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『まず、ちゃんと聴く。』



櫻井将さんの『まず、ちゃんと聴く。』を読んで、外食業界で店長を務めていた頃の自分が思い出されました。店長という立場は常に情報のハブであり、スタッフやお客様の意見に耳を傾けながら、時には厳しい決断を下す場面も多々あります。しかし、その「聴く」という行為を振り返ると、果たして本当に「ちゃんと聴けていたか?」と疑問が浮かびました。




「ちゃんと聴く」ことの本当の意味


外食業界で働いていると、日々の業務に追われてつい「結果」ばかりを重視してしまいがちです。クレーム対応、スタッフのシフト管理、売上目標の達成……これらの中で、相手の言葉の裏にある本当の意図や気持ちに気づけていたかと考えると、自信がありませんでした。

櫻井さんがこの本で強調する「肯定的意図を信じて聴く」という姿勢は、当時の自分に最も欠けていた部分だったと痛感します。現場では、どうしてもスタッフの意見に対して早急に答えを出さなければならない状況が多く、相手の本当の意図を理解しようとする前に「解決」を求めてしまっていたことが多かったのです。彼らの言動の裏にある「肯定的な意図」を受け止めることの大切さは、今のキャリアコンサルタントの仕事を通じてようやく身に染みて理解できました。

「聴く」と「伝える」のバランス


外食業界に限らず、店長やリーダーとしての役割は、「聴く」ことと同時に「伝える」ことも求められます。櫻井さんが述べるように、**聴くだけでは物事が前に進まない**。時には、スタッフにフィードバックや指示を出すことで現場の流れを整える必要があります。

当時の私は、「聴く」と「伝える」のバランスに苦しんでいたのかもしれません。スタッフの意見を尊重する一方で、結果を出すために厳しい指示を出さなければならない。そんなジレンマの中で、どこか「聴く」という行為が表面的になっていたのではないかと、櫻井さんの本を読んで気づかされました。キャリアコンサルタントとして今、クライアントとの対話で「伝える」と「聴く」をどう使い分けるかは、あの頃の経験から学んだ大切なスキルだと感じます。

自分自身にも「ちゃんと聴く」


外食業界で忙しく働いていた頃は、日々の業務に追われ、自分の気持ちに耳を傾ける余裕すらありませんでした。この本を通じて、「**自分自身にもちゃんと聴く**」ことの大切さを改めて学びました。スタッフやお客様に対して責任を感じるあまり、自分の声を無視してしまうことは、結果としてチーム全体にも悪影響を与える可能性があります。

キャリアコンサルタントとして、自分を理解し、自分の意図を明確にすることが、クライアントへの良質な支援に繋がるのだと強く感じました。櫻井さんの言葉は、当時の自分にも、そして今の自分にも響いてきます。キャリアの過渡期にあるクライアントにも、自分の内面に耳を傾けることの大切さを伝えていきたいと思います。

メッセージ


『まず、ちゃんと聴く。』を読んで、自分の過去と現在が一本の線で繋がったように感じています。外食業界の現場で、スタッフやお客様、そして自分自身にもっと「ちゃんと聴く」ことができていたなら、結果は違っていたかもしれません。しかし、キャリアコンサルタントとして、あの頃の経験を土台に、今まさに「聴く」ことの本当の意味をクライアントに伝えられるようになってきました。

本書を通じて学んだ「あり方」としての聴く姿勢を、これからも大切にしていきたいと思います。そして、外食業界で働くすべての人にこの本が届き、彼らがより良い対話を通じて現場を活性化させられることを願っています。

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