03コーチングx内部監査:新任監査人(金融機関)成長ストーリー~配属後6ヶ月間の学びと気づき~
本シリーズは12回シリーズでお届けしています。
00【連載予告】コーチングx内部監査:新任監査人(金融機関)成長ストーリー~配属後6ヶ月間の学びと気づき~|TAIZO
第3回:コミュニケーション - 監査対象部門との信頼関係の構築
はじめに
内部監査において、監査対象部門との信頼関係の構築は不可欠です。しかし、新任監査人にとっては「監査対象部門と、どのように接すれば良いのか」「発見事項は、どのように伝えれば良いのか」といった悩みに直面します。監査対象部門との信頼関係をどのように進めていけば良いのか、一緒に考えていきましょう。
1. コーチング手法を活用した対話:信頼関係の始まり
佐藤(指導係):「営業推進部との初回の打ち合わせはどうでしたか?」
鈴木(新任監査人):「実は、緊張してしまって・・・あまり上手く話しを進められませんでした。」
佐藤:「そうですか。初回の打ち合わせで、どのようなことをお伝えしたかったのですか?」
鈴木:「今回の監査の目的やスケジュールについてです。でも、先方が忙しそうで・・・」
佐藤:「相手の立場に立つと、どのような説明があれば理解してもらい易いと思いますか?」
鈴木:「そうですね・・・監査を通じて部門の課題解決にも貢献できることをお伝えすれば良かったかもしれません」
佐藤:「なるほど。では次回の打ち合わせではどのようなアプローチを考えていますか?」
2. コミュニケーションの基本ステップ
監査活動の成否は、監査対象部門との信頼関係にかかっています。
一見、監査の品質は内部監査部門だけの責任だと思われがちですが、実際には監査対象部門の対応がその成否を大きく左右します。監査対象部門が監査目的を正しく理解し、適切な対応を行うこと(例:監査チームへの的確な説明や証跡の提出)が不可欠です。
こうした協力が得られるかどうかは、信頼関係の構築にかかっています。そのため、初回の打ち合わせから相手の立場に立ったコミュニケーションを意識し、信頼関係を築く努力を重ねることが重要です。
監査対象部門との信頼関係を構築するためには、以下のステップを意識することが重要です。
最初の関係づくり
監査の目的の共有:監査対象部門の視点で説明(例)監査は部門の改善をサポートするため
部門の課題への理解
建設的な対話の姿勢
ヒアリングの進め方
相手の話をよく聴く:話しを途中で遮らない
一方的な質問を避ける
発見事項・改善策の伝え方
事実関係の確認
問題の背景の十分な理解
根本原因分析に基づいた改善の方向性の提示
改善策の伝え方:共に目指す目標として伝える(例)今回の改善は、組織全体の効率性の向上に寄与する
3. コーチングのポイント:相手の立場で考える
鈴木さんは相手の立場に立って考えることで、より効果的なコミュニケーション方法に気づくことができました。一方的な監査ではなく、共に課題解決を目指す姿勢が重要です。
問いかけの例
「相手は何を期待していると思いますか?」
「相手は、監査チームから、どのような説明があると納得感が得られると思いますか?」
「建設的な対話にするために何が必要でしょうか?」
4. まとめ
監査対象部門との信頼関係は、一朝一夕には築けません。しかし、相手の立場に立って考え、建設的な対話を心がけることで、より良い関係を構築することができます。それが、質の高い監査につながるのです。
次回予告
次回は「監査調書の作成:効果的な記録の取り方」というテーマでお届けします。