09【連載】内部監査の二面性:効率性/有効性
はじめに
第8回は「リスク」と「機会」というテーマで、価値創造の可能性について考察しました。第9回では、監査対象部門における「効率性」と「有効性」という二面性について考えていきます。
1.「効率性」と「有効性」の評価
監査対象部門を評価する際には、効率性(少ないインプットで多くのアウトプット)と有効性(目的の達成度)の両面からの検証が重要です。
効率性の評価に際しては、以下のような例が挙げられます。
【効率性の評価視点(例)】
業務コストの最適性(人件費やシステム費用)
リソースの活用状況(人材や設備、システム)
業務処理時間の妥当性
プロセスの最適化(重複業務の排除や自動化)
組織/体制の適切性(人員配置や役割分担)
これらの視点は、限られた経営資源をいかに効果的に活用しているかを評価する上で重要な指標となります。特に、重複業務や不必要な作業の有無については、改善の余地が大きい領域として注目する必要があります。
【有効性の評価視点(例)】
部門目標の達成度
リスク管理の適切性
品質基準の充足
ステークホルダー満足度
有効性の評価では、単なる目標達成度だけでなく、その過程におけるリスク管理や品質管理の状況も重要な要素となります。また、顧客や関係部門などステークホルダーの満足度も、有効性を測る重要な指標となります。
1. 部門特性に応じた評価の重要性
各部門の特性に応じて、効率性と有効性の評価ポイントは異なります。例えば、営業部門と製造部門では、以下のような違いがあります。
【営業部門(例)】
営業部門では、効率性として一人当たり顧客訪問件数や契約獲得にかかるコストを評価する一方、有効性として売上目標の達成度や顧客満足度を重視します。両者のバランスを欠くと、短期的な数値を追い求めるあまり、顧客との関係が悪化したり、行き過ぎた顧客対応による生産性の低下といった問題が生じる可能性があります。
【製造部門(例)】
製造部門では、生産性や設備稼働率といった効率性の指標と、品質基準の達成度や納期の遵守率といった有効性指標のバランスが重要になります。効率性の追求が品質低下を招いたり、過度な品質の追求によって生産性を阻害することのないよう、適切な評価が求められます。
2. 実務での応用
効率性と有効性のバランス評価において、定量的指標と定性的指標の組み合わせが重要です。
【評価指標(例)】
定量的指標:KPIの達成度、コスト効率
定性的指標:プロセスの適切性、リスク管理状況
これらの指標を組み合わせることで、より包括的な評価が可能となります。評価結果に基づく改善提案では、効率性と有効性の両立が可能な領域を特定し、重要性に応じた優先順位付けを行います。
3. まとめ
監査対象部門の評価において、効率性と有効性は時として相反する関係にあります。しかし、部門の特性を理解し、適切な評価指標を設定することで、より建設的な改善提案が可能となります。そして、このバランスの取れた評価アプローチこそが、内部監査が組織に価値を提供する重要な機会となるのです。
次回予告
第10回は、「サンプリング」と「全量」というテーマを取り上げます。