08コーチングx内部監査:新任監査人(金融機関)成長ストーリー~配属後6ヶ月間の学びと気づき~
本シリーズは12回シリーズでお届けしています。
00【連載予告】コーチングx内部監査:新任監査人(金融機関)成長ストーリー~配属後6ヶ月間の学びと気づき~|TAIZO
第8回:改善提案の組み立て - 実効性のある提言とは
はじめに
内部監査の目的は、発見事項を特定するだけでなく、その問題点の改善を促すこと(再発の防止)にあります。新任監査人にとっては、発見事項の根本原因を究明し、実効性のある再発防止策を提言することは容易ではありません。実効性のある提言をするために、具体的にどのように改善提案を組み立てるのか、一緒に考えていきましょう。
1. コーチング手法を活用した対話:改善提案の考え方
佐藤(教育係): 「営業推進部の監査で発見した説明資料のリスクについて、改善提案は、どのような内容で考えていますか?」
鈴木(新任監査人): 「そうですね・・・説明資料の内容を修正する案を考えていますが、他に何を提言すべきか悩んでいます。」
佐藤: 「なるほど。では、この問題の根本原因は何でしたか?」
鈴木: 「根本原因は、資料作成プロセスのチェック体制が不十分であることです。また、説明内容に関する研修が十分ではない可能性もあります。」
佐藤: 「なぜ、チェック体制が不十分だったのでしょうか?不十分というのは、何が足りなかったのですか?」
鈴木:「具体的には、レビューを行う担当者が十分にリスク情報を理解していなかったことが一つの要因でした。さらに、レビュー項目が明確に定められておらず、主観的な判断に頼っていた点も問題でした。」
佐藤:「良い分析ですね。それでは、レビューを行う担当者のリスク理解が不足していた理由は何だと考えていますか?」
鈴木:「はい、ヒアリングに加えて教育・研修資料を確認したところ、リスク情報に関する解説はなく、明確な基準は提供されていなかったことが原因だと考えています。また、チェックリストのような標準化されたツールがないため、レビューの一貫性は確保できていませんでした。」
佐藤:「なるほど。では、この点を解消するために、どのような提言が考えられるでしょうか?」
鈴木:「はい、まずリスク情報を担当者が適切に理解できるように設計した教育・研修を定期的に実施することが必要です。そして、レビュー項目を明文化したチェックリストを作成し、すべてのレビューで使用する仕組みを導入します。」
佐藤:「良い提案ですね。他には、必要な取り組みはありませんか?」
鈴木:「例えば、過去のレビュー結果や発見事項を共有し、どのような点が改善につながったのかを事例として振り返る場を設けることが効果的だと考えています。」
佐藤:「その視点は重要ですね。引き続き、関係者と協議を進めてください。」
2. 改善提案の基本的な考え方
実効性のある改善提案を行うためには、以下の3つの視点を盛り込むことが重要です。
1. 実現可能性
具体的であること: 誰が、いつ、どのように対応すればよいのかを明確にする
(例)説明資料の作成時に「リスク確認チェックリスト」を導入
リソースを確保する: 提案内容に必要な人員、時間、コストを考慮する
2. 効果の測定可能性
指標の設定: 改善提案の効果を測定するための具体的な指標を設定する
(例)「顧客満足度調査の結果」や「説明資料のミス件数の減少率」など
フィードバックの仕組み: 提案が実行された後に、改善結果を評価する仕組みを整備する
3. 持続可能性
仕組み化: 提案を一時的な対応に留めず、継続的な対応につながる改善とする
(例)教育・研修を年度計画に組み込む
カルチャーの醸成: 改善に向けた取り組みが組織カルチャーとして浸透するよう、継続的なサポートやモニタリングを実施する
3. コーチングのポイント:根本原因に焦点を当てる
改善提案を組み立てる際には、表面的な問題ではなく、根本原因に焦点を当てることを促すことが重要です。
問いかけ
「この問題が発生した根本的な原因は何ですか?」
「提案した改善策は、他の問題にも適用可能ですか?」
「改善策を実行する上での障壁やリスクは何ですか?」
「この改善策を持続可能にするためには、どのような仕組みが必要ですか?」
4. まとめ
実効性のある改善提案を組み立てるためには、発見事項の根本原因を究明した上で、以下の3つの視点を盛り込むことが重要です。
実現可能性: 提案内容が現実的で具体的であること。
効果の測定可能性: 提案内容の効果が評価可能であること。
持続可能性: 一時的な対応ではなく、継続的な対応につながる改善であること。
次回予告
次回は、「報告書の作成 - 明確な論点の示し方」というテーマでお届けします。