見出し画像

6/6【新任内部監査人・必見!】不正リスクを考慮した監査の実施アプローチ(外部委託先選定プロセス)

本シリーズは、6回に渡ってお届けしています。今回は最終回となります。
第1回:「リスク評価編」
第2回:「監査計画編」
第3回:「実施手法編」
第4回:「評価・分析編」
第5回:「原因究明編」
第6回:「改善提案編」←今回


第6回:「改善提案編」~ 実効性のある不正リスクの低減策の提案

1. はじめに

前回は、システム保守契約で確認された以下のような状況について、その構造的要因を分析しました。

  • 特定の委託者への発注集中(年間発注の90%超)

  • 価格の段階的な上昇傾向(年10%程度の上昇)

  • 特定の担当者による継続的な承認

分析の結果、以下のような構造的な要因が浮かび上がってきました。

  • 特定の担当者への権限集中

  • 牽制機能の形骸化

  • 価格妥当性の検証不足

  • 組織的な透明性の欠如

最終回となる今回は、これらの構造的要因に対する実効性のある改善策の立案方法について解説します。




2. 改善提案の基本アプローチ(案)

通常の視点では、主に規程や手続の改善に焦点を当てますが、不正リスクの視点での改善では、組織構造や業務プロセス全体を見直し、実効性の高い牽制の仕組みを構築することが重要となります。

表1. 改善提案アプローチの比較


3. 具体的な改善策の立案(案)


改善策の立案では表面的な対応に留まらず、組織の構造や制度そのものの見直しを含めた本質的な改善を目指します。

表2. 具体的な改善策の比較


4. 実効性確保の方法

改善策を形式的ではなく実効性を確保するために、導入から定着までの各段階で適切な施策を講じる必要があります。特に不正リスクへの対応では、組織全体での取り組みと継続的なモニタリングの整備・運用が鍵となります。

表3. 実効性確保の視点の比較


5. 導入・運用上の留意点

改善策の導入・運用にあたっては、組織への影響や実務上の課題を十分に考慮し、現実的かつ持続可能な方法で進めることが重要です。

表4. 留意点の比較


6. シリーズ全体のまとめ

本シリーズでは、外部委託先選定プロセスを例に、通常の監査視点と不正リスクの視点の違いを、6回にわたって解説してきました。

両者の違いを明確にするために、あえて各回とも対比する形式で説明しましたが、実務では、これらの視点を対立的にとらえるのではなく、相互に補完し合う関係として理解することが重要です。

効果的な内部監査の実施には、通常の視点と不正リスクの視点の両方を適切に組み合わせ、統合的なアプローチをとることを推奨します。

6.1.不正リスク対応の基本的な考え方

  1. リスク評価(第1回)

    • 通常の視点と不正リスク視点の違い

    • 構造的なリスクの把握

  2. 監査計画(第2回)

    • 不正リスクの視点の要点

    • 実効性のある手続の作成方法

  3. 実施手法(第3回)

    • データ分析の活用

    • 異常パターンの検出

  4. 評価・分析(第4回)

    • 不正の兆候判断

    • 追加調査の要否判断

  5. 原因究明(第5回)

    • 構造的要因の分析

    • 組織的背景の把握

  6. 改善提案(第6回)

    • 実効性ある改善策

    • 持続可能な改善策の導入・運用方法

6.2.実務適用のポイント

  1. 組織特性の考慮

    • 業界特性の理解

    • 組織文化の考慮

  2. 実効性の確保

    • 段階的な導入

    • 継続的な改善

  3. 持続可能性の重視

    • 現実的な対応

    • 長期的な視点

以上、本シリーズが、新任内部監査人の皆様にとって、不正リスク対応力の向上の一助となれば幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?