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03【連載】「実践!内部監査チームマネジメント」:専門性を持つメンバーの活用

1. はじめに 

 内部監査の対象業務が高度化・複雑化する中で、監査の独立性に配慮をした上で、監査対象部門から内部監査部門に専門性を持つメンバー(専門家)を一時的に”ゲストオーディタ―”として迎えるケースもあります(例:システム部門からITの専門家を招く、法務部門から規制対応の専門家を招く)。専門家の効果的な活用は、監査の実効性を高める重要な手段の一つです。

 しかし、専門家の活用には様々な課題が潜んでいます。本記事では、個別監査の中で、専門家の効果的な活用方法について解説します。


2. 専門性の活用における課題

 専門家の活用において、どのような課題が想定されるかを認識することが、専門家を効果的に活用するための第一歩になります。

(1)専門知識の偏り

 監査の現場での監査対象部門とのコミュニケーションや、監査報告などにおいて、専門用語が多用されることで、監査の有効性を低下させる可能性があります。

  • 専門用語の多用により意図が伝わらない

  • ビジネス視点が足りず、偏った見解になる

  • 本質的なリスクが見過ごされる

(2)過度な依存

 「規制対応の発見事項は全て専門家任せ」などの対応は、監査チームの成長機会を奪います。

  • 専門家の意見を鵜呑みにする

  • 他の監査人の当事者意識が薄い

  • 専門家不在時には監査ができない

(3)双方向のコミュニケーションの不在

 「ITの専門家と他の監査人で会話が噛み合わない」などの状況は、監査の効率性を低下させます。

  • 専門家と他の監査人との対話が不十分

  • 監査対象部門との認識にギャップが生じる

  • 監査チーム内で孤立してしまう


3. 効果的な活用のポイント

(1)専門家の役割明確化

 重要なのは、専門家を「ゲスト」ではなく、「監査チームの一員」として位置づけることです。その上で、専門家の役割を明確にすることで、監査チーム全体の実効性を高めることができます。

  • リスク評価段階からの関与

  • 他の監査人との共同作業

  • 知識共有や他の監査人の育成支援

  • 経営者視点での総合的判断

(2)翻訳者的な役割

 監査チームにおいて、専門用語を平易な用語に変換する「翻訳者」的な存在が必要です。

  • 専門用語の平易な言い換え

  • ビジネスへの影響の評価

  • 実務的な改善案の策定

(3)知識移転を仕組み化

専門知識の共有を計画的に進めることで、監査チーム全体の能力向上を図ります。

  • 事前の勉強会開催

  • 実地監査でのOJT

  • 専門知識の文書化

  • 振り返りセッションの実施


4.おわりに

 専門家の活用は、諸刃の剣です。うまく活用できれば監査品質は大きく向上しますが、使い方を誤れば監査の実効性を損なう結果となります。
 専門家の役割を明確にし、監査チームにおいて「翻訳者」的な存在を担うメンバーをアサインし、知識移転を仕組化すれば、専門家を効果的に活用できるでしょう。


次回予告

 次回は、チーム構成編の最終回として「リソース配分の考え方」について解説します。個別監査プロジェクト全体を見据えた、効果的なリソース配分のアプローチを解説します。


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