日本以上に予測不可能な環境変化が発生しますので、細心の注意を払って実現可能性調査を行い、進出を決定すべきです。進出後も情報収集に努めリスクの最小化を図るべきです。以下各事例に分けて解説します。
1.販売問題でしくじる
「仕事を出すから」との口約束で、親企業から海外進出を求められ、人材不足の中苦労して現地工場を立ち上げました。ところが、ローカルコンテント法の強化により、親企業が現地企業からの調達を強いられ約束の注文を出せなくなり、結局撤退せざるを得なくなりました。
また現地競合企業は品質・納期管理に劣るのが通常であるにもかかわらず、価格での競争を強いられ、採算が取れなくなり撤退した例もあります。
ローカルコンテント法とは、製造に必要な材料や部品を進出国内で購買しなければならないとして規制する法律です。例えば、自動車を作るためのおよそ30万個の部品の内、30%は現地のものを使うことなどを義務付けるものです。最初は部品を輸入して組立てることから多くの完成品のビジネスはスタートしますが、現地企業を育成し雇用拡大を図るために現地政府は次第に部品の現地生産を求めるようになります。
2.労務問題でしくじる
日本的慣行を持ち込み、日本人幹部による完璧な労務管理を試みましたが、現地社員の反発を招きました。現地人通訳を通しての労働組合との対話も試みましたが、ストライキを打たれてしまいました。通訳は労働契約や訴訟の知識のない技術通訳でした。最初から労務コンサルタントや弁護士を雇うべきでしたが後の祭りです。
また近隣に外資系企業が林立し、当初予定していた生産技術者や管理職の確保が十分出来ませんでした。労働者は労働意欲が高く、勤勉でしたが、より良い条件を求めての転職者が相次ぎ、引き止めるために計画以上に賃金を引き上げざるを得なくなりました。
3.合弁相手の実力を誤りしくじる
現地国内販売の販路を確保するために、地方政府から紹介された現地企業と合弁会社を設立しました。この会社の社長はプレゼンが上手で、市場規模や競合との優位性など鵜呑みにしてしまい、合弁相手の実力チェックを怠りました。 営業マンの動きが悪く、受注が思うように伸びず、在庫管理も十分出来ず返品が相次ぎました。合弁相手の選択が悪かったと気付きましたが後の祭りで、現地市場からの撤退を余儀なくされました。
4.調査が不十分でしくじる
当社はワンマン経営で急成長した企業です。海外進出に際しても経営トップ自らが現地訪問しトップの判断だけで進出を決定しました。経営トップが早急に進出を決めてしまったため、その後は工場進出の立地選定・設立手続きなどに調査内容が集中してしまい、客観性を欠いた事業計画となってしまい、税務対策や利益送金対策を怠ってしまいました。中小企業にありがちなケースですが、トップのビジネス感覚だけに頼るのは危険です。
5.放漫経営でしくじる
現地側の歓迎の態度が素晴らしく感動しました。勝手に舞い上がり日本本社の体力を顧みず追加投資や急激な規模拡大に走ってしまいました。新聞やマスコミに度々取り上げられ、日本現地合作のモデル企業とまで云われブレーキをかけることが出来ませんでした。資金繰りが続かず、政府は支援を申し出てくれましたが、結局倒産に追い込まれ撤退しました。
6.カントリーリスクを見誤りしくじる
親和性の高い安らかで勤勉な国民性に魅力を感じ進出を決定しました。ところが、宗教を背景とした国家紛争が突然発生し、止む無く建設工事を中断をしました。その後紛争は地域を拡大し断続的に発生し、終結の見通しがつかなくなりました。現地政府・地方自治体の方針も二転三転し、工場完成に至らず撤退しました。
昨今ミャンマーやバングラデシュにおける政変、ロシアのウクライナ侵攻等カントリーリスクの事例となるような事態が頻発しています。将来を予見することは難しいですが、進出前の調査活動を十分に行い、リスク対応計画を立てた上で現地進出を決定することは基本中の基本です。
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![林 隆男](https://assets.st-note.com/poc-image/manual/preset_user_image/production/ic3fd94079689.jpg?width=600&crop=1:1,smart)