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鑑賞ゲリラ Vol.51-3『瀬戸を愛でる』レポート(1) 2024/11/2開催
開催情報
【開催日】2024 年 11 月 2日(土)
【会場】名鉄瀬戸線 尾張瀬戸駅周辺のまちなか
展示場所:瀬戸信用金庫アートギャラリー
【展覧会】国際芸術祭「あいち」地域展開事業「底に触れる 現代美術 in 瀬戸」
2024年10月12日(土)-11月4日(月・振替休日)
【出品作家】
井村一登 植村宏木 木曽浩太 後藤あこ 田口薫 津野青嵐
波多腰彩花 藤田クレア ユダ・クスマ・プテラ 光岡幸一
内容
作品
木曽浩太 (KISO Kota)
《毎日遊んでられる状態》《愛知者たち》《多様性の時代》《人柱》
《マトリックスマデアトスコシ》《あいつも来てればなあって》
いずれも 2024年 瀬戸の土、墨、紙
鑑賞内容
まず《人柱》《マトリックスマデアトスコシ》《あいつも来てればなあって》の3作品をみてもらい、《マトリックスマデアトスコシ》から対話型鑑賞を始める。
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ファシリテーター(以下F):何が起きているか?
▶︎手から光線を出して相手を倒す戦いのようだが、憎しみ、悲しみ、怒りではなく無表情
▶口や眉毛がないので表情が読み取りにくい
▶︎感情がないように見えるところがチグハグ
▶戦いのようでそうではない?
F:何か矛盾を感じる、「無」という感じ?
▶︎「無」の感じがする
▶ロボットみたい
▶︎自分の意志ではなく戦わされてる
▶︎人ではない
▶人であれば必ず表情がつくと思う
F:無表情だから人ではない、ロボットか何かが意志なく戦っている?
▶︎光線みたいなのが、百発百中で一斉に放たれ対象に当たっている
▶︎レーザー光線は未来的、背景にある炎は昔話や浮世絵、寺の屏風に描かれている炎だなと思う
▶︎絵の中に時代的なズレがあるように思う
▶レトロで新しいような不思議な感じがする
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F:無表情で戦う、近未来とレトロ。二つのズレを指摘されたが、どうしてこのような状態になった?
▶︎「せーのー」でレーザー光線が放たれて「バタン」と倒れる、この繰り返しがみえる
▶︎「ラピュタ」のロボット兵を思い出した。使命を負って何かを守っているのかもしれない
▶︎「ナウシカ」を思い出し、「薙ぎ払え!」の手にみえる
*映画『風の谷のナウシカ』において、王蟲の群れを一掃するためにクシャナが巨神兵にビームを撃たせようとした時のセリフ
▶︎どれが敵でどれが味方なのか区別がつかない
▶︎じゃんけんみたい
ここで《人柱》《あいつも来てればなあって》をみる
「あれがこれで・・・」と同じような登場人物を指す鑑賞者。何か物語がありそうと気づいたところで、
▶︎可愛らしいコが生まれ変わる、輪っかを通ることにより転生
▶成長する
▶︎頭に3本の毛があるコがこちらの絵にも先ほどの絵にもいる
先にみた《マトリックスマデアトスコシ》には描かれてなかったモチーフに注目する
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F:(情報を入れる)タイトルが《人柱》 人柱とはネットスラングで、新しいものが出てきた時に真っ先に使う、割とリスキーなことを最初にする人たちのことをいう。この輪っかが人柱に当たる?
F:輪っかに入る時の表情や体勢、輪っかをくぐるとどうなったか?
▶︎無表情だが誰かに押されるわけでもなく自ら行っている
▶︎手の動きから、ワクワクしてる
▶︎ゲームみたい。輪っかをくぐり抜けるとモデルチェンジしてアバターみたいになる
▶ゲームの中で戦ってる。また生き返るかも
F:となると、あちらの絵はどういうこと?
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▶︎映画のタイトルは忘れたが、SFで未来に向けて宇宙船の中で何百年と保存されてる人みたい
▶︎寝ている状態でゲームをしている
▶皆で同じオンラインゲームをしている
F:アバター?これはかなり未来を描いている?
▶︎けれど、昔のはにわのような、粘土で作られた原始的なものがいる
▶︎あちらでもこちらでも何か食べている
F:こちらの絵にもいる、これはいったい何なのか?表情は?どんな感情でいるのか?
▶︎笑っている、踊っている、太鼓を叩いているので、喜び、祝いなどポジティブな感じ
▶楽しそう
▶︎輪っかに入るのを見ているのはニヤッとしているよう
F:どうして?
▶︎輪っかに入るのを企んでる側?「騙されよって!」という感じ
▶︎《人柱》というタイトルを聞いてリスクのある輪っかに入っていく人を止めるでもなくニコニコしながら見ている
F:リスクを知っていた?
▶︎知っていた!
▶︎後ろに怯えながら、隠れて見ている方は怖いもの見たさな感じがする。
F:う〜む、おもしろい!では、向こう側にもセクションがあるので、そちらをまた、じっくり見てください。登場しているのは?
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▶︎粘土っぽいコたちはこちらにもいる、やはり古代感がある
▶笑顔
▶︎輪っかに入って進化した人はいない
▶入る前のものはいる
▶︎時代が違う気がする
F:他に気づいたことは?
▶︎3本の毛のコもいる
▶最初の絵では粘土っぽいコと絡んで遊んでいるのに、その後の絵ではもう絡んでいない決別している
▶︎小さい時は遊んでいたが、大きくなって「あいつ良い大学に行っちゃって」という感じ
▶︎サラリーマンぽくもある
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F:水遊びをしている、その後は?
▶︎寺小屋みたい
F:寺子屋で何を学んだ?
▶︎なんかムヅカシイこと
▶︎アリストテレスみたいな先生がいる
▶︎あいかわらず、粘土っぽいコたちは楽しく遊んでいる
F:(情報入れる)実はこの作品は、最初が《毎日遊んでられる状態》から始まるストーリーになっていて、連続ものをラスト2話から見た感じで鑑賞を進めている。
《愛知者たち》のタイトルを明かし、「知識を得たものたち」を確認する
F:粘土っぽいふたりとの違いは他にあるか?
▶︎ふたりはずっと外にいる
▶︎唯一表情があり、ふたりはいつも楽しそうに見える
▶他は無表情
▶︎小さい頃は分け隔てなく皆と仲良くする
▶空想の友だちがいたりするが、どんどん見えなくなる
▶︎トトロも子どもにだけ見え、だんだん見えなくなり社会に染まっていって全く見えないけれど存在しているような感じ
F:子ども時代の気持ちとかを表している?他の人たちにはもう見えないとすると、この作品の中でどこから、どうなったのか?
▶︎知識得た後、感覚でつかんでいたことを知識によって見える訳がないと考えたり、常識で見ようとしないのか、見えなくなるのか
F:知識が邪魔をしている?
▶︎モラルとか常識とかが邪魔をする
▶︎この人、寺子屋のアリストテレスが「そんなものはない」と言ったら「ない」となる感じ
F:子どもの頃には見えていたものはどんなものだった?
(それぞれ、自分の子どものころのことは思い出せず)
▶︎息子が想像上の友だちなのか「ぴっと君がいた」とよく言っていた。それは後々何かの銀行のキャラクターとわかったのだが、親は気づかないものが見えていたのだと思う。息子にとって近い存在で居て当たり前のように言っていた
▶︎甥がぬいぐるみをたくさんリュックに入れ遊びに来ていた頃を思い出した。役立つものではないのに大事なものだったのだと思う
粘土っぽいふたり、木曽浩太さんらしいポップなキャラクター「無知」を、大人には見えない何かの象徴と想起したところで、タイムアップ。
タイムアップ後に、キャプションのパネルを読んで作品の成り立ちを参加者と共有する。参加者は、作品を描くきっかけとなった瀬戸市立図書館の北川民治による壁画を見に行きたいとおっしゃっていた。時系列にストーリーを追うように並んでいる作品を、途中の作品から鑑賞して何が描かれているのか探っていく方法を試みた。キャプションを読み作品の成り立ちを共有した後、もう少し鑑賞を進める時間があったらどんな展開になっていただろう。
【ファシリテーター&レポート】城所豊美
【鑑賞時間 28分】