舶来居酒屋 杉の子
学生のころ、函館駅前の柳小路で、
フィズ類を口あたりの良さについ総なめにして、
二日酔いならぬ三日酔いとなった。
ジンフィスにはじまりモカ、バナナ……。もちろん腰がぬけた。
函館が北洋の鮭鱒景気にわき、この通りも夜ともなれば
千鳥足がそこかしこ、遠い昔のことになる。
柳の葉がゆれるこの柳小路で昭和の最盛期、果物屋のバナナ倉庫だった建物を借りて開業した老舗バー、舶来居酒屋・杉の子。
2年ほどまえ再開発のあおりで近くに移転したが、
今も60年あまりの時をきざんで健在だ。
ラム酒の炭酸割り・ラムハイは開業当初から人気で、
一杯60円が今や250円となったが、ご時世からいえば懐にやさしい。
店主・青井元子さんの笑顔も素敵だ。
10年ほどまえの夏、初代店主・杉目泰郎が、
港の旧桟橋で一夜だけのバー杉の子を開いた。
僕もかけつけ、開港場の雰囲気を味わい潮風に吹かれる心地良さに酔った。店主の心意気やよし。
二代目の元子さんもその気質をひきついでいる。
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