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07【連載】「実践!内部監査チームマネジメント」:ナレッジ蓄積・活用の仕組み
はじめに
情報共有について、以下のような悩みを抱えていませんか?
「情報共有が大事なのは分かっている。でも、長くは続かない」
「定型的な監査なのに、毎回一から監査手続を作成している」
「他チームの過去の監査を参考にしたいが、共有の依頼が面倒」
情報共有の仕組みは、なかなか機能しないとよく聞きます。しかし、そもそも 情報共有は何のために行うのでしょうか?業務上の情報共有は、単なる「情報の共有」ではありません。それは、以下のような目的をもって、情報資産を管理し、活用することです。
個人の知識・経験を組織知として体系的に整理し、活用すること
属人化を防ぎ、平均的な監査人でも一定の品質で監査ができる環境を作ること
先輩監査人の成果(監査を通じて得られた知見など)をもとに、より効果的かつ効率的な監査を実現すること
しかし、現実には知見は個人の中にとどまり、組織の知識として活用されていません。本記事では、この課題を解決し、情報資産を蓄積・活用する方法を解説します。
1. なぜナレッジ管理はうまくいかないのか?
(1)知識が個人にとどまり、活用されない
監査案件ごとに監査人が得た知見は蓄積されるはずですが、多くの場合、それらは部門全体の知識として活用されていません。
(例)
「去年の監査で同じような問題点が特定されたが、当時の監査調書が見当たらない」
「誰かが作成したチェックリストがあった気がするが、どこに保管されているかわからない」
(2)蓄積の仕組みがなく、知識が埋もれる
監査調書は存在するものの、以下のような状態では、せっかくの知見も活用されません。
一元化されておらず、所在が直ぐに分からない
ファイル形式が統一されておらず、どれが重要な情報か分からない
監査案件ごとに関連資料は保管されているが、情報が整理されておらず、必要な情報を入手しづらい
2. 効果的なナレッジ蓄積・活用の仕組み
では、どうすれば知識を「個人の経験」から「組織の資産」に変換できるのでしょうか?
(1)何を蓄積すべきか?
繰り返しになりますが、そもそも情報共有の目的は、「情報資産を管理し、活用すること」です。そのため、すべての情報に目を向けるのではなく、「活用される知識」に焦点を当てることが重要となります。
特に、以下のような知識は組織全体での活用価値が高いでしょう。
(例)
監査手続のベストプラクティス(どのような手続が効果的だったか)
リスク評価の判断基準(どのような視点でリスクを評価すべきか)
発見事項の類型と対応例(これまでに、どのような問題/課題があり、どのように対処したか)
改善提案の成功事例(実際に有効であった改善策は何か)
監査調書の好事例(わかりやすい監査調書のフォーマット)
(2)検索しやすく、更新しやすい仕組みを作る
情報は蓄積するだけでは意味がありません。活用されるためには、「見つけやすく」かつ「管理しやすい」 ことが重要です。
体系的に一元管理する(日付順や番号順などで整理する)
カテゴリー分類の標準化(分かりやすいタグ付け)
検索機能の強化(必要な情報にすぐアクセスできる)
アクセス権限の設定(適切な人が適切な情報を活用できるようにする)
バージョン管理の徹底(最新情報を維持する)
3. ナレッジを「活用できる」仕組みにする
(1)共有の仕組みを整備する
情報は蓄積するだけでなく、活用されてこそ意味があります。そのために、以下のように情報を定期的に共有する仕組みを作ることが重要です。
定期的な事例共有の会合を持つ(過去の監査事例を共有)
監査報告会での知見を共有する(成功事例・失敗事例を振り返る)
新任監査人向けの研修で活用する(ナレッジを研修資料に組み込む)
(2)継続的な改善サイクルを作る
ナレッジ蓄積の仕組みは構築して終わりではなく、継続的に改善していく仕組みも合わせ持つことが大切です。
定期的な情報の棚卸し(古い情報を整理し、鮮度を保つ)
フィードバックの収集(現場での使い易さを確認し、改善していく)
情報を更新する責任者の明確化(誰が情報をメンテナンスするのかを決める)
おわりに:情報は、「活用」するもの
業務上の情報共有は、単なる「情報の共有」ではありません。それは、目的を持って情報資産を管理し、活用することです。
次回予告
次回は、「情報共有ツールの活用」について解説します。効率的な情報共有を実現するツールの選択と活用方法をご紹介します。