概数・概算との関係(÷95~÷99について) |基礎計算研究所
商の見立てとは、つまるところ概数の活用なのだが・・・
÷2桁の筆算では、どの位に商が立つか決定してから、割る数をそれに近い何十の数に見立てて商の見当をつける、という作業をする。実際には切り捨てと四捨五入である。
数学的な系統性を考えると、確かに概数・概算を学習して、それを商の見立てにも利用という方がすっきりする。指導要領もそれを念頭に同じ4学年で指導することにして、概数→除法の順に記述している。指導要領の解説には、次のように書いてある。
指導要領では概数→除法の順に触れているが、多くの教科書では÷2桁のわり算のあとに概数の単元を置いている。2020年度版の教科書での扱いは次の通りである。
この商のみたてと概数との微妙な関係について、東京書籍のホームページでのQ&Aが詳しい。長くなるが引用する。
子どもたちの理解の仕方・学習の定着具合を考えると、数学的に組んだ指導体系では思うようにうまくいかなかった、むしろ混乱をした子どもが多くて万人向けのカリキュラムには向かなかった、ということなのだろう。
なので、東京書籍では、商の見立ては概数と別ものとして教科書をつくった上で、実情に合わせて(できる子が多い、教員のクセなど?)指導順序の入れかえも可能、としているわけである。これまでの教科書づくりの苦労と各方面への配慮が伺える文章である。
カリキュラム・指導体系、学び直しのコースを考える上で、こうした配慮をふまえた上で、考えて行く必要がある。
次に、÷2桁の計算の「不都合な真実」に言及しておきたい。
÷95~÷99の問題
「3桁÷2桁」の形式の問題なら被除数や除数がどんな数であっても解けることをめざす、ということになるのだが、じつはどの教科書にも載っていない問題が2つある。
それの一つは、わる数が95~99の問題である。
わる数を四捨五入して何十とみる場合、これらの数がわる数であれば四捨五入すると÷100になる。「切り捨て」方式であれば94までの数と同様に処理をすればいいわけで、とくに取り立てて考える必要はない。
しかしいずれにしても、わる数が95から95の問題は、各社の教科書とも章末問題・巻末問題含めて見事に避けているのだ。
たとえば、賞を見立てるときわる数が87であれば90にする、というのは十の位までの概数にしているのではなく、上から1桁の概数にするのである。÷3桁、4桁・・・の時も同様である。そうすると、÷97は÷90として見立てるのか、÷100として見立てるのか。この違いをまず指導者は認識しなければならない。
具体的には上から2桁目の数字を四捨五入する、ということになる。同様に97を上から1桁の概数にしようとして上から2桁目の数字7を"五入”すると”繰り上がって”100になる。これは87→約90の手続きにくらべて、くり上がりというもうひとつの操作が必要となる。この追加の操作をしてもよいのだというお墨付きを指導する側が与えておかないと、学習者の側はそれでよいのいか?という疑念を持ったまま計算を進めることになる。
79÷75の問題
もうひとつ仮商を求めるアルゴリズムを「除数のみ四捨五入」で機械的にしてしまうときにひっかかるのが、79÷75のように、2桁÷2桁で十の位が一致していて、除数の一の位が5~9になる場合である。「わる数だけ四捨五入」すると、79÷80となって、商はたたないことになってしまう。
79円しかもっていなくて、75円(税込み)のものはいくつ買えますか、という問題なので、1個しか買えないのはあきらかである、と済ます考え方もあるだろう。こうした問題は例外なので、やらなくてもいい、という見方もできるかもしれない。
しかし、教科書でも直後に整商が複数桁の問題を取り扱っており、「どんな問題も十全にできる」ことを保障して次に行かないと、たとえば3829÷75をしようと思っても、「習ってない」ことが出てきてつまづきになるかもしれない。
「除数のみ四捨五入」のアルゴリズムをとるときに、79÷75のような問題も意図的に「なかったことにする」ワケにはいかない、ということは指摘しておきたい。
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