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03/15 内部監査という選択:多様な人財が活きる新たなキャリア(第3回)

内部監査人の役割と責任 (監査リスクと向き合う)
本連載では、内部監査という職業が持つ可能性や魅力を、私自身の20年以上にわたる経験をもとに、全15回にわたってお伝えしています。

はじめに

前回は内部監査の多様な種類と特徴について紹介しました。第3回となる今回は、内部監査人が担う重要な役割と、その責任の重さについてお伝えします。




1. 内部監査人の基本的な役割

第1回の「はじめに」では、内部監査は、「組織の価値を向上させることを目的とした、独立的な評価・助言活動です」とお伝えしました。この一言に、内部監査のエッセンスが詰まっています。

また、第2回では、内部監査が大きく5つに分類されることを説明しました。それぞれの内部監査人(内部監査員)に共通する基本的な役割は次の2つです。

独立した立場で客観的に
a.       評価を行う役割:アシュアランス(合理的保証(※))の提供者
b.      助言を行う役割:助言の提供者
(※)合理的保証とは、絶対的ではなく、「(専門家として)十分な証拠・根拠に基づく確信した意見」の意味です。

そして更に、組織によっては、上記a、bの役割に加えて、以下のような多面的な役割も担うことが期待されています。

c.       組織の対話を促進する役割
(例)
・経営層と現場の架け橋
・部門間の対話を促進するファシリテーター
・改善や変革を促すカタリスト
・専門情報の解説者


2. 監査リスクという重い責任

内部監査人は、常に「監査リスク」と向き合っています。これは、重要な問題を見過ごしたり、誤った結論を導いたりするリスクです。

そのため、内部監査人は、以下のような責任を負っています。
(※内部監査人の役割には大きな責任が伴います。大事な点ですので、しっかりとお伝えさせてください。)

  • 監査後に、その部署で重大な問題が発生した際の「監査の適切性」の検証

  • その監査で、「何を見て、どこまで確認したのか」の説明責任

  • 監査記録や証跡の重要性(監査後も検証可能な状態にしておく必要性)


3. 監査リスクが顕在化する場面

内部監査では、以下のような場面において、内部監査の適切性が問われることがあります。

  • 不正や重大な業務上の問題が発覚した場合

  • 規制当局から指摘を受けた場合

  • 社会的影響のある事案が発生した場合

上記のような場面で問われるのは以下のような内容です。

  • 監査計画(監査範囲を含む)の適切性

  • 監査手続の十分性

  • 発見事項への対応の適切性

  • 監査報告の正確性


4. 監査リスクへの対応

監査リスクを低減するために、通常、内部監査人は以下のような対応を実施しています。

  • リスクベースでの監査計画の作成

  • 十分な監査証拠の入手・保管

  • 客観的な評価と適切な報告

  • 継続的に専門知識を習得・スキルを向上


5. 内部監査人に求められる姿勢・心構え

内部監査人は、その役割・責任を果たすために、以下のような姿勢・心構えで業務に取り組むことが求められています。

  • 専門職としての懐疑心の保持

  • 独立性と客観性の確保

  • 誠実性の維持

  • 専門知識・スキルの継続的な向上

なお、内部監査は、内部監査人・個人としてだけでなく、内部監査部門・組織としても、監査リスクを低減させる様々な取り組み(監査実施時における相互チェックなど)を行っています。


6. 次回に向けて

第4回では、内部監査人として必要とされる具体的な知識とスキルについて、詳しくご説明します。責任を全うするために必要な能力について、実践的な観点からお伝えする予定です。


おわりに:読者へのメッセージ

内部監査人の役割には大きな責任が伴います。しかし、この責任の重さは、組織の健全な発展に貢献できるというやりがいの裏返しでもあります。内部監査人としてのキャリアを考える際には、こうした責任の側面についても十分に理解しておくことが重要です。

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