癸生川凌介事件譚をゴールデンウィークに一通り遊んだ
癸生川凌介事件譚というゲームがある。自分が何歳の時だったのかも思い出せないような昔に、当時の最新ハードだった Nintendo DS で発売されていた「仮面幻影殺人事件」がとても面白くてよく覚えていた。
もともとはフィーチャーフォン(要はガラケーのことだ)向けに出されていたゲームだ。当時小学生だった僕はむしろ携帯電話は持っていなかった。だからこの「仮面幻影殺人事件」以外の作品はプレイせずつい最近まで過ごしていた。
何の拍子だったか。そういやあのゲームってまだプレイできるんだろうかと調べたら、なんと Nintendo Switch で復刻されていた。
このツイートをしてからもう 2 ヵ月以上経つ。当時はなかなか忙しかったのでプレイする心の余裕がなかったのだが、ここのところ時間だけ無駄に持て余していたのでプレイしていた(ゴールデンウィークとかいう日本特有のなぜか休まされる時期のせいだ)。
シリーズ一覧
G-MODEアーカイブスでは全10作品現在復刻されている。
仮面幻想殺人事件
海楼館殺人事件
死者の楽園
白鷺に紅の羽
昏い匣の上
対交錯事件
音成刑事の操作メモ
仮面幻影殺人事件
五月雨は鈍色の調べ
永劫会事件
これらを気が付いたら全て遊び終えていた。8作目の仮面幻影殺人事件はプレイしたことあったので「確かにこんな話だったな」と思いながらプレイしていたが、それ以外は全て初見プレイだ。
どれも面白かったが、個人的に単体として好きなのは4, 5, 6の3作品。特に4は話の美しさもあってとても印象に残っている。
そして特筆するべきは、やっぱり最近復刻された永劫会事件だろう。
永劫会事件
すごい作品だった。
事件は伊綱でも生王でもない、ふたりの青年の視点から始まる。
時は1999年世紀末、国際情勢の悪化から日本は乱世を迎えていた。新興宗教団体が雨後の筍のようにできていく中、ある宗教団体の幹部が殺害された。その捜査にあたる刑事。
ちょうどその頃、まったく無関係に自分の彼女の身を案じて探偵に調査を依頼する青年。
事件を調査する刑事と、彼女の身を案じる青年。彼らは一見全く関係のないものを追っているはずだったが……
重厚なテーマもさることながら、複数の視点から徐々につまびらかになっていく物語、謎解きゲームとしての面白さ、シリーズを追ってきた人としては伏線の回収まで圧巻の作品だ。
面白い。とても面白い。そしてとても怖い。
情けないくらいシンプルな言葉しか出てこない、とても素晴らしい作品だった。
癸生川シリーズの特別感
理由はよくわからないが、このゲームをプレイするととても語りたくなる。昔、「仮面幻影殺人事件」をクリアしたときに自分だけが知る傑作にたどり着いたと心を震わせたものだ。
題材は殺人事件。奇人変人の名探偵、癸生川凌介(キブカワリョウスケ)とその助手、白鷺州伊綱(さぎしまいづな)、そしてなぜか巻き込まれるゲームシナリオライターの生王正生(いくるみまさお)。この愉快な3人が繰り広げる軽妙なやりとりとは対照的に、本編はどれも重苦しい。中には最後の最後まで全く救いのない作品もある。
それでも「このシリーズ本当に面白いんだよ!」って誰かに伝えたくなるような、そんな不思議な魅力がこの作品にはある。なぜなんだろう。これを書きながら考えているんだけど、やっぱり理由はよくわからない。
確実に言えることは、このゲームを心の底から楽しんでプレイできた。そんな何でもないことでとても得しているように感じられるんだ。
おわりに
ここのところ、休日はなんか小難しい本を読んだりして過ごしていた。
別にそうしたかったわけじゃない。そうするのが良いと思っていたわけでもない。だけど、なんとなく時間を無駄にしちゃいけない気がしていたんだ。
でもやっぱり、ゲームは面白い。面白いというただそれだけのことが、とても価値のあることだと思う。
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