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withコロナの時代に向けた、従業員の「心の健康」への対応 その2

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、一時的に落ち着きを見せているようです。

企業経営者としては、これまでは、労働者の健康安全については、感染拡大防止策を中心に考えていたかと思いますが、今後は、第2波、第3波への警戒しつつ、労働者の精神衛生面にも目を配る必要があるでしょう。

前回は、メンタルヘルス対策を講ずる必要性について紹介しました。

今回は、メンタルヘルスの不調が発生した場合の対応と留意点について紹介していきます。

[1]企業としてはどのような対応をすべきか

メンタルヘルスに不調をきたした従業員への対応は、その不調が業務上のものか、業務外のものかにより異なります。

新型コロナウイルス感染症やその社会情勢に伴う精神面の不調は、通常は、後者の業務外の傷病に当たります。

この場合、企業としては、従業員の配置転換や業務を軽減する措置を講じたり、医療機関の受診を勧めたり、就業規則に私傷病休職制度がある場合には私傷病休職を勧めたりするといった対応をする必要があります。

[2]いきなり懲戒処分や解雇をすることはできません〜日本ヒューレット・パッカード事件最高裁判決

たとえ労働者がメンタルヘルスの不調により欠勤を続けていたとしても、企業としては、治療を勧めたり休職を命じたりすることなく、懲戒処分や解雇をすることはできません。

最高裁は、精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては、治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり、このような対応を採ることなく、無断欠勤による懲戒処分の措置を執ることは、精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難い、としています(日本ヒューレット・パッカード事件:平成24年4月27日最高裁判所第二小法廷判決)。

[3]休職期間満了後の解雇・自然退職で気をつけるべきことは? 職種等の限定がない場合

では、会社としては、休職期間満了後に従業員を解雇や自然退職とすることは可能なのでしょうか。

従業員の職種や業務内容を限定しない場合、現実に復職可能な勤務場所があるかどうかが問題になります。

裁判例にも、休職前の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動の実情、難易等を考慮して、配置替え等により現実に配置可能な業務の有無を検討し、これがある場合には、当該労働者に配置可能な業務を指示すべきであるとするものがあります。

この事案では、現実に復職可能な勤務場所があるとして、退職扱いは就業規則に反し無効であるとしました(東海旅客鉄道事件:平成11年10月4日大阪地裁判決)。

先ほどの日本ヒューレット・パッカード事件の従業員は、この最高裁判決の確定後、同社に対して復職を求めましたが、同社は就労申出を拒絶する一方、休職を命じました。このため、この休職命令の有効性等が新たな訴訟で争われることになりました。

この新たな訴訟において、東京地裁は、精神的な不調の存在故に、休職命令時点で、労働契約上、社内に配置転換により労働契約上の債務の本旨に従った履行の提供をすることができるような職場を見いだすことは困難な状況にあったとして休職命令は同社の就業規則要件を満たす有効なものであるとしています。また、休職命令の休職期間が満了したことにより、同社の就業規則に基づき、自然退職となり労働契約は終了したとしています(東京地裁平成27年5月28日判決)。

[4]休職期間満了後の解雇・自然退職で気をつけるべきことは? 職種等の限定がある場合

従業員の職種や業務内容を限定している場合はどうでしょう。

この場合は、限定された職種への復職が可能かどうかが問題になります。

裁判例には、労働者がその職種を特定して雇用された場合に、その労働者が従前の業務を通常の程度に遂行することができなくなった場合には、原則として、労働契約に基づく債務の本旨に従った履行の提供、すなわち特定された職種の職務に応じた労務の提供をすることはできない状況にある、と判断するものがあります(カントラ事件:平成14年6月19日大阪高裁判決)。

もっともこの裁判例では、他に現実に配置可能な部署ないし担当できる業務が存在し、会社の経営上もその業務を担当させることにそれほど問題がないときは,債務の本旨に従った履行の提供ができない状況にあるとはいえないものとも指摘しています。

[5]職場復帰の支援のために必要なことは?

休職した従業員の職場復帰にあたり、企業が行うべき職場復帰支援の内容については、「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引」が参考になります。

ここには、「私傷病による職員の休業及び復職に関する規程」のモデル規程も紹介されています。

[6]まとめ

企業としては、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し適切な措置を行う「二次予防」、メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援等を行う「三次予防」の3つを円滑に行う必要があります。

新型コロナウイルス感染症に伴う社会情勢の変化により、これまで以上に、従業員の精神衛生面で負荷が増大するおそれがあります。

従業員のメンタルヘルス不調を予防するための十分な体制が構築できているか、再点検する必要があります。












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