1/5 内部監査の誤解を解く:全体像
本記事は、5回シリーズでお届けします。
組織ガバナンスの一角を担っている内部監査ですが、その実態について組織内で誤解されている(十分に理解されていない)ことがあります。本記事では、そうした誤解を段階的に解きほぐし、内部監査の役割は何か、組織の価値向上にどのように貢献しているかを考察します。
内部監査を巡る代表的な誤解
組織内で、時折、以下のようなコメントに出くわすことがあります。誤解されている(十分に理解されていない)方々にとっては、同じような機能/部門に映るのかもしれません。
「内部監査は内部統制のことですよね?」
「内部監査がリスク管理を担当するのですよね?」
「コンプライアンスを推進するのが内部監査の役割ですよね?」
これらのコメントは、内部監査機能が十分に理解されていない典型的な例です。無論、内部監査人であれば、理解されていることですが、これらの誤解は、もしかしたら、組織の効果的なガバナンスの実現を妨げる要因になっている可能性もあります。
誤解が生まれる背景
このような誤解が生まれる背景には、主に3つの要因があります。
第1に、内部監査部門の組織内での位置づけの曖昧さです。独立性と客観性を保ちながら、各部門と協働するというバランスが、時として役割の境界を不明確にしているかもしれません。
第2に、内部監査、内部統制、リスク管理、コンプライアンスといった各機能の間に重複する部分が存在することです。例えば、業務プロセスの評価において、内部監査部門も内部統制部門も類似の観点でチェックを行うことがあります。ただし、その目的と立場は本質的に異なります。
第3に、内部監査の機能自体が進化してきた歴史的背景があります。伝統的な会計監査や業務検査から、より広範囲なアシュアランス(客観的な保証)機能とアドバイザリー機能の発揮へと発展する過程で、様々な誤解が積み重なってきた可能性があります。
組織の価値向上のために
これらの誤解は、本来の内部監査機能を発揮する上でのハードルになっているかもしれません。内部監査部門はアシュアランスの提供に加え、本来、インサイト(組織や業務などに対する深い洞察)やフォーサイト(将来への先見)に基づくアドバイザリーも提供します。しかし、これらの機能を十分に活用できている組織は必ずしも多くありません。
本シリーズでは、内部監査に関する誤解を段階的に解きほぐしていきます。
第2回:内部監査と内部統制の境界
第3回:内部監査とリスク管理の境界
第4回:内部監査とコンプライアンスの境界
第5回:3ラインモデルとアシュアランスマップの構築
内部監査の本質を正しく理解し、その機能を効果的に活用することは、組織体の持続的な価値向上につながる重要な鍵となります。
次回予告
第2回では、内部監査と内部統制の境界について解説します。