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約分マニュアル(初級編) |基礎計算研究所

 約分マスターになりたい! そんなあなたにお送りする約分マニュアル。まずは小学校標準レベルの(中学の難関校受験向けではない)、みんな解けてほしいやり方マニュアル。

レベル1★基本技

 いちばんの簡単で単純なのは,分子と分母両方が「2でわりきれないかな?」「3でわれないかな?」「4でわれないかな?」「5でわれないかな?」「6でわれないかな?」・・・と順番に,分子と分母のうち小さい方の数まで確かめることです。両方がわりきれる数が見つかったら,両方わって約分をします。

※もうちょっと楽をしようとすれば,分子と分母のうち小さい方の数の半分までと、その数自身で確かめれば、確かめる数は半分で済みます。

※そして実は「素数」を知っている人は、もっと省略ができます。2で,3で,5で,7で,11で・・・と,分子と分母のうち小さい方の数以内までの素数でわっていけばよいです。2020年からの学習指導要領では素数は小5→中1で学習することになりましたので、とりあえず小学生向けに、こういう教え方にしておきます。

 そして約分でもうひとつ大切なのは,約分できた後,さらに約分できないか確かめることです。

 そこまでやって、分子分母の小さい方までわり切れなければ,その分数は「もうこれ以上約分できない分数」として,答えに書いてよいです。

 「2から1つずつ順番にわれるかどうか確認する」「1回約分しても、さらに約分できないか確かめる」2つのことを気にすれば,確実に約分ができます。

 ただ,基本技を使うより先につぎの2つの技を使うと、約分が早くなる分数があります。この2つの技を覚えて,最後に基本技を使って、もう約分ができないと答えを出すと、約分の計算が速く楽になります。それは一の位の技九九の技です。

レベル2★★【一の位の技】→基本技

 一の位が0,2,4,6,8のときは2でわりきれます(偶数です)。2でわりきれるかどうかは、目で見てすぐにわかるのです。この性質を使わない手はありません。分子も分母も2でわれるときには、まずは2でわってしまってから,さらに約分できないか確かめると、数が小さくなって考えやすくなって便利です。

 また,一の位が0か5のときは,5でわりきれるので,5でわってしまいましょう。

 一の位が0どうしのときは10でわりきれます。末尾の0を同じ数ずつとればよいです。

 2,5,10でそれぞれわりきれるかどうかは,2つの数を見て,すぐ何でわれるかわかる便利なしくみになっています。

 もちろん終わった後,さらに約分できないかを確かめる必要がありますが,2や5でわり切れることがわかっていますので,2や5でわり切れる数で確認する必要はなくなります。基本の技は[3,4,6,7,8,9,11,12,13・・・]でわっていく(素数を知っていれば[3,7,11,13・・・]でわっていく)ということになります。

レベル3★★★【九九の技】→一の位の技→基本の技

 どこにも書いていないけど,約分ができる人がなんとなくやっている方法を教えます。それは九九を使うことです。

 12/18を約分してみましょう。

 基本の技でやってみると、まず「(分子・分母とも)2でわれるかな・・・」2でわって6/9。「2でわれるかな・・・」われない。「3でわれるかな・・・」3でわって、2/3。「2でわれるかな・・・」もうわれない。答え、2/3。

 ところが、九九を使うと、約分を2回せずに1回で済みます。

 「18と12は両方6の段にある」ので,両方とも6でわりきれます。すると2/3。3は2でわりきれないので,ここで約分はおしまい。はやく大きめの数の数でわれると,さらに約分できるかどうかの確認を小さな数でできるので,楽にできます。

 分母・分子のどちらかを九九で分解できないか,考えます。大きな数の方を最初に確認してみるのをお勧めします。

 12/18で確かめてみましょう。大きな数18は九九の2×9(9×2)と3×6(6×3)のところにあります。12は9ではわれませんが,12=6×2で6でわりきれます。

 なお,54/72などを見たら「同じ9の段にある」とみてもよいし,パート2で見たように「まず2でわる」で27/36としてから「同じ9の段にある」とみてもよいです。とにかくパッと見つかった数(公約数)でわってみて、分子・分母の数を小さくしていって,さらに約分ができるかどうか確かめてみるのです。

 この公約数をパッと見つける力は、勘というか、数的感覚というか、とにかくあまり言葉にされませんが、いくつかの方法に触れた上で、自分になじむものを身につけていく、ということが期待されているわけです。

 このマニュアルでは、勘とか数的感覚と言って「ちょっとそれ以上説明するのはなー」としてきた面倒なところをわざわざ言語化した、ということになります。

ここまでのまとめ

 ここまで,

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レベル1★基本の技(なければ約分終了)
レベル2★★一の位の技[2,5]→基本の技[3,7,・・・](なければ約分終了)
レベル3★★★九九の技→一の位の技[2,5]→基本の技[3,7,・・・](なければ約分終了)
   (または一の位の技→九九の技→基本の技)

という形でレベルを上げてきました。

 レベル3までできれば、とりあえずどんな分数がきても約分がそこそこ速く解けるはずです。

 気をつけてほしいのは、もう1回約分できないか確認すること、そして約分を1回で終わらせようとしないことです。

 まず、約分が終わったらもう一回約分ができるかどうか確かめるのが大切です。2の倍数や5の倍数で割りきれるのは一の位の方法で確かめられますが,3や7や9でわれるかどうかは,この方法では省略ができません。
(例えば,15/42は同じ段にありませんが,15も42も3でわり切れます!)

 もうひとつ、約分を1回でなんとか終わろうと思わない、ということが大切です。1桁の公約数をパッと思いつくことを目指しましょう。

どうして1桁でどんどんわった方がいいのか?

 たとえば36/54を約分することを考えます。最大公約数は18なので、18で分子と分母をわってみると、36÷18=2,54÷18=3で、2/3と約分が1回で済みます。しかし、2桁÷2桁の計算は筆算を持ち出さないといけないので、約分の回数を減らすメリット以上に計算が面倒になります。54は9×6なので、36が9や6でわれるかどうか、を考える方が計算が簡単です。 2回約分が必要になりますが、筆算のいらないわり算だけで済みますので、わざわざ筆算をするよりも楽です。

 そして、ここで最大公約数は18とさらっと言いましたが、最大公約数が18である、ということを求めるためにも計算が必要です。ということは、教科書には「最大公約数をまず見つけて、それでわる」ということが書いてありますが、それよりも九九を利用すれば、できるだけ大きな1桁の公約数を見つけることも可能なので、(何回かかかるかもしれないけど)わる、という方が、計算の素早さはちがいます。

もう少し難しい約分を早く解くには・・・

 もうすこし、約分の力を高めようと思う人は「各桁の和の技」を、そして「素因数分解の技」まで手を伸ばすと上級編、というところでしょう。

 最終的に[素因数分解]を中1で学習することになっているので、中学生ぐらいで、たとえば次のようなのフローチャートで約分を進めることをおすすめしておきたい、と思います。

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