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鑑賞ゲリラ Vol.52『JUST NOW』レポート(1) 2024/10/27開催
開催情報
【開催日】2024 年 10 月 27 日(日)
【会場】TANERI STUDIO gallery & shop
【展覧会】”MEMBERʼS SHOW 2024”
会期:2024年10月12日(土)~11月4日(月)
【出品作家】
設楽陸 伊藤仁美 鈴木優作 近藤佳那子 日比野曜
内容
作品
「底に触れる 現代美術in瀬戸」と同時期にTANERI STUDIO GALLERYにて3回に分けて開催された”MEMBERʼS SHOW 2024”
その第2回の展示作品を鑑賞しました。
伊藤仁美(Masami Ito)
《Dominant》映像作品
鑑賞内容
まずは縦長の映像を5分ほど鑑賞し、印象に残っている場面をそれぞれ挙げてもらいました。
![](https://assets.st-note.com/img/1733582585-EO2JNdt79bMarDRuLWwXl1UC.jpg?width=1200)
▶︎ショッピングセンターのエスカレーターを登っていくシーン。
▶︎床に電車の窓みたいな?ちょっとボケた感じで何かが移動していくようなところ。
▶︎人が一人も出ていないから気持ちが悪い。人がいるはずのところ街中だったり。他人の存在がない。
▶︎川とか池とか水が多い。
▶︎移動している場面と止まっている場面があるので、旅をしているのか。
▶蝉の声も聞こえるので夏。
ファシリテーター(以下F):作家はどんな気持ちで撮っているのでしょうか。それぞれ印象に残った箇所は違うけど撮ってる人は同じ。同じなのは作家さんだけですよね。
▶︎視点が低めだと思う。子供の目線で見ているのかな。ショッピングモールとか見上げる感じになってるし。
F:他の方はどうでしょう。目線でもいいし感情でもいい、この映像から受けるものを。
▶︎静止しているように見えて風で植物が揺れていたり、全く動いてないところ自分は動いていて景色は止まっている。移動した時にふと視線を向けた先。その先が集められている気がする。
▶︎新幹線とか車とか普段は長く見れない景色も車窓からだと見入ってしまう。日差しが揺れてるところとか。そんなものが集められているのかな。
F:あえて見るのではなくて、目に入ってしまったものたちが集められているということですか?
▶︎自分も普段歩いていてふと気になる景色とかあるんですけど、狙って撮ったのではなく気になったから撮ったみたいな。動きのあるものが呼んだような気がする時があるのかもしれない。
F: 呼ばれて撮った?
▶︎3歳や4歳なら「うわぁ」といくような場面かな。大人ならそんなに動けないけど。あーといっちゃうような。そう見ると水はものすごくそんな感じ。
▶︎一人称の映像が多い。自分で見ている先を映像に収めている。スピード感からして電車から撮れる風景。車からもあった。たまたま見ているものを採集している。
▶︎画面の比率が縦。Vlog。気になったどうでもいいもの、どこかの景色、どうでもいいものが息子のスマホにもある(笑)
F: 作家はどこであるかとか、どういう時であるかということはそんなに重要視されていない。ただ目についたところ気になるところを採集して行ったということでしょうか。
▶︎法則があるとしたら水。水辺がゆらゆら揺れていたらこの作家はその都度とっていると思う。
F:そういえばゆらゆらしてますね。光も。ゆらゆらでいろんな採集ができるのかも。
▶︎観光地でもないし、本当に近所で採集できる画が多い。
F:日常的な景色?
▶︎私有地、家の中とか、学校とか、関係者以外は入れないところも撮られているから本当に身の回りなんだろうと思う。
(ここで情報提供、タイトル 《Dominant》を伝える)
![](https://assets.st-note.com/img/1733582625-EhJHysZn5PaidUNxqYjfLT7B.jpg?width=1200)
F:ドミナントには、支配的な。優勢な。などの意味があります。このタイトルを知ってどうですか?
▶︎私はさっきからずっと子供の目線で見てしまっているんです。だから、これは両親の田舎に夏休み連れていかれて遊ぶ場所がなくてとか、電車や車によく分からないけど乗せられて、行った先で気になったところ、この池に入りたいな飛び込みたいなシーンが詰まっているのかなとか。
▶︎池に入りたいけど、多分怒られるだろうなと思って入れない。
▶︎優勢な。支配的なという意味から、、見せられている。
F:自分の意思とは関係なくこの場にいて本人は興味もなく見ている。
でも撮っているのは自分ですよね?
▶︎撮らされてる。景色に呼ばれて撮ってしまう。
F:誘導されているという意味でしょうか?
▶︎目がいってしまうものという意味で支配的。
▶︎ドミナントされている側。
▶︎人が出てこないから自分独り占め。
F : 独り占めしたら嬉しい?満足?どういう感情なんでしょう。
▶︎気になったところがあっても、他人がいたら撮れないから人がいなくなるのを待ってとっているに違いない。
▶︎空間を支配している。
F:支配されつつ支配してるみたいなことでしょうか。
▶︎そうだと思う。
アーティストトーク
対話型鑑賞終了後、作家の伊藤さんにお聞きしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1733582540-zwZTqDsoKEMy2FWV4pAOfUic.jpg?width=1200)
●人物が登場しないことについて
人が写っていないのは、ぼうっとした時のことをテーマに制作しているから。
どんなに気が合う人であっても他人が側にいるとその人に合わせたりとかしてしまう。波長があるのでそれで人を撮っていない。写っていても全然知らない人や通りすがりの人で、写ってることにあとで気付くぐらい。それを撮っている時から誰かがいると引っ張られちゃうので。
●子供の目線がある気がするということについて
自分の幼少期、願望だったりみたいなもの。大人になったから入れない、変に思われる、でも入ってみたいなと思って撮っている時ももちろんある。いろんな時いろんな場所季節とか全部当てはまってくる。今おっしゃったと。それらをキュと集めた。自分でも確認する作業になっている。
●タイトルについて
英単語でいろんな意味のあるものを普段から気にしている。単純に「支配する側でもされる側でもある」というのは根底にはあって、独り占めしたいとかあるのかな。
●映像という形を撮っていることに関して
撮ってるとここ(カメラ)に入ってくるので、これは自分のものだという気持ちもある。映像にすることで自分の作品になる。作品=自分(作家)の視点だというところから見てもらって、こういう(鑑賞者の)話を聞いて、そういう捉え方をするんだなというのを繰り返して・・・それから変わったり変わらなかったりするんですけど。
●ドミナントについて
高知県で赤いドミナントというグループ展があって参加した。そこでも新鮮なやりとりがあって、このタイミング。これは(瀬戸でも)ドミナントだなと。コンビニなどがやってるドミナント戦略*に近いなとも思う。
*ドミナント戦略とは、ある地域における市場占有率を向上させて独占状況を目指す経営手法のこと。競争優位性を確保する戦略としてチェーンストアなどの集中出店に見られる。
映像作品を対話型鑑賞することはあまりない。参加者の皆さんからも どう展開していくのかできるのかと半ば実験的な試みに参加しているような趣があったそうだ。ただ伊藤さんの作品はストーリーがあるわけではないので順を追って見ていく必要がない。実際の風景、それもなんでもない景色が脈絡なく流れているので、完全に鑑賞者自身の見方・経験や記憶次第である。そのことが映像からの信号を積極的にキャッチしようとする姿勢になり、より作家に近づいていったと思う。興味深い鑑賞の流れで大変楽しめた。
【ファシリテーター・レポート】オオノユキコ