衆院選大詰めー街頭演説から感じたこと
「やっぱり皆さんワクチンだったんですよ」菅前総理は29日、千葉県佐原駅前における、林候補の応援演説で、アピールした。急遽、安倍元総理の降板によって、総理となった菅氏は、コロナ対策へ奔走した一年だった。「ワクチン一日100万回」の目標は、マスコミ各社で大きく取り上げられ、批判の的となった。しかし、今ではワクチン一回目接種率は、77%を超えている。そのことを念頭においた発言だった。また、演説の中で、携帯料金値下げや、不妊治療、デジタル庁の創設など、個別政策の成功をたびたび取り上げ、成果を強調した。
対照的なのは、岸田現総理だ。千葉県成田駅前で、同じく林候補に応援演説した岸田総理は、コロナ感染者数の減少などについて触れたあと、「新しい資本主義」など抽象的な話題が続いた。また、総裁選で重ねて強調していた「分配」よりも「成長」の方を強く主張するようになった。「成長」と「分配」の好循環は、岸田内閣を象徴するキーワードとなっているが、「アベノミクス」との違いがまだ曖昧だ。
対面での選挙活動は、有権者が直接、候補者の話を聞くことで、候補者の人柄や印象を感じることができる。一方で、「昭和」の選挙を強く感じさせるスタイルでもある。地域の後援会や地元有力者を集め、三バン(地盤・看板・カバン)を基礎とする選挙は、若い世代にとって響かない。成田駅前には、学習塾(東進・河合塾マナビス)があった。街頭演説の音は彼らにとっては、騒音だ。夏休みを終え、受験へ向け勉強している彼らはどう思っただろうか。現地でビラ配りをしていたボランティアや後援会の人の中に、若者と呼ばれるような年齢の人は見受けられなかった。若者を置き去りにした政治活動はやがて、廃れていくだろう。
読売新聞と日経新聞の終盤情勢調査で、自民党は、過半数を越えるか超えないかの瀬戸際に位置している。岸田総理は、チャーター機を手配し、全国各地を遊説している。このことからも情勢の厳しさがうかがえる。岸田総理は最後の演説地として、品川区大井町駅を選んだ。秋葉原駅が慣例となっているが、岸田色を出した形となっている。無党派層はまだ投票先を決めかねている可能性が高い。今日、明日の選挙活動が大きく選挙に影響を与えるだろう。
※ 本稿使用の画像は全て著者撮影(2021年10月29日撮影)