辞表と俺の行方不明な勇気
勤続40年。そう、俺は会社に40年間も尽くしてきた。もはや社史の一部なんじゃないかと思うくらいのベテランだ。だけど、最近、どうにも腑に落ちないことがある。なんで現場で残業や夜勤までやらされてるんだ?
「俺、もう63歳だぞ。そろそろ事務仕事とか、ほら、電話番とか…座ってできるやつ、ない?」って何度か聞こうと思ったけど、そんな要望は完全にスルー。まるでAmazonで返品した商品がどこに行ったかわからなくなるのと同じ感覚だ。上司にとって俺の要求は、消えたままなのかもしれない。
「辞表、叩きつけてやる! 上等だ、このクソ会社! 使い捨てにされるくらいなら、辞めてやる!」って言葉が、何度心の中で爆発したか数え切れない。
実際に辞表を提出するシーンも、脳内ではハリウッド級の演出で何度もリハーサル済み。スローモーションで上司の机にバサッと辞表を叩きつけ、俺は颯爽と去る。背後には爆発音が鳴り響き、上司は驚愕の表情を浮かべてる…そんな感じだ。
でも、現実はどうだろう? 脳内リハーサルでカッコよく辞める予定の俺も、実際は「辞表?」の「辞」の字も書けない。
だって、家に帰ったら妻がいる。「辞めるのはいいけど、生活できないじゃん?」なんて言われた日には、完全に詰む。しかも、その後の反論の準備が、ゼロ。何か言い返そうと思っても、言葉が見つからない。まるで試験に出るってわかってたのに、予習を忘れてテストに挑んでしまった学生みたいだ。人生、こんなに不意打ちばかりでいいのか?
だから、結局、一歩も踏み出せない。「俺、いつまでこのままなんだ?」って自問自答を繰り返し、気づけばまた現場で夜勤の準備をしている。焦れったい、情けない、でも何も変えられない。
でも、なんか笑っちゃうんだよな。こんな風に悶々としている自分が。だって、40年間も働いてきたのに、辞める勇気が持てないって、なんか不思議だよな。まぁ、そういうところも含めて、俺の人生なんだろう。辞表、叩きつける日はいつになるんだろうね。とりあえず、今日も会社に行ってくるか…。
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