『成瀬は天下を取りに行く』
「言われたことをやる美学」から「自ら道を切り開く力
多くの人が、働く現場で「上から言われたことをきちんとこなす」ことが美徳だとされる時代に育ち、現在もその価値観の中で生きています。指示通りに動き、問題なく業務を遂行することが評価され、目立たないことが安全だとされてきた方も多いでしょう。
しかし、成瀬あかりの行動力はそれとは対照的です。彼女は「自分がやりたいこと」を堂々と主張し、挑戦していきます。これは、自己決定やキャリアにおける主体性を象徴しています。現代の職場では、ただ指示を待つだけでなく、自分の意見やアイデアを持ち、発信していくことが重要視されるようになっています。成瀬の生き方は、働き手が自分のキャリアを自分で切り開いていくことの大切さを教えてくれます。
逆境をチャンスに変える力
働く現場では、困難や逆境が避けられない場面もあります。外食産業においては特に、厳しい経営環境や変動する顧客ニーズに直面することが多く、変化への適応力が求められます。労働組合は、こうした逆境に立ち向かう働き手を支えるために存在しますが、成瀬のような「逆境をチャンスに変える力」を個々の従業員に育てることも重要です。
成瀬は閉店を控える西武大津店に毎日通い続け、その状況の中でも積極的にアクションを起こします。彼女は、閉店という「終わり」を受け入れるだけでなく、その中で自らの挑戦のきっかけを見つけ出しています。働く現場でも、逆境に直面した際、ただ耐えるのではなく、そこから新しい挑戦や成長のチャンスを見出していくことが必要です。組合としても、働く人々が困難を前向きに乗り越えられるよう支援する姿勢が求められています。
リーダーシップと周囲の巻き込み力
成瀬が漫才コンビ「ゼゼカラ」を結成する場面では、彼女が自らリーダーシップを発揮し、幼馴染の島崎みゆきを巻き込む姿が描かれています。これは、労働組合でも重要な要素である「周囲の巻き込み力」を体現していると言えます。組合活動においても、個々のメンバーが主体的に動き、仲間を巻き込みながら連携を強めることが成果を上げるカギです。
成瀬は、自分一人で突っ走るのではなく、仲間の力を借りながら大きな挑戦をしていきます。これは、職場でもチームワークやリーダーシップを発揮するためのヒントとなります。働く現場でリーダーやマネージャーとしての役割を担う際、仲間を巻き込み、力を引き出すことは、成瀬から学べる大切なスキルです。
「傾聴」と自己決定の重要性
成瀬は自分の道を進む一方で、周囲の意見にもしっかり耳を傾け、その上で自らの判断を下します。これは、「傾聴」の重要性を示しており、キャリアコンサルティングにおいても不可欠な要素です。組合活動でも、メンバーの声を聞き、それを組織としてどのように取り入れるかが成功のカギとなります。
また、成瀬のように周囲の声をしっかり聞いた上で「自分の決断を下す」力は、働く現場においても重要です。労働組合としても、個々の従業員が自己決定できる環境を整え、その判断を支援することが求められます。
滋賀県という地域の「変化に対応する力」
この物語の舞台である滋賀県は、隣接する京都や大阪に比べて「地方」として扱われがちな地域です。時にその存在を軽んじられたり、馬鹿にされたりすることもありますが、成瀬はそんな環境の中でも「天下を取る」と宣言し、地域の壁を越えて挑戦していきます。
職場環境においても、変化に直面した際にそれをチャンスとして捉え、自己成長の糧とする力が求められます。外食産業をはじめ、多くの業界が変動する市場に対応するために、従業員一人ひとりが成瀬のように「変化を恐れずに挑戦する姿勢」を持つことが重要です。
まとめ
『成瀬は天下を取りにいく』は、働く現場における逆境や挑戦に対して、ポジティブに行動するための教訓を与えてくれる作品です。労働組合として、またキャリアコンサルタントとして、私たちが支えるべき働き手のために、成瀬のように自分の信念を持ち、行動力を発揮する力を育むサポートが必要です。この本は、逆境に立ち向かいながらも、新しい挑戦に向かって進むための勇気を与えてくれる一冊です。