『クルマを売りたいなら、クルマの話はやめなさい!』
この本は、クルマの販売手法について書かれたものですが、実は外食業界や私たちが関わる労働組合の現場でも通じる多くのヒントが隠されています。クルマを「モノ」として売るのではなく、「体験」や「生活」を提案するという発想に、私は強く共感しました。
「商品を売らない」接客の重要性
外食業界も同じです。お客様が求めているのは、料理そのものだけではなく、その背後にある「体験」や「価値」なのです。例えば、レストランでの食事は単なる栄養補給ではなく、特別な時間を共有し、家族や友人との絆を深める場であることが多い。だからこそ、「美味しい料理」というモノだけを売り込むのではなく、お客様がその場所でどんな体験をしたいのか、どんな時間を過ごしたいのかを理解し、その期待を超えるサービスを提供することが鍵となります。
高塚さんの本に書かれていた、「クルマそのものの話をするのではなく、顧客がそのクルマを通じて得られる未来や生活の話をする」というアプローチは、まさに私たち外食業界にも通じるものです。どんなに美味しい料理が提供できても、それが「お客様の望む体験」につながらなければ、満足には至りません。
職場環境改善にも応用できる考え方
さらに、労働組合の委員長として、私は職場環境改善にもこの考え方を応用できると感じました。労働条件や給与といった「条件面」だけを改善することはもちろん重要ですが、それだけでは不十分です。働く人々が「どんな未来を描きたいのか」「職場でどのような生活を送りたいのか」という個々のニーズに目を向け、彼らの求める「働きがい」や「自己実現」をサポートすることが必要です。これこそが、組織として本当に価値のある改革だと考えます。
高塚さんの本が強調している「顧客に寄り添う」という姿勢は、私たちが組織や人材に関わるときも重要な視点です。労働者にとって、会社はただの「収入源」ではなく、人生の大きな一部です。だからこそ、彼らの声に耳を傾け、単なる条件交渉ではなく、職場が彼らの生活の質を向上させる場所であることを目指すべきなのです。
傾聴の力と「モノ」から「コト」へ
この本の中で私が特に心に響いたのは、「売る」行為が、単に商品の説明をすることではなく、顧客の本質的なニーズを深く理解し、それに合った提案を行うことだという点です。私はキャリアコンサルタントとして「傾聴」を大切にしていますが、それは営業やサービスの現場でも同じだと思います。
外食業界においても、スタッフ一人ひとりが、お客様の要望や期待に耳を傾け、その日の気分やライフスタイルに合った提案をすることができれば、単なる食事の提供を超えた「体験」を創り出すことができます。そういった「コト」を提供することで、お客様に強く印象を残すことができ、結果として信頼関係が生まれ、リピーターとなっていただけるのです。
最後
「クルマを売りたいなら、クルマの話はやめなさい!」は、クルマの販売に限らず、あらゆる業界に応用できる「顧客視点」の営業法を教えてくれます。外食業界や労働組合の活動でも、この「モノ」ではなく「コト」を売る発想を取り入れることで、より価値あるサービスやサポートを提供できると感じました。
高塚さんの示す「顧客に寄り添い、感情に訴える提案をする」という考え方は、私たちがどの業界にいても通じる普遍的な真理です。これからも、外食業界のイメージを変えるため、そして働く人々の生活の質を向上させるために、この視点を忘れずに取り組んでいきたいと思います。
読んでくださり、ありがとうございました!