石巻工房から世界へ
2020年7月27日(月)に武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースの「クリエイティブリーダーシップ特論」という講義で、芦沢啓治設計事務所代表の芦沢啓治(あしざわけいすけ)さんにお話を伺った。
石巻工房の設立
2011年東日本大震災を契機に、芹沢さんは石巻工房を設立した。復興作業の進捗が停滞する中で、「時代屋」という地元の居酒屋の店主が、自力(DIY)で店舗を再開させた様子をみて、地元の方々のDIY的な復興活動を後押しすべく、地域住民との共同の工房として石巻工房を設立した。
工房からまちへ
野外映画館の開催を目指して地元住民と一緒にベンチをつくったことをきっかけに復興バーを開店し、工房からまちへと繋がりを広げていった。その後も仮設住宅にて縁台をつくるワークショップを開催するなどして、地域住民と連携を深めていった。その後、活動自体の持続的な発展を目指してボランティアからビジネスへと転換していった。
まちから世界へ
2014年に石巻工房の活動を紹介した展覧会を開催したことを機に、ロンドンから声がかかった。その際に、簡易的な構造をしているにも関わらず、わざわざ自分たちが作ったものを売って輸出するのは、どうなんだろうかという重いから、現地で手に入る材料で、現地で作り、現地で販売するという形態に移行した。そして、ベルリンなどの世界各地に広がった。
工房の発展を支えた経営の力
震災のボランティアから始まった取り組みが、次第にまちから世界へと広がっていく様子にデザインの持つ力強さを感じた。そして、要所でビジネス化したり、ロイヤリティ契約を主体としたビジネスモデルへの転換を図るといった芦沢さんの経営手腕も印象的であった。やはり、デザインと経営の力を適切にマネジメントすることは、強力な推進力を生み出すと実感した講義であった。