07コーチングx内部監査:新任監査人(金融機関)成長ストーリー~配属後6ヶ月間の学びと気づき~
本シリーズは12回シリーズでお届けしています。
00【連載予告】コーチングx内部監査:新任監査人(金融機関)成長ストーリー~配属後6ヶ月間の学びと気づき~|TAIZO
第7回:発見事項の評価 - 重要度の判断基準
はじめに
発見事項の重要度を適切に評価することは、内部監査において不可欠なスキルです。しかし、新任監査人にとっては、「実際にどのように判断すべきなのか」や「個々の発見事項は、どの程度深刻な問題なのか」を評価するのは容易ではありません。
発見事項の重要度を適切に評価できなければ、リスク対応の優先順位を誤り、重大な問題を見逃してしまうリスクがあります。発見事項の重要度は、具体的にどのように評価するのか、一緒に考えていきましょう。
1. コーチング手法を活用した対話:重要度判断の考え方
佐藤(教育係): 「営業推進部の監査で、何か気になる点は見つかりましたか?」
鈴木(新任監査人): 「はい。新商品の説明資料で、一部について、商品リスクの説明が不十分なケースを見つけました。ただ、これをどの程度の問題として結論づけるべきか・・・。」
佐藤: 「そうでしたか。では、この問題は、どのような影響が考えられますか?」
鈴木: 「お客様への影響としては、商品性を十分に理解できないまま契約してしまうリスクがあります。また、コンプライアンス上の問題にもなり得ますね。」
佐藤: 「具体的に、どの法令や基準に触れるリスクがありますか?」
鈴木: 「金融商品の販売時における説明義務に関する法令等に違反する可能性があります。」
佐藤: 「その通りですね。さらに、組織全体への影響も考えると、この問題はどのような意味を持ちますか。」
鈴木: 「はい・・・今回のような説明不足は、一部の商品にとどまらず、他の金融商品も含めた説明プロセス全体の問題につながる可能性があると考えています。また、監督当局からの指摘対象になるリスクもあります。」
佐藤: 「それらの視点は重要ですね。同様の問題が他にも存在する可能性について、具体的にはどのように考えていますか?」
鈴木: 「他の商品資料の確認や、研修体制、承認プロセスを改めて確認する必要があると考えています。」
佐藤: 「横断的な視点は重要ですね。発見事項の重要度を判断する際は、個別の事象だけでなく、内部管理態勢全体への影響も考慮する必要があります。」
2. 重要度判断の基本的な考え方
発見事項の重要度を評価する際は、以下のような点(例)を考慮することが重要です。
1. 影響度
顧客:顧客の誤解やクレームが発生する可能性
法令遵守:関連する法規制への違反リスク
財務:売上損失やコスト増大の可能性
レピュテーション:SNSやメディアでの批判の拡散
2. 発生可能性
発生頻度:問題が発生する頻度
再発可能性:今後、類似の問題が生じる可能性
管理態勢の有効性:既存の対応策の十分性
3. 改善の緊急度
即時対応の必要性:顧客保護や監督当局からの指摘を踏まえた緊急度
許容期間:改善にかかる時間的な猶予
代替策の有無:問題解決までの一時的な代替手段の有無
3. コーチングのポイント:多角的な視点で考える
重要度を評価する場合には、多角的な視点で問題を分析することが重要です。
問いかけ
「この問題が長期化すると、どのような影響が考えられますか?」
「同様の問題は他にもありそうですか?」
「どのくらいの期間で改善が必要ですか?」
「この問題は、組織の内部管理態勢全体に、どのような影響がありますか?」
これらの問いかけに答えることで、問題の本質に迫り、発見事項の重要度を適切に評価することが可能になります。
4. まとめ
発見事項の評価は、その影響度や発生可能性、改善の緊急度などの視点を軸にした多角的な視点が必要です。また、発見事項の評価は、その後の改善提案にもつながる重要なプロセスです。
次回予告
次回は「改善提案の組み立て方」というテーマでお届けします。