見出し画像

12【連載】内部監査の二面性:短期/長期

はじめに

 第11回は「広く浅く」と「深く狭く」というテーマで、監査アプローチの選択について考察しました。第12回では、内部監査における「短期」と「長期」という二面性について考えていきます。




1. 「短期」と「長期」の視点

 内部監査における発見事項や改善提案には、短期的な対応が必要な事象と、中長期的な取り組みが必要な課題が存在します。短期的な対応は、コンプライアンス違反や重大なリスクなど、緊急を要する改善が必要な事象に対して行われます。一方、中長期的な取り組みは、組織の構造的な課題や持続的な成長に関わる本質的な課題に対して求められます。

2. 時間軸を考慮した改善提案

 内部監査において特定した発見事項に対する改善提案は、どのような時間軸(短期、中期、長期)で改善していくことが効果的か、それぞれの特徴と課題を踏まえて検討することが有用です。

【短期的な対応】

○ 特徴
・直ぐに一定の効果につながる
・具体的な解決策となる
・効果は比較的測定し易い

× 課題
・表面的な対応に留まる可能性がある
・根本的な解決につながらない可能性がある

【長期的な対応】

○ 特徴
・本質的な課題解決が可能になる
・構造的な改善につながる
・持続的な効果が期待できる

× 課題
・実現までに時間を要する
・具体的な成果が見えにくい
・長期化によって、比較的費用がかかる

3. 実務での応用

 以下では、システムリスク管理の監査を例に挙げます。

【短期的な対応が必要な事象】

・アクセス権限の不備
・バックアップの未実施
・セキュリティパッチの未適用

【長期的な取り組みが必要な課題】

・システム基盤の老朽化
・IT人材の育成
・デジタル化戦略計画の推進

4. バランスの取れた改善提案

 効果的な改善提案のためには、以下のような段階的なアプローチが有効になります。

フェーズ1(短期:3ヶ月)
・緊急性の高いリスクへの対応
・運用面での暫定的な対応

フェーズ2(中期:1年)
・体制
・プロセスの整備
・部分的なシステム改修

フェーズ3(長期:3年)
・抜本的な構造改革
・次世代システムへの移行

まとめ

 「短期」と「長期」の視点は、相互に補完し合う関係にあります。現実的な対応と理想的な姿の両方を見据えた提案を行うことで、より価値の高い内部監査が実現できます。

 これまで12回にわたり、「内部監査の二面性」というテーマで連載をお届けしました。このシリーズが、皆様の監査実務のお役に立てれば幸いです。

いいなと思ったら応援しよう!