【時事抄】 今のうちにと、欧州中央銀行(ECB)が追加利下げ
ゼロ金利政策を続けた欧州中央銀行(ECB)は、22年7月からわずか1年で政策金利を4.5%まで引き上げました。22年後半には前年同月比10%近く上昇した消費者物価を抑えるためでしたが、そんな短期で急激な金利の引き締めが、経済環境の悪化を招かないわけがありません。
原油価格が沈静化したおかげで、ようやく物価の伸び率も落ち着きつつある。ここらで金利を引き下げ、経済環境の好転させたいとの思惑でしょう。
ECBの利下げを報じた日本経済新聞の短い記事の要約です。原稿用紙1枚足らずの、短文練習のような文章ができあがりました。
<要約>
欧州中央銀行(ECB)が12日の理事会で政策金利を0.25%引き下げを決めた。市場が注目していた中銀預金金利は3.75%から3.5%に引き下げる。利下げは6月に開始してから2会合ぶりとなる。
声明文で「最近の物価データはおおむね予想通りに推移している」との認識を示し、エネルギー価格の下落に伴い物価指数の伸びは鈍化し、残る焦点は人件費に敏感なサービス価格の高止まりに絞られてきた。
その賃上げ圧力も2025年にかけて和らぐ見通しで、上昇する労働コストは企業の収益増で吸収し、価格転嫁を通じたインフレ圧力も次第に弱まると見られている。一方、ドイツなど主要国で景気下振れの懸念が強まっており、追加利下げを通じた金融緩和が適切と判断した。
(原文569文字→319文字)
こうして欧州中央銀行(ECB)が金利引き下げできるのも、原油価格が低迷しているからです。中国の不況も需要面として大きいですが、中東情勢が落ち着きつつあることで、原油供給懸念が和らいだことも要因でしょう。
しかし、もし中東情勢が再び緊迫したら?いま中東は水面化で衝突回避に向けた交渉が続いている模様ですが、イスラエルと中東各国の思惑が破綻すれば、どうなるか。原油価格は再び高騰、欧米のインフレが再燃、経済浮揚に向けた政策金利の引き下げが難しくなる。事情は米国FRBも同じです。
イスラエルを巡る中東情勢への対処が、新たな米大統領の最初の外交課題になるでしょう。本当ならば、20世紀初頭の西洋至上主義のエゴで交わされた「密約」の当事国、イギリスとフランスに責任を取らせたいところですがね。今の中東を形づくった遠因ですから。罪深き欧州。事情の一端は、英国人デヴィッド・リーン監督の映画「アラビアのロレンス」をご覧下さい。