絵が苦手だと、ずっと思ってきたあなたへ 5
上手な絵って、どんな絵?
皆さんは、どんな絵を上手な絵だと思っていますか?
きっと多くの方は、写真のように本物そっくりに描けている絵を、上手と感じるのではないでしょうか。
そしてそのように描けないから、自分には才能がないと思っているのではありませんか?
中学生もそうです。1年生最初の授業で必ず聞くことがあります。それは小学校の図工で「好きだったことや得意だったこと」と、逆に「苦手だったこと」です。
すると3分の2ほどの生徒は「好きだったことや得意だったことは工作」で「苦手だったことは絵を描くこと」と答えます。
具体的に聞いてみると、次のようなことが分かりました。
① 本物のように描けない。友達の絵と比べて下手だと感じる。
② 思うように色が塗れない。色を重ねたり直したりしたら失敗した。
色については後ほど触れますので、まずは「本物のように描けない」ということについて話したいと思います。
幼い子どもに紙とクレヨンを渡すと、多くの子が楽しそうに線を引いたり色を塗ったりして、夢中になって遊びますよね。
大人から見ると「何が描かれているの?」って感じでも、そこには子どもなりの世界が表現されています。
子どもにとっては、絵を描くことも遊ぶことも一緒なんです。
楽しいからやる。
これこそが表現の原点ではないでしょうか。
大人になっても「感じた世界を、夢中で表現できたら何と素敵なことだろう」といつも思うのは私だけでしょうか?
でも、こんなに楽しく、夢中になって絵を描いていた子どもたちも、成長とともに変わっていくのです。
小学校の高学年くらいになると、友達の絵と比べたり、本物のように描けない自分に気づくようになります。そして絵を描くことへの苦手意識をもつ子どもが増えてくるのです。
これが「自分には絵を描く才能がないから、絵が描けない」という思い込みの始まりなんです。