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【Interview】 アニメーター/ディレクター:廣木綾子|「いい顔を重ねることによって、よいアニメーションができる。」

太陽企画で働く仲間のインタビューをもとに、映像制作のヒントやクリエイターの“スキ“をお届けする 「#たいようのヒト」。
今回は、本noteでも紹介した太陽企画のストップモーションアニメーションスタジオ「TECARAT (テカラ)」に所属する、アニメーター兼ディレクターの廣木綾子(ひろきあやこ)さんのインタビューです。
現在に至る経緯やアニメーションへのこだわり、仕事と育児の両立の秘訣など、多岐にわたりお話を伺いました。


▷ 思い切って会社を辞職しアニメーションの世界へ


── 最初に、廣木さんがアニメーター/ディレクターを目指したきっかけを教えてください。

 大学の頃は、映画のセットデザイナーになりたかったので、大学卒業後は大道具の会社に就職しました。しかし、自分には小さな世界の方が合っていることに気がつき、またアニメが好きでストップモーションに興味を持っていたので、思い切って大道具の会社を辞職して、「アートアニメーションのちいさな学校」でアニメーションを学び始めたのがきっかけです。

── 有名なアニメーションスタジオがある中、太陽企画を選んだ理由は何だったのしょうか?

一言で言うと「人の縁に恵まれて」です。
最初はアルバイトで八代監督の『ノーマン・ザ・スノーマン 〜北の国のオーロラ〜』の制作に参加していました。その『ノーマン』の美術を作っている時に美術デザイナーの根元さんに声をかけていただき、入社することになりました。
最初は八代監督作品に参加していたのですが、しばらくしてCM制作にもお声掛けいただけるようになっていきました。そうやってアニメーションの仕事をしていくにつれ、制作の芯の部分にも関わっていきたいと思うようになり、ディレクターとしてもお仕事させていただくようになりました。

▷ モノを動かすアニメーションが得意


── 個人的には、ディレクションもできるアニメーターである廣木さんの特徴が生かされたコンテンツの1つが「kanjigram」かなと思いますが。

私は形や質感など、そのモノの特徴を見てアニメーションを考えるのが好きなので、「kanjigram」では平面の漢字を立体的に捉えて、漢字に触りながら自由に表現できたので楽しかったです。
モノを動かすアニメーションが得意なので、アイデアが色々出てきて、新しい表現にも挑戦しながら作っていました。

▼「kanjigram」


──「kanjigram」でも様々なモノを作って動かしていますが、映像制作において欠かせないこだわりの道具などはありますでしょうか?
 
写真のアニメーションに使う私の七つ道具です。

指では動かせないような細かいものは、ピンセットやヘラなどを使って動かします。動かすものによって道具を変えるので、どんどん増えています。
ここには入らない大きいものもあります。この前の撮影では鉄板焼きのヘラも使用しました。

▷「一枚一枚、いい顔、いい形をしているか。」


── きれいにまとめて収納されているところからも、こだわりを感じますね。こだわりの道具の他に、廣木さんが映像制作で心掛けていることがあれば教えてください。

ストップモーションならではの考え方かもしれませんが、「一枚一枚、いい顔、いい形をしているか」。
たとえ1カットが一瞬だとしても、いい一枚を重ねることによって、よいアニメーションができるので、「いい顔・いい形」を積み重ねることを心掛けています。
このことは自分自身にも当てはめていて、どんな時でもよりよい精神の自分でいたいと思っています。

── 先ほど「アイデアが色々出てくる」とのお話がありましたが、美術製作・演出のアイデアやヒントを得るために、何かしていることはありますか?

海外のファッションショーやアートワークをチェックしています。素材が面白かったり、アーティストを知るきっかけにもなります。今は、長時間動画を観る時間がないので、ショーの紹介記事などを覗いたりして、気になるものだけ見ています。
それと、今の最大のアイデアは「こども」ですね。やることなすこと新鮮です。

▷ 視点が一つ増えたような感覚


── お子さんが産まれて、仕事に対する考えや何か意識は変わりましたか?

大きく変わりました。
まず仕事のやり方。活動時間が限られる分、考える割合が増えました。細切れの時間で活動するので、付箋やメモツールなどで考えを繋げるように工夫しています。また、アニメーションテスト撮影の時間も限られるので、2Dのアニメーションツールなどを使用しています。
それと、これまで気にしていなかったものが目に入るようになったりして、視点が一つ増えたような感覚もあります。

── 仕事のやり方が変わったとのことですが、ずばり仕事と育児の両立の秘訣は何だと思いますか?

「情報共有」です。
スケジュールの共有だけでなく、家で何がどこにあるか、お世話の手順など、表やネームタグをつくって、誰でもわかるようにしています。仕事でも、自分の現状を共有するように心掛けるようになりました。ただ、どんなに工夫しても両立はまだまだ難しいなと感じています。

▷ 目指すアニメーター / ディレクター像


── お子さんが産まれてパワーアップされたと思いますが、今後挑戦してみたいことや、目指すアニメーター / ディレクター像はありますか?

ものの魅力を引き出せるアニメーター、ストップモーションでやる意味のある作品をつくるディレクターになれたらと思っています。今後挑戦したいことは、短編製作やブランドPVなど、商品を使用したアニメーションをやってみたいと思っていて、密かに商品アニメーションを作ってInstagramに貯めています。

 ▶︎ 「coma.cata」:https://www.instagram.com/coma.cata/


── 廣木さんらしい、とても可愛らしい映像ですね。

最後に、この記事を読んでくださっている方にひと言をいただいて、締めたいと思います。

ストップモーションという手法をもっと多くの方に知ってもらえるよう、いろいろな表現方法を模索しながら、自由な発想でがんばっていきたいと思います!

── ありがとうございました。


▷「思い出の一曲」

「#たいようのヒト」のおまけコーナー。廣木さんのお気に入りの1曲はこちら!

♫ ゆらゆら帝国「空洞です」

<廣木さん コメント>
「くぅ〜ど〜♪(空洞〜)」の歌詞の部分で、自分が空っぽになる感じがして、考えすぎたときに聞いています。



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

【PROFILE 】
廣木綾子|AYAKO HIROKI
アニメーター・ディレクター
 
埼玉県出身 武蔵野美術大学卒。
コンテンツクラフトチーム “TECARAT(テカラ)” に所属。 TECARATのオリジナルストップモーションアニメ作品に携わりながら、コマ撮り作家としてのキャリアをスターさせ、CMやオリジナルコンテンツ作品を手がける。身近なモノの可愛らしさや特徴を引き出すアニメーションを強みとし、企画から造形・キャラクターデザイン・アニメーション撮影と、トータルに行うことができる。
 
 
🎬 WORKS|NTTドコモ「docomo Ethical Kitchen」、テラスカイ「あれこれやらず、これだけ『mitoco』」、「kanjigram」、HTB「onちゃんのきょうはどんなかんじ?」など。


▷ TECARATサイト:https://tecarat.jp/

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