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Three Sacred Treasures ② カズ子さん

大学の学食に、カズ子さんという姉御肌の元気なおばちゃんがいた。

普段は「カズ子さん」と呼んでいたが、時折「カズ子ちゃん」とちゃん付けで呼ぶと、ノーマルカレーのオーダーにもかかわらず、ハムカツを1枚(時には2枚)おまけしてくれる、そんなキュートなおばちゃんだった。

書きながら思ったのだが、僕がおばちゃんと呼んでいたあの頃、果たして彼女は何歳だったのか?

恐らく今の僕よりずっと若かったのだろうと思うが、記憶の中でおばちゃんは永遠におばちゃんだから仕方ない。

カズ子さんは、なぜか僕ら仲間の行動を俯瞰で把握してくれていて、学校内での「人探し」にはとても重宝した。

「中内君は上野のアブアブのクレープ屋でバイトがあるからもう帰った。」とか、
「島村さんはいま生協に行ってる」とか、
「篠原くん、野球の試合で怪我して救急搬送されたってよ。」とか。

カズ子さんの提供してくれる“位置情報”には、下手なGPSをも凌駕する
性能と「愛」が溢れてた。

大学3年の夏、新学期が始まり学校に行くと、そこにカズ子さんの姿は無かった。

消息を知る術もないまま時は過ぎ、台風による大雨の影響で(毎年恒例の)伝右川が氾濫した10月のある日のこと。台風による休講の空き時間をつぶすため近所のココスに集合した僕らの前に、ほんとに突然、天照大御神のような復活の微笑みを浮かべながら、カズ子さんは現れた。

当時「北ウイング」が大ヒットしていた中森明菜の髪型を真似してミスった感満載のパーマヘアに、油絵手前の濃い目のメイクを施し、バスト(確かに大きかった!と記憶)が強調されたタイトなブラウスとピンクのフリルのミニスカユニフォームに身を包んだカズ子さん。

感動の再会は、瞬時に爆笑の再会に変わり、以降ココスが僕らの学食となった。

30数年が過ぎた今思うことがある。
もしカズ子さんのパート先がココスじゃなくてアンナミラーズだったら・・・?

記憶を辿る「妄想」は、いくつになっても色褪せない。

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