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05ことわざ:内部監査の実務から見えてくる深層

第5回「船頭多くして船山に登る」

このことわざは、指図する人が多すぎると、かえって物事がうまく運ばないことをたとえています。一般的には、強固なリーダーシップの重要性や、意思決定者の明確化の必要性を説く場合に使われます。

内部監査の実務でも、個別の監査を運営する上で、指揮命令系統を明確にしておくことは確かに重要です。

しかし、個別の監査では、個々の監査人と監査のマネジメント(意思決定者)との間には情報の格差(情報の非対称性)が存在します。特に、発見事項の評価(重要性の判断)や改善提案の方向性の判断などについては、現場の状況を直接に把握している監査人の視点が重要になります。

もちろん、監査のマネジメントは、他の監査や過去の監査との整合性など、より広い視点からの判断が可能という側面もあります。このため、単なる指揮命令ではなく、双方の視点を活かした「合意形成のプロセス」が重要になります。

つまり、このことわざは、内部監査において、リーダーシップの重要性を説きつつ、同時に「異なる立場の意見をいかに活用するか」という課題も示唆しているのかもしれません。

第6回は、「二兎を追う者は一兎をも得ず」を取り上げます。



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