神父の告白
フィリップ・グロードさん、
なぜ、神父になられたのか。
僕が投げたこの直球に
ぽろりと本音を
もらしたことがある。
フランス西部のブルジョアの生まれだが、
子供のころは手がつけられない
悪がきであった神父。
腕白で悪戯ばかりして学校を退学になり、
家で勉強して
バカロレア(大学入学資格試験)に受かった。
元の学校の先生に、神父になりたいと言ったら、
おまえのような奴は、暴力団に入るか、
神父になるしかないだろう、と。
28歳のときに、フランスから函館に来て
半世紀あまり。
ウィットに富み、
函館が大好きな神父を語らずして
函館を語ることなかれ。
先進的な福祉介護施設・ホーム旭ヶ岡の家、
今もつづく五稜郭公園の市民創作・
函館野外劇を立ちあげた
その存在は、函館の宝といえる。
日仏の文化交流により
母国よりレジョン・ド・ヌール勲章を授けられた。
聖母マリアの処女受胎なんて信じられない。
この素朴な、否、愚かな?
この直球にも、近いうちに
ゆっくりお話しをしましょう、と。
こう応えてくれたが、
降誕祭の日に逝ってしまわれた。85歳。
マリア受胎のまこと、
残念なことに聞きそびれてしまった。