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07ことわざ:内部監査の実務から見えてくる深層

第7回「転ばぬ先の杖」

このことわざは、失敗を未然に防ぐための備え・予防の大切さを説いています。内部監査の実務でも、予防的な内部統制の整備・運用状況は評価の対象であり、不正やエラーを未然に防ぐための統制活動は必要不可欠である場面に多く接します。

しかし、過度に予防的な統制を求めることは、かえって組織に悪影響を及ぼす可能性もあります。

例えば、承認プロセスの多層化や詳細な記録を求め過ぎると、業務の効率性を低下させる可能性が生じます。また、詳細なルールの設定を促すことで、かえって現場の創意工夫や柔軟な対応を阻害してしまうことにもなりかねません。

予防的な統制の整備状況を評価する際には、以下のような観点も重要になります。

  • コストとベネフィットとのバランス:統制活動に要するコストと想定されるリスクの影響度との比較

  • 業務効率への影響:過度な統制による業務の停滞や現場の業務負荷の増加の有無

  • 代替的な統制:モニタリングなど、他の統制手段による補完の可能性

このことわざが説くように、確かに予防は重要です。また、予防策を提案することは、監査人にとって、自らのリスクヘッジにもなるでしょう。

しかし、真に組織に価値を提供する監査人となるためには、組織の実態やビジネスの特性を理解した上で、コストとベネフィットのバランスを考慮した提案が求められます。これは、監査人の力量が試される場面と言えるでしょう。

第8回は、「良薬は口に苦し」を取り上げます。

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