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豊橋の新アリーナ建設予定地を歩いて聞き込みしてみた
三遠ネオフェニックス(以下、三遠)のホームタウンのひとつである豊橋市長選は11月10日に行われ、豊橋公園新アリーナ建設反対を公約に掲げた長坂尚登氏が当選しました。
2026-27シーズンから始まるB.LEAGUE PREMIER(以下、Bプレミア)参入に際し、三遠はこの豊橋公園新アリーナを新しいホームアリーナとして申請、2024年10月に発表されたBプレミア参加クラブとして承認されました。
豊橋公園新アリーナ構想のこれまで
豊橋公園新アリーナ建設構想は、2016年頃から表に出てきました。当時の佐原光一豊橋市長が公約として掲げ、ゼビオホールディンングス子会社のクロススポーツマーケティングを民間事業者として協議を重ねていたものの、協議が成立せず基本協定の締結に至らず2019年に協議の打ち切りとなりました。
2020年には豊橋市長選挙で「新アリーナは他の場所で、時期は見定めて」と掲げた浅井由崇氏が現職の佐原光一氏を破って当選。しかし2022年5月に豊橋公園を最適な新アリーナ建設候補地として事業を進めていくことを発表。当初案に回帰したことで新アリーナ建設反対派は住民投票による賛否を求めるが、市議会の議決により住民投票は行われませんでした。
建設予定地が隣接する豊川や朝倉川の河川氾濫被害浸水区域になっていた事から、新アリーナ建設予定地を少しずらして、豊橋公園内の豊橋球場を解体して新アリーナ建設地として、逆に現在の豊橋市総合体育館がある豊橋総合スポーツ公園に新野球場を整備する計画としました。
そして2024年9月、豊橋市は浅井市政のもと市議会が新アリーナ計画を可決。スターツコーポレーションを代表とする「TOHOHASHI NEXT Parkグループ」を新アリーナ建設・運営事業者として基本協定を結びました。
そして2024年11月10日の豊橋市長選挙で、新アリーナ建設反対を掲げた候補が当選した。というのが今までの流れです。ちなみに豊橋球場は2024年10月からすでに解体が開始しています。
追記:豊橋球場の解体工事は現在中断されているそうです。
新アリーナ建設地の豊橋公園を歩いて聞き込みしてみた
すこし時間をさかのぼって2024年3月。僕は豊橋市にいた。三遠ネオフェニックスvs琉球ゴールデンキングスGAME1取材が目的。
GAME1を琉球が勝利した翌日。豊橋駅近辺のホテルをチェックアウトした僕は「新アリーナ建設地を見ておく」というもう一つの目的を遂行することに。
まずはスタート地点。もちろん豊橋駅だ。東口が豊橋公園側。駅ロータリー近くには三遠のイケメン指揮官が陰影強めでこちらを見つめるのぼりがあった。
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豊橋駅から豊橋公園までは約2km。歩けない距離じゃないけど、新アリーナ完成時に観客がどんなルートで向かうのか体験することも目的なので、情報収集もかねてまずは駅ロータリーからタクシーに乗車。タクシーの運転手さんは地元情報の有力な情報源なのは刑事ドラマを見てリサーチ済みだ。
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聞き込みその 1 タクシーの運転手さん
運転手さんに「豊橋公園まで」と告げてタクシー発進。おもむろに「沖縄から来たんですよバスケを観に」と話しかけると、運ちゃんは「あー昨日豊橋体育館で試合あったよね。沖縄強いよねー」とお返事。もともと三遠が試合があったことは知ってたし、地元TVニュースでもやってたそう。そうなのか。三遠って地元人気はいまいちなのかなーと思っていたので意外な滑り出し。
聞き込みは順調。豊橋球場を解体して新アリーナ建設する話をふってみると、これも知っていた。「豊橋は野球場は3つもあるし、プロ野球もやる球場(豊橋市民球場、豊橋市岩田町)があれば豊橋球場は無くてもいいんじゃないかねー。よく祭りとかで使ってるけどね」と有力な情報。そうなのか。市内に野球場は3つもあるのか。そっちの方に驚いた。
豊橋市の賑わいについても聞き込み。「いまはそんなに外から人が来ないからね。隣の豊川市は住宅地って感じだし、そんなに賑わってるって感じじゃないね。」新アリーナ計画についても聞いてみると「計画は知ってるよ。それで賑わえばいいけど、ちょっと駅から離れてるし、いっぱいお客さんが来たら難しいんじゃないのかね」と肯定面と否定面を両方提示するという完璧さ。僕はタクシーの運転手という職業に最大限の敬意を払わずにはいられなかった。
素晴らしい聞き込みをしつつ、タクシーは10分程度で豊橋公園に到着。運ちゃんに多めのチップを支払いたい気持ちをぐっとこらえ、メーター通り1,330円をお支払いして豊橋公園に降り立った。
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幹線道路から少し入って公園の入口。主要道路からのアクセスは悪くない。緑が生い茂る雰囲気の良い公園だ。
公園内を少し歩いても、園内をウォーキングで散策する人、スポーツウェアの人にすれ違う。日曜日の午前中の穏やかな空気。
まだ少し肌寒い空気の中、僕は豊橋球場に向かった。
聞き込みその2 豊橋球場の元球児
球場では僕と同じくらいの元球児の皆さんが野球を楽しんでいた。白熱した(?)試合を横目にまずは球場の周りをぐるっと一周してみた。
豊橋球場は「球場」と名が付いているが、外と区切るゲートも無ければフェンスも無い。センター後方にスコアボードとナイター可能な照明施設はあるが、観客席と呼べるものはバックネット裏に少しだけのベンチ。一塁側から外野、三塁側まで芝生と樹齢を重ねた木々で覆われていた。「球場」というよりは「野球グラウンド」と言った方がしっくりくる。運ちゃんは正しかった。
球場を一周した僕は、元球児たちに話を聞く事にした。彼らは解体されるこの豊橋球場の大事なユーザーだ。きっと言いたい事が沢山あるに違いない。怒りで怒鳴られるのを覚悟して、僕は「すいません沖縄から来たんですけどー」と腰低めで話しかけてみた。
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聞けば今やってる野球の試合はただの草野球ではなく、全国で行われているマスターズ甲子園の決勝(?)なんだそう。「沖縄でもやってるよマスターズ甲子園」と教えてもらい、世の中知らないことだらけだと再確認。
昨日の三遠vs琉球を取材しに来たことを告げると「あー昨日試合やってたね。沖縄勝ってたでしょ」と回答。この人たち野球しに来てるのにバスケのことも知ってるのか。。「もともと昔バスケしてたこともあるしね。バスケも好きだよ」と回答。「アイシン(三河)は昔から強かったけど、最近はオーエスジー(三遠)も強いよね。だから試合はチェックしてるよ」愛知のスポーツ愛恐るべし。
この豊橋球場が解体されて新アリーナが建設されることについて聞くと「知ってるよ。もうすぐ解体されるんだよね。でも新しい球場を海沿いに建てるって言ってるし、別にいいんじゃないかな。ここ古いしね」と驚くべき回答。そうか元球児にとっては新しい球場で野球出来たらその方が楽しいか。車で球場に行くなら海沿いの方が駐車場も広いだろうし。。
元球児たちにお礼を言いつつ、豊橋球場を離れて公園内をさらに散策。球場のすぐ隣にあるこども広場と呼ばれる広場では、こども陸上クラブと思われる多くの小中学生が練習をしていた。確か100人近くいたような。
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もしここに新アリーナが完成したら、この子達の練習場所であるこども広場も今まで通りに練習できないかもしれない。そうだこの子達のコーチは怒っているに違いない。僕は子ども達の練習を見守るコーチらしき男性に、怒鳴られるのを覚悟で「すいません沖縄から来たんですけどー」と低姿勢で聞き込みを開始した。
聞き込みその3 こども陸上クラブのコーチ
「あー新アリーナね。この球場を壊して作るんでしょ。いいんじゃないかなイベントがあれば人もいっぱい来てくれるし」と好意的な回答。この公園内には反対派は存在しないのか!?
僕がバスケの取材に来た事を話すと、そのコーチは昨日の三遠vs琉球を現地で観戦したそう。何たる偶然いや必然なのか。「すごくいっぱいお客さん来て盛り上がってたね。試合も面白かったし良かったよね」と笑顔。愛知のスポーツ愛恐るべし。
さらにコーチは話し続ける。「沖縄にも立派なアリーナ作ったんでしょ。豊橋にも立派なやつを作って活性化させたらいいんだよ」もはや陸上のコーチなのかアリーナ評論家なのか分からない見識の広さ。聞き込みがいがある対象者に僕は「でも新アリーナは反対の声も大きいんですよね」と振ってみると「いやでもほぼ(新アリーナ建設は)決まってるらしいよ。僕も知り合いから聞くし、沖縄のアリーナの話もよく聞いてるよ」と。本当に関係者なのかも。
驚愕の聞き込み撮れ高に身震いしていると、小さいお子さんを連れたお母さんがコーチに「すいません入団希望なんですけど」と話しかけてきた。コーチに陸上クラブの話を聞くと「うちは愛知でも大きな陸上クラブで、うちの出身選手で国体クラスの選手も多く輩出してるんだよ」とのこと。まさかの名門クラブだった。
ここまで聞き込み対象者は3名。それぞれがそれぞれの立場で新アリーナ建設計画に好意的な意見をくれた。意外すぎる。。
豊橋公園は吉田城の跡地
このままだと賛成派に意見が寄りすぎてて良くない!と僕の中の誰かがつぶやいたので、もう少し豊橋公園内を散策しつつ「この場所をこのまま残したい理由」を考えてみました。
今度は川沿いを歩いてみます。朝倉川と豊川の合流地点です。もうすぐ春が訪れる陽気で、川沿いをウォーキングする方々も心なしか楽しそうです。あと数週間もすれば川沿いにソメイヨシノの花びらが美しく舞う光景が想像できます。
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川沿いを進むと、明らかに城跡と思われる石垣が続きます。そう、この豊橋公園はかつての三河吉田藩の吉田城の城址だったのです。
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この豊橋公園に吉田城天守閣は現存していないものの、二の丸や三の丸の地形を利用して文化施設や先ほどの豊橋球場、そして西側には豊橋市役所が建っています。この場所は近代に区画整理された中心地や公園ではなく、江戸期から地域の象徴である吉田城があり、その周辺に広がる宿場町に人々の生活や文化の歴史が残る場所だったのです。
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人々の記憶は土地に深く宿ります。そして人間はその記憶が薄れゆくことに抗いたくなるものです。
新アリーナ建設反対派の方々がどのような理由で反対しているかまでは言及しませんが、少なくともこの豊橋公園には数百年の「人々の記憶」が受け継がれる場所であることは間違いなさそうです。
新アリーナからの帰り道は路面電車で
豊橋公園もとい吉田城址をあとにした僕は、豊橋駅への帰路につきました。行きはタクシー利用でしたが、帰りは歩いてみることにしました。約2kmの道のりは徒歩で約30分弱でしょうか。勝利の余韻に浸るにはちょうどいい距離かもしれません。
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歩き始めて10分ほどですぐに飽きてきちゃいました(笑) 豊橋公園から豊橋駅までは幹線道路である国道1号線や259号線をまっすぐ進めばいいだけなので道は迷わないですが、道が広すぎて同じような光景が続きます。
それら幹線道路の中央部には路面電車が走っています。愛知県で唯一らしいです。せっかくなので路面電車に乗って駅まで帰ることにしました。
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乗車スペースは広くはありません。1両編成の路面電車なので当然ですが。ただのんびり動く乗り心地は悪くありません。
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豊橋公園付近の停留所から豊橋駅まで10分ちょっとでしょうか。もうすぐ僕の新アリーナ建設地視察も終了です。
ただ路面電車の停留所ごとに何故か撮り鉄さん達が身構えていました。なぜだろう?そんなに人気のある路線なのか?
鉄ではない僕は疑問を持ちつつ、終点の豊橋駅に到着しました。そこでも撮り鉄さん達が撮影に夢中です。
小さな撮り鉄さんのお母さんらしき方に聞いてみると、僕の乗車した車両は広告ラッピングを変更する合間に走る無地の白車両で、ほんのちょっとの期間しか走らないので逆に人気があるそうな。世の中知らないことだらけだと再確認。
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いかがでしたでしょうか。豊橋の新アリーナ建設予定地を探索していると、豊橋という街が見えてきた気がしませんか。僕はこの数時間の探索を終えて、豊橋という街がちょっと好きになりました。
この取材旅行は中部国際空港から愛知県に入ったんですが、豊橋市まで非常に遠かった。。「愛知県に4つもB1チームあるなんて多すぎ」と思ってましたが、体感的には名古屋市と豊橋市は完全に別の経済圏。相当なファンブースターでない限り、名古屋から豊橋に遠征するのは躊躇うはず。
豊橋市周辺ほどの経済圏なら、新アリーナがあっても不相応ではないはず。しかしそれは適切なアリーナ運用をしてこそ。それが分かったのはやはり現地を自分の足で歩いたから。
僕は立場上、素晴らしいアリーナを中心としてそれぞれの街が活性化することを夢見ていますが、それが全ての街で起こるとは限りません。街のことは街の人たちが考え、話し合い、そして決めればいいと思っています。
最後に、豊橋市の新アリーナ構想についてWEBに漂っている様々な意見の中で、僕自身が納得できた肯定意見と否定意見をご紹介します。2024年11月の市政交代が新アリーナ構想にどのような影響を与えるか分かりませんが、良い方向にいくことを願っています。