東京ディズニーリゾート値上げ所感

ディズニーリゾートのパスポートのダイナミックプライシングが発表されました。

閑散期と繁忙期で値段を変えるダイナミックプライシングはテーマパークだけでなく、飛行機なんかでも取り入れられてる仕組みです。アメリカの両パークも採用してます。
まぁ今回はダイナミックプライシングと言いつつ、閑散期が現行価格らしいので実質値上げですね。

ここ数年連続している値上げも、今回のダイナミックプライシングも、ホテルの追加建設や、新エリアの建設も含めた「東京ディズニーランドのスタンスの変化」によるものだと思ってます。
Twitter等でたまに見かける営業成績によるものとか、金満経営みたいなネガティブなアイデアではなくて、長く計画されてきたものがやっと成就しそうなんだと。
そういう見方もあるのだなと、知っもらえたらと思い、まとめることにしました。

舞浜の特殊性

まず知って欲しいのは、舞浜の遊び方の特殊性です。
それは販売されているWDWとTDRのチケットの種別から見て取れます。

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見れば分かりますが、上がWDWで、下がTDRです。

1つ目の大きな違いは、日数選択の重要度です。WDWは日付を選択しないと先に進めませんが、TDRはワンデーを前提としています。
コロナでマルチパスが選択できないというのもありますが、逆に言えばWDWはこの状況でもマルチパスを販売しているということです。

WDWの1Dayは15000円。まぁこれを買う人ほとんどいませんが、なんと高いと言われるTDRの2倍です。その代わり、長期滞在すればするほど、1日あたりの金額は安くなる。つまり、長期滞在を前提とした価格設定になっています。これを「リゾート型パーク」としましょう。

これは確か現地キャストと雑談した時に聞いた話ですが

WDWに行くのは、子供の頃に1回、大人になって子供を連れて1回。子供を連れて行くことが親としてのステータス。

と言われているそうです。もしかしたら他に出典あるかもしれません。
バケーション(長期休暇)を取り、現地のホテルに長く滞在し、パークだけでなくプールやショッピング、キャンプサイトやホテルアクティビティを体験したりして、ゆったりと過ごす。
現地の人と日本からの観光客のどちらも、パークに対して「人生で数回の贅沢」だと思って遊びに来ています。
これが典型的なリゾート型の遊び方です。

一方で、TDRは1day主体です。
もう1つの大きな違いとして「スターライトパスポート」「アフター6パスポート」があります。午後3時や午後6時からパークに入れる割引チケットのようなものです。
1dayどころか、半日チケットです。ニワトリタマゴでどちらが先かは分かりませんが、これが「学校終わりや仕事終わりにふらっと行く」という、TDRの特殊な遊びを可能にし、またそれを推奨していたと言えると思います。このような「気軽に遊べる」構造を「都市型パーク」としましょう。

この差を可能にしたのは都市部からのアクセスの差だと思いますが、それは別で書こうかな。

都市型パークの歴史

そもそも、ディズニーランドとディズニーシー、舞浜一帯のホテルエリアを指して「東京ディズニーリゾート」と呼ぶようになったのは2000年です。

公式サイトによると舞浜エリアのリゾート化の話が最初に出たのが1985年です。ディズニーランド開園は83年なので、開園時点ではリゾートの計画はなかった事になります。

当時はホテルもなく、イクスピアリもありません。前述の通り、リゾート型を前提していなかったので、長期滞在に適した構造にはなってません。
そんな中で、ゲスト数を増やしていかないといけないパークは、1987年にスターライトパスポートを発売したそうです。
舞浜駅の開業が1988年です。当時僕は4歳なので、まったく記憶にありませんが、それに合わせた発売だったんでしょう。
その後、TDRは独自の文化を形成していくようになります。

1997年にアフター6パスポートが発売され、2005年にはキャンパスデーパスポートが発売されます。2008年についに「制服ディズニー」という単語が初めて生まれます。
出典;東洋経済

こうして、1985年に計画され、2000年にリゾートと名乗ったにも関わらず、リゾート型からはどんどん離れ、家族だけでなく若者のデートスポットであり、関東圏のプレイスポット、学生達が奮発して遊びに行く場所の1つとして、日常のすぐ側にある都市型パークの特色は極まっていきました。

都市型パークの弊害

前述の通り都市型パークが極まった結果、大きな弊害が生まれたと僕は思っています。それは度々問題になるマニア達の地蔵行為や、マニアでないゲスト達の撮影マナーではないです。

特に関東圏に住む方で、今まで

またすぐ来ればいい

って思う事はなかったでしょうか?
僕は正直あります。
これは、リゾート型の代表であるWDWの項で記載した

人生で数回の贅沢

という感覚の真逆を行くものであり、これこそ「日常の側にある」都市型パークの産んだ弊害だと思っています。反省。

ピーターパンでもないのに、夢の国にホイホイと訪れれば、1回1回の体験の密度は下がっていきます。「日常」は本来、夢の国の対極にある存在です。言い換えれば「普通」であり、夢と魔法からは程遠く、その体験時間からスペシャルさを奪っていくものと言える思います。

以前、滅多にディズニーランドにいかないという人を案内した事がありますが、その人は見るもの全てにキラキラとした眼差しを向けていました。
あのスペシャルな感覚を今も僕が持てているだろうか。

また、気軽さはコンテンツの消費スピードも上げてしまいます。ディズニーパークは常に何かが変化する「永遠に完成しないテーマパーク」ですが、頻度が上がれば当然、変化を感じることが出来なくなります。

それに対応するには、イベント等のソフト面での更新を行うしかないため、日本のイベント回数は海外パークに比べると非常に多いです。
ですが、それにも限度があります。

リゾート型への転換

こうした弊害が本当に問題なのかは分かりませんが…
ディズニーシーとイクスピアリがオープンし、ホテルやリゾートライン等のエリア内移動手段が充実し、さらに新エリアも追加されました。
規模の差はありますが、WDWにある要素が満たされつつあります。やっと長期間滞在して遊ぶ、一生に何回かの贅沢をするリゾート型に切り替えるための準備、インフラが整いました。1985年以来の悲願です。

やっと!

35年かかって!

今回のダイナミックプライスや、これまでの値上げは、短期的な経営状態解消というようなインスタントなアイデアでは決してないと思います。
リゾート型に転換するにあたって、日常から切り離す必要があった。そのために値上げ(WDWに足並みを揃える)という手段を取った。
こういった背景があると思うと、ちょっと「確かに」って思えませんか?

今後はきっともっとリゾート型への転換が進むと推測します。
パークホッパーやマルチデー割引といった既に海外リゾートにあるチケット種別が取り入れられたり、マジックバンドのような共通デバイスが導入されるかもしれません。

これまでのパークに慣れ親しんでいれば、大きな変化には戸惑います。
これはミッキーフェイスの世代交代の時もそうでした。

「値上げに伴う体験が出来ているのか。」という話もよく聞きます。これに関しては、リゾート型に転換することで相対的な価値が上がるため、結果的に体験は上がるんだろうと推測しています。
もちろん、家族連れ向けに子供料金だけでも下げてあげたらいいのになぁとか、ホテルアクティビティが欲しいなぁとか、スピリットジャージみたいなシンプルなアパレル増えないかなーと、色々思う事はありますが、それはそれです。

ウォルトは

成長しないなら、死にかけているんだ
ディズニーランドは永遠に完成しない。世界に想像力がある限り、成長し続けるだろう

と述べています。
成長とは、常に変化と共にあるものです。変化の中にはポジティブな成長に繋がるものだけではなく、ネガティブな成長をしてしまうものもあります。
ただ、変化しなければ成長はありません。

みんなが大好きなディズニーパークがこの先も成長し続けるために、今は痛みを伴いつつ、大きな変化をする時期なんだと思います。

おわりに

冒頭でも書きましたが、この投稿は、インターネットに溢れる批判的なメッセージを受けて書こうと思い立ちました。
一石を投じるという程ではないですが、パークの見方として、こういうのもあるというのを知ってもらえたら嬉しいです。

長文失礼しました。

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