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豪雪地帯での民泊ゲストハウス運営
福井県内有数の豪雪地帯
昨年の暮れから「10年の1度の豪雪が~」という報道が頻繁に流れ、予約は少ないしキャンセルも相次いでいる。実際、1月中は例年雪が多いし年末年始でお金を使ったせいかお客さんも成人の日以降は来たことが無いので休館にした。
ところが皮肉なもので、1月後半は雪が殆ど降らず、立春となった2/4から狂ったように雪が降った。宿の運営というかビジネスというのは予定調和というものを期待してはいけないとしみじみ思った。
基本的に平日は福井市内の実家で本業に勤しみ、週末になると宿主になるという二拠点生活を送っている。2/8(土)の週末は予約が入っていなかったので2/9(日)に宿に入ったら大変なことになっていた。
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前の道路を除雪してもらっているだけでも有難い話だ。
到着するなりすぐに車庫の前を雪かきする。
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高校の後輩が学術調査か何かで宿の庭で定期的に積雪量の測定をしているのだが、この日の午後測定に来ていたので、雪下ろしに立ち会ってもらった。一人でやって転落した場合、最悪死亡事故につながりかねないので(頭から落ちて窒息する可能性がある)、絶対に誰かに見てもらわないといけない。
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2時間弱だろうか、とにかく雪を落としまくった。
2/11(祝・火)に大学のワンゲル部の後輩たちがやってくることになっていたので、車を停める最低限のスペースを確保しなければならない。1台は車庫、2台はスロープの所に停めてもらうことにした。
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何とか間に合った。
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いったん福井に戻り、2/15に駐車場の除雪を完了した。2/19現在また降り積もっているが・・・
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除雪機を導入するかどうかの判断
雪かきは・・・やわらかい雪はダンプスコップと呼ばれる大型のスコップで、固い雪は鉄製の小さなスコップで、その中間はアルミ製の軽くてやや大きめのスコップ、そして道路に残った雪はプッシャーと呼ばれるものでかき出す。
通常は側溝か庭の空いているスペースに雪を運ぶ。晴れていればアスファルトの上でどんどん溶けるのでほっといても片がつく。しかし2/4から降り続けたドカ雪だと側溝も塞がれていて雪の持っていき場が無い。雪かきは雪をどこに持っていくかが一番の問題だ。
除雪機があれば、と今回何度も思ったが、国産メーカーのものだと30万円以上はする。また除雪機を使っている人を見ると、結構トラブルで動かなかったりする場合が多いようだ。除雪機を買ったら暖冬続きになるかもしれないし。
そもそもそこまでして宿を開ける必然性があるのか?とも思う。
北海道だと、冬の期間はずっと休業している旅人宿は珍しくない。礼文島の「星観荘」などは営業期間が4月下旬から10月上旬までで、あとは休館している。当宿と違って超人気宿だが・・・
当宿についても冬場は閑散期で、昨年の場合だと積雪期である1月2月に来たお客さんは合計しても33人で、殆どが荒島岳登山だった。そんなドカ雪が積もった時にはそもそも雪山に登ってほしくない。つい先日も遭難事故があったばかりだし。除雪機を導入しても、それに見合った集客が得られるかどうかは疑問だ。
ただ、自分はビジネスをする上で「0か100か」という思考は極力しないようにしている。あまり過大な負荷がかからない範囲で営業するというのが最適解なのではないかと今のところは思っている。宿を開けるにせよ、車庫とスロープの入口だけなら除雪はそれほど大変ではない。車2台分までの予約に止めておけばいいだけの話だ。
そうなると宿泊できる人数は限られるし、収入も少なくなる。しかし収入よりも支出が上回ってしまうと元も子もない。ワンオペで宿を持続していくにはどうすればいいのかを常に考えている。
積雪量は福井県内でもまちまち
なお、「東北の日本海側・北陸地方では記録的な豪雪に」と報道されているが、福井県内でも場所によって降雪量は全然違う。
福井県内各地の積雪量はこちらのサイトで随時確認できる。
因みにこの記事を書いている2/19(水)20時現在だと
・大野市九頭竜 218㎝
・大野市内 104㎝
・永平寺町山王 0㎝
・福井市内 22㎝
・坂井市三国 0㎝
・鯖江市内 28cm
・南越前町今庄 76㎝
・敦賀市内 0㎝
ということで、宿のある大野というのは福井県内でも特に雪が多い地域だ。大野の人たちが自分の土地を語る時には「大野ええとこやざ~ 雪さえ無かったらな」と言う人が凄く多い。
ただ、昔から雪が多いので大野の除雪体制は福井市内よりもずっとしっかりしているし、大雪が降ったすぐ後には車の通行量がかなり減る。みんな「不要不急の外出は控える」ようにしているのだろう。普段から物心両面での備えが出来ていると思う。
雪が降った直後は大変ではあるが、北海道のように最高気温が0℃に満たない「真冬日」というのは年にそう何回もなく、寒さがそれほど酷いわけでもない。そして太陽が出たら溶けるのも早い。
悪いことばかりではない
雪が降ること自体はネガティブ要因なのかもしれないが、県外や海外から来た人たちが雪を見ると感激する。昨年の3月などは「荒島岳ってまだ雪ありますか?」という問い合わせが結構あり、ほぼ無いと言ったらがっかりされたものだ。
また、福井は蕎麦の大生産地であるが大野産のものが一番高級品と言われているようだし、米もそうだ。大野の「上庄里芋」はブランド品だ。そもそも水が「名水百選」に選ばれている。冬の豪雪はこれらの要因の一つなのではないかと思う。何ごとも正の側面と負の側面がある。
今の時期は、雪が降らなくて陽光の降り注ぐ太平洋側は羨ましいと正直思う。しかし夏は更に熱いだろうし、雪が降らない代わりに台風や地震に苛まれる所もあるだろう。(宿のある大野は内陸部なので、夜になると真夏でもまあまあ涼しい)。少なくとも日本においては、自然災害と無縁な場所というのはほぼ無いのだ。
豪雪地帯で宿をやるのはラクではない。しかし、雪が解け春が訪れたときの感激はそれを補って余りあるものがある。日本全国あちこちに遊びに行ったが、北海道のように非日常的な美しさがある土地というのは自然が厳しいことの裏返しでもある。
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大雪という自然現象に打ち勝とうと思うのではなく、うまく付き合いながら楽しんで宿をやっていこうと思う。