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旅人宿を開業して2年。

2022年12月8日開業

私の宿「空き家を活用した大野の民泊宿 ねこばやし」は今週末で、開業して2周年を迎えます!

宿に掲示している届出証

開業といっても、民泊制度ポータルサイトから届出を行い、それが受理されたという日がこの日だったわけで、事前にいつ受理されるのかを知らされるわけでもないので、当日に華々しいイベントを行ったりはしなかったのですが。予約を受けつけたのはこの日からだったので、初めてお客さんが来たのはその年の年末でした。

開業から半年で来たお客さんは44人

2022年の年末に新型コロナの最後の波が来ていたこともあり、開業半年で来たお客さんは44人でした。1月平均にすると8人足らずです。
なるべく早く立ち上げて、集客やオペレーションなどは少しずつ形にしていこうと考えていたのでお客さん少ないのは覚悟していましたが、想像以上の厳しさでした。
Booking.comなどの宿泊予約サイトに登録すればもっとラクに集客できたのかもしれません。しかし大多数はインバウンド客でしょうが、外国人観光客受けする要素は無いし、大野市街地から5㎞離れているので歩いて来れると勘違いして予約するとトラブルになると思い、登録は当面保留することにしました。

4月の越前大野城

荒島岳登山客が増え出した矢先に能登地震が

ホームページを整備したり、毎日のように宿の様子をSNS投稿したり、移住や宿泊関係の集まりには極力顔を出すようにしました。そうすると少しずつネット検索にヒットするようになり、特に荒島岳登山のお客さんが来るようになり、少しずつ集客が伸び始めます。

しかし今年の1月1日、能登地震が来ました。宿は少し揺れた程度でしたが、自粛ムードでまたもや宿泊は低迷。
しかし3月4月と「北陸応援キャンペーン」で宿泊料が半額になったことで勢いを取り戻し、その後前年の倍以上のお客さんが来る月が続き、2周年を迎えました。2024年ののべ宿泊者数は500人には届かないけれども、それに近い数字が出ると思います。

晴れた日には庭でBBQ

多くの誤算

この2年間を振り返ると、色んな意味で誤算も多かった・・・というより、予想通りになった事はほぼ無かったと思います。

その1 客層

開業時に作ったプレゼン資料

宿を立ち上げる時には、福井県内からの来客をそれなりに見込んでいました。福井というか地方は車社会で都会ほど公共交通機関の利便性が高くなく、飲酒したあとの足が課題です。飲み代よりも代行運転代のほうが高いというのは珍しくありません。しかし、色々イベントを企画したにも関わらず福井県内からのお客さんは自分の知り合いが少し来たくらいでした。今は大部分が首都圏・中京・関西からのお客さんです。

現時点においては、荒島岳登山のお客さんが6~7割を締めます。開業当初、登山客を全く想定していなかったわけではないのですが、下山後の打ち上げの場としての利用だろうと思っていました。実際には登山の前泊のお客さんが大半です。
荒島岳登山口の周辺に宿泊施設が無いことと、JR越美北線の始発に乗っても登山口近くの勝原駅に着くのは10:40なので、公共交通機関で来る人は登山口近くの勝原園地でキャンプするか、越前大野駅周辺の宿に泊まって翌朝タクシーで登山口まで来るか、当宿に泊まるしか手段が無いのです。
今の場所にしたのは周辺環境と建屋と区長さんや家主さんの人柄で選んだのですが、結果的にはラッキーでした。

その2 食事提供を開始した

いま、日本全国のゲストハウスは食事提供をしていないところが多いです。外で食べるか持ち込みです。開業当初は極力オペレーションをシンプルにしたかったのと、飲みものも食べものも完全持ち込み自由にしたり自由に自炊出来たりするほうが喜ばれるのではないかと思っていました。また、民泊で食事提供を行うには規制面でのハードルが高いのではないかと思いました。
しかし当宿の周辺には飲食施設が無く、登山のお客さんが多いので自炊せずに早く寝たいという声が多かったのです。そして10月に信州大町のとほ宿「ポッポのお宿」宿主のポッポさんから「この宿の環境なら食事提供が無いのはキツイと思う」と言われ、食事提供を決断しました。

右が若かりし頃のポッポさん。中央は野辺山「こっつあんち」宿主。

ということで昨年末に保健所に食事提供の可否を打診しました。相当難航するだろうと思っていましたが、水質はクリア、食品衛生管理者の資格が必要でしたが開業前に取得していましたし、設備面も問題なく、2024年初めに飲食提供が可能になりました。
ただし、昼のランチ営業など飲食店としての営業は出来ず、あくまでも宿泊客のみへの提供となります。
今では、宿泊客の8割程度が夕食付での予約です。早朝出発する登山客が多いので朝食提供は少ないですが・・・
ただ、売上自体は上がったのですが材仕入れの費用が結構かかっていて収益にはほぼ貢献していません。それでも、食事のときにお客さんと楽しい時間を過ごせるので喜びはプライスレスです。

その3 「とほ宿」になれた

以前に投稿した「とほ宿への長い道」で書いてきたように、自分の宿は過去の「とほ宿」への宿泊がベースになっています。ただ、年間営業日数が180日以内で、定員が10人という小さい宿では入る資格は無いだろうと思っていたのと、年会費を払うだけの余裕は無いと思い、「とほ宿」になるのは民泊から旅館業法の宿になった時の将来の夢と考えていました。
しかし、「旅の轍」宿主ののみぞう氏から「民泊でもとほ宿になれますよ」と言われ(実際にとほ宿で民泊のところもある)たことと、「お試し会員」になった時に「とほ宿」ホームページ経由でのアクセスが想定以上に多かったことと、お試し会員になった旨の告知がされた1週間後に「とほ」ファンのお客さんが来たことなどが重なり正会員になりました。

40年の歴史のある「とほ本」に名前を刻んだ

率直に言いますと、「とほ宿」になったことによる集客効果はまだそれほど出てはいません。しかし、宿に来てくれた「とほ宿」ファンの人たちはSNSでうちの宿の事を宣伝してくれてますし、既に何人かリピーターになってくれています。
自分のとこより小さくて営業期間が短い宿でもちゃんと運営できているとこもあり、経営がラクでなくても旅人宿としての矜持を失わずに楽しくやってます。収益第一でなくても30年40年続いている宿があるという事実、そして、宿主同士でお互い刺激し合い励まし合えていることは自分の精神的支柱になっています。

その4 想像以上に楽しい

宿の楽しさそのものは、20代の頃から散々旅人宿に通っていたのでわかっていたのですが、やっぱり楽しいです。毎週末お客さんがやってきて、食事の時には宴会になります。これからお客さんが来るのだと思えば掃除や料理も何ら苦になりません。
ただ、それ以外に田舎暮らしというものは楽しいと感じています。毎朝起きたら目の前に荒島岳があり、日々季節が移ろい色んな花が咲き、一日として同じ日はありません。宿をやる前は毎月一度は自然の中での癒しを求めてどこかの山に登っていましたが、今は毎日が大自然の中での生活なのであまりそういう気が起きないというのが本音です。
田舎暮らしは不便でしがらみがあるという考え方もおられると思います。地域によるのでしょうが、宿のある大野市は人口3万人にもかかわらずスーパーとドラッグストア合わせると10件以上あり買い物の選択肢が豊富です。また、値段も安いです。車があればほぼ不便はありません。ちょっとしたものが欲しい時には通販で買います。
地域の人たちとの関係も良好です。先日宿で懇親会をしました。全体的に大野の人はおっとりした人が多いです。
「田舎は閉鎖的で封建的」と考えられる風潮がありますが、多くの人は農作業をやったりDIYができたりするので、筋道立てて物事を考える能力・習慣がある人が多いという印象です。米や野菜を作るのは大変なのです。土づくりをして雑草や害獣対策をして生育を見守った末に収穫があります。環境を整えてじっくり見守る。教育や投資と通づるところがあると思っています。

宿で地域の懇親会

また、宿は自分の中では「副業」という位置付けで、平日は福井市内で本業の保険/ファイナンシャル・プランナー(FP)、週末は大野で宿業をしています。ひとつのことをずっとやっていると飽きたり煮詰まったりして気分転換が必要になるものですが、定常的に仕事の環境や視野が変わっているので気分転換の必要性をあまり感じません。
同様に、地方都市である福井市と田舎である大野で二拠点生活することで
リフレッシュしています。「山を想えば人恋し 人を想えば山恋し」という言葉がありますが、恋しくなったころには移動してます(笑)



他の宿主も、平日やオフシーズンにアルバイトをする人が多いです。とほ宿「函館クロスロード」の宿主などは、冬の間は南の島に出稼ぎに行っています。

今日(12/5)現在、北大東島に向かう途中で旅行を楽しんでおられるようで、宿主さんのXで実況しておられます。この旅行記を楽しみにしているファンも多いようで、宿の集客につながっていると思います。
「本業の売上が足りないから他の仕事で穴埋め」というと、ひと昔前の思考ならネガティブなのでしょうが、複数の仕事をこなすことで視野を広げて自分の人生を豊かにしてくれるし、本業が不振になったとしても収入減が複数あればダメージは少ないし、本業との相乗効果を生む場合もあります。私も生命保険代理店業をやっていますが、宿のことを話題にすると盛り上がって契約をいただいたこともあります。

宿を始めたらもう自分は旅行には行けないと思っていたのですが、今年(2024年)はFP業の出張と「とほ宿」の会合で5回旅行に出ました。他の旅人宿の宿主たちも結構旅行に出ています。

とほ宿本州ブロック会議で、尾道「かがやきの花」へ


これからの「ねこばやし」

さて、来週から宿も3年目を迎えるわけですが、宿の方向性も固まってきたことだし、これからは地盤固めに専念していこうと思います。初心を忘れず、一期一会の精神でお客さんを迎えていきたいと思います。
「ひとり旅大歓迎」「おもてなしをしない」等の方針も変えません。収益はあくまでも手段と考え、より楽しい宿にすることを第一に考えます。

あと地域移住支援ファイナンシャル・プランナーとして、この宿が大野への移住の足がかりになればいいなと思っています。そのために何をすべきか日々考えていますが、移住関係者からの協力依頼があったら前向きに対応します。いつも地元の人たちに助けられているのですが、人口減少の続く大野に元気な移住者を増やすのが自分の恩返しだと考えています。

とはいうものの収入が無いと自分も生活が成りたちません。本業の保険業はこれから少子高齢化時代を迎え環境は厳しくなると考えています。自分が宿でやってきたことや楽しんでいることを何らかの形でフィードバックして、それをマネタイズして収入の足しにしたいです。同じ志を持った人もいますので、そうした人の輪を広げていきたいと思います。

そして、全国の旅人宿に泊まって宿主さんたちとサシ飲みして、「宿主道」を究めていきたいです。自分と志が同じ人とつながるのは本当に嬉しいことです。
あと、3周年目は開業記念イベントを開催できるくらいに存在感がある宿になってるといいですね。

これからも、よろしくお願いします。

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