上部消化管出血の評価と初期治療


非静脈瘤性上部消化管出血における内視鏡診療ガイドライン 
Gastroenterological Endoscopy Vol. 57( 8), Aug. 2015 より

消化管出血を疑わせる症状として吐血,黒色便,鮮血便などが知られてい る.一般的には前二者が上部消化管からの,後者が下部消化管からの出血を予想させる症状であるが,出血量が多い場合,上部消化管出血でも鮮血便を呈することがあり,Wilcox らの前向き観察研究によれば727 例の上部消化管出血患者のうち104 例(14%)が鮮血便を呈してい た .Srygley らのメタ解析によれば,上部消化管出血を疑わせる症状として,黒色便,経鼻胃管からの血液,BUN/クレアチニン比30 以上が上部消化管出血を疑わせる所見であ
っ た 23) .以上より,上部消化管出血を疑う場合,吐血,黒色便,経鼻胃管からの血液の有無,BUN/クレアチニン比のいずれかをまず確認すべきであ
る(evidence level Ⅰ,推奨度A).

上部消化管出血を疑った場合,静脈瘤性出血と非静脈瘤性出血では患者背景,内視鏡的止血の方法,予後などがそれぞれ異なるため,内視鏡検査
に先立って出血の原因がいずれかであるかを予測することは重要である.上部消化管出血患者における静脈瘤性出血と非静脈瘤性出血の予測に関する研究では,肝硬変や静脈瘤性出血の既往,アルコール多飲の既往,腹水の存在,血小板数低値,血清ビリルビン高値,PT - INR 高値などの血液検査所見は静脈瘤性出血を,抗血小板剤や抗凝固剤の服薬歴は出血性潰瘍などの非静脈瘤性出血を疑わせる所見であるとされる.この他,慢性肝臓疾患,肝硬変では脾臓径(血小板数/脾臓径比)の大きい症例,Child - Pugh score が悪い症例では,静脈瘤性出血のリスクが高くなるといわれているので,これらも参考に両者を鑑別す る.以上より,病歴,身体所見,臨床検査所見などから,静脈瘤性出血と非静脈瘤性出血を鑑別するとよい.
(evidence level Ⅳb,推奨度C1).


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