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2025年慶應義塾大学経済学部の数学の総評

全体概観

今年の慶應義塾大学経済学部の数学は、例年と同様に試験時間80分・大問6題・配点150点という形式でした。1題あたりにかけられる時間はおよそ15分強で、計算を伴う設問が多い分、限られた時間内での処理能力が求められた印象です。

全体的には、昨年から大きな形式変更や目新しい出題傾向は見られず、空間図形(ベクトルや球の接線など)や微分積分など、おなじみの分野がバランスよく出題されました。ただし、一部の問題では「積分の計算過程を省略せず書くこと」など明示的な指示があり、公式を丸暗記して結論だけ書くのではなく、プロセスを丁寧に示す力が問われた点が特徴的です。
また、大問によっては場合分け
が多かったり、数列の一般項の扱いが細かかったりと、計算力だけでなく問題を整理して扱う力も試されました。

全体難易度は、標準〜やや難レベルが中心という印象です。問題数が6題と多めなので、時間配分を誤ると解き切れない可能性が高い試験と言えます。一方、誘導が丁寧な部分もあり、やるべきことが明確化されている問題も多いため、解けるところを確実に押さえることが合否を分ける重要なポイントになりそうです。


大問ごとの分析

ここからは、それぞれの大問について「テーマ」「難易度」「攻略のヒント」をお伝えします。どの大問から着手すべきか、どのようにアプローチしていけば良いか、自分なりの方針を固める参考にしてくださいね。


◆大問I (三角関数・絶対値不等式/やや易)

●出題概要

  • (1) 三角関数の基本公式(2倍角・3倍角など)を用いて、図形の長さや面積を求める問題

  • (2) 絶対値を含む1次不等式を満たす整数解 m, n を探る問題

●ポイント

  • (1)では、三角比の公式を確実に使いこなすことが求められます。具体的な角度が分からなくても、定番公式を正しく当てはめれば対応可能です。

  • (2)は、絶対値のある不等式を場合分けして解くという典型的な流れです。図示して考えるのも有効で、誘導に従えばそれほど難しく感じなかったかもしれません。

●攻略法

  • (1)は公式の暗記だけでなく、「どう使うか」を理解しているかが鍵です。三角比は形が似た問題をこなすことで慣れておくとスムーズに対応できます。

  • (2)は絶対値の式をそのまま一気に処理しようとするとミスが出やすいので、場合分けを丁寧に進める習慣づけをしておきましょう。


◆大問II (数列/標準)

●出題概要

  • 部分分数分解や一般項の扱いなど、和と一般項を行き来する問題構成

  • n=1 や n=2 など、特定の初期条件で分けて考える必要がある設定

●ポイント

  • 与えられた特殊な形の和を元に、一般項を導き、それをさらに利用して別の和を求める流れです。

  • 部分分数分解が絡むため、式変形の正確さケース分けの綿密さが重要になります。

●攻略法

  • 数列の問題は誘導に乗っかって計算を進めると比較的解きやすいです。一方で、式変形の途中で小さなミスをすると思わぬ失点につながるので、細部のチェックを怠らないこと。

  • 分数計算や初期項の扱いが不確かだと苦戦します。部分分数分解や添字のずれに慣れておくと安心です。


◆大問III (確率/標準)

●出題概要

  • コインの表裏に応じて座標が変化する設定で、座標と確率の関係を分析する問題

  • (4) では条件付き確率や場合分けがやや煩雑になるが、計算量としてはそこまで重くない

●ポイント

  • 対称性を見抜くのがカギです。同じ確率で左右・上下へ移動するような状況では、事象を左右対称・上下対称で整理するとシンプルになります。

  • 座標の移動パターンを一つ一つ数え上げるよりも、確率的にまとまった式を立てる方が効率的です。

●攻略法

  • まずは小さなケースで具体的に手を動かし、出題の意図を把握することが大事です。その上で、確率をまとめるための公式や場合分けの手順を整理しましょう。

  • 行き詰まったら、きちんと樹形図や座標図に落としてみると意外と早く解決策が見えたりします。


◆大問IV (微分・対数・定積分/やや難)

●出題概要

  • 放物線と直線との交点の x 座標条件や定積分を用いた問題

  • 対数の性質・微分積分の基本を丁寧に組み合わせる必要がある

●ポイント

  • 問題全体としては典型的な微分・積分分野ですが、整数条件の出し方がやや入り組んでいます。

  • (3) などは、グラフの交点や挟む領域を正確にイメージできるかが攻略のカギ。論証を突き詰めると難度が上がるので、与えられたヒントや誘導をうまく活用しましょう。

●攻略法

  • 定積分の応用問題では積分範囲をどう設定するかが常にポイントになります。グラフや座標軸の位置関係を正確に把握し、「どこからどこまで積分するのか」を見失わないようにしましょう。

  • ログの性質を自然に使えるよう、指数・対数の演習を繰り返しておくと役立ちます。


◆大問V (空間ベクトル・球の接線/やや難)

●出題概要

  • 座標空間内の球や直線、平面の交点、接線などを扱う問題

  • (3) 以降は実質的に3次元ベクトルの処理が中心となり、計算が増えがち

●ポイント

  • 2次元で考える円の接線を下地に、3次元空間へ拡張していく流れです。空間図形の発想をキチンと持っていないと混乱するかもしれません。

  • 1つ1つのベクトル処理自体は難しくはないですが、間違えやすい要素が多いので丁寧さが要求されます。

●攻略法

  • 空間ベクトル問題では、「まず2次元で理解してから3次元に戻す」やり方が有効です。断面図などを描きながら整理するとイメージがつかみやすいでしょう。

  • 球の方程式やベクトルの内積・外積などを公式丸暗記で済ませず、「どうしてこの式で表せるのか」を把握しているとアレンジ問題にも対応しやすいです。


◆大問VI (積分・図形と方程式/標準)

●出題概要

  • 放物線と直線で囲まれる図形の面積や、交点間の距離を求める定番の形式

  • (1) では「積分計算の過程を省略せずに書くこと」という指示があり、公式適用だけでなく積分手順の理解を試される

●ポイント

  • 有名な面積公式(たとえば「1/6 公式」で一気に求まるケース)を知っていても、指示に従って実際に積分を行うプロセスが求められる点が特徴的です。

  • 交点同士の距離を求める際は、複数のパラメータ a, bが絡む場合でも、まずは具体的なグラフや座標関係を把握するとスムーズに式が立てられます。

●攻略法

  • 公式を使って答えを一発で出すのではなく、「積分とは何か」を理解しているかが試験官に見られていると思ってください。計算過程を書き下す練習を日頃からしておくと、本番で焦らず対応できます。

  • 2つの曲線が囲む領域については、「どちらが上側・下側か」を誤らないようチェックを習慣化しましょう。


今年のポイント

ここでは、今年の試験全体を俯瞰して見たときに特に注意すべきポイントを整理します。来年以降の受験生にも役立つ内容なので、ぜひ参考にしてくださいね。

  • ⏰時間配分の重要性
    大問6題を80分で解き切るのは簡単ではありません。

    • 🟡計算量が多めの問題が複数あるため、「どこで時間をかけるか」「どこで捨てるか」のメリハリをしっかりつける必要があります。

    • 🟡試験本番では、まず問題全体をざっと確認して、「どの大問から解くか」を判断するスキルが求められます。

  • 📚分野横断的な基礎固め

    • 🟡三角関数、数列、確率、微分積分、空間ベクトルと、出題分野の幅は広いですが「一問一問が基本原理に忠実」な印象です。

    • 🟡それぞれの分野で「よく使う公式」「最小限の考え方(場合分け、座標の設定、積分範囲の理解など)」を確実に自分の武器にしておきましょう。

  • 📝解答過程の丁寧さ

    • 🟡積分問題に代表されるように、「答え」だけでなく導出プロセスもきちんと書かせる問題が散見されました。

    • 🟡記述式では中間過程に部分点が与えられることも多いので、途中式を省かずに、読みやすく整然と書く練習をしておくのがおすすめです。

  • 👀空間図形の継続的出題

    • 🟡今年も空間ベクトルや球の接線など、3次元を扱う問題が出題されました。

    • 🟡慣れない人はパニックになりがちですが、「2次元での類題をイメージしてから3次元に拡張する」手法が有効です。

    • 🟡計算量は増えがちなので、手際よくベクトル操作をこなせるように演習しておきましょう。


まとめ

慶應経済の数学は、大問数の多さと限られた時間の中で、計算力と問題処理の柔軟性を試す内容が特徴です。難問が混ざっていても全部を完璧に解く必要はなく、むしろ確実に得点できるところで取りこぼしをしないことこそ合格への近道と言えます。

🌟合格に必要な正答率の目安

  • 厳密には年度や全体の受験者層によりますが、6割〜7割しっかり押さえれば合格圏に届く可能性が高いでしょう。

  • 高得点を狙う人も、まずは易〜標準レベルの問題で“絶対に落とさない”ことが大切です。

🌟今後の学習アドバイス

  1. 過去問演習の徹底

    • 🟢年度ごとの傾向をつかみ、出題のクセ(同じようなテーマや形式が繰り返されやすい)を体感すること。

    • 🟢時間を決めて解く実戦練習を積み、解く順番捨てる問題の判断に慣れておきましょう。

  2. 計算トレーニングの強化

    • 🟢計算ミスを減らすには、普段から途中式をはぶかない丁寧な練習が欠かせません。

    • 🟢部分分数分解や座標変換など、頻出の計算手順は手が自動的に動くレベルを目指しておくと本番で余裕が出ます。

  3. 図形の視覚化と定積分の基本

    • 🟢空間ベクトルや放物線の面積問題は、図を書く習慣が成否を分けます。慣れないうちは稚拙でもいいので、必ず図示して考えると良いです。

    • 🟢定積分を使う問題は、積分区間の取り違いや、上側下側を間違えると一瞬で計算が破綻します。問題文やグラフをしっかり確認してから式を立てましょう。

  4. 試験本番の心構え

    • 🟢いきなり難易度の高い問題に突っ込まず、ざっと見渡して解けそうなところから着手する勇気が必要です。

    • 🟢部分点の存在を意識し、途中までの計算でも書けることは書く。最後まで諦めずに得点を積み重ねてください。


以上が今年度の慶應義塾大学経済学部・数学の総評です。ちょっとした計算力や論理展開の抜け漏れが大きな差につながりやすい試験ですが、基本をしっかり固めて、落ち着いて問題に向き合えば十分に活路は開けます。みなさんの健闘を応援しています!

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