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鑑賞ゲリラ Vol.52『JUST NOW』レポート(2) 2024/10/27開催
開催情報
【開催日】2024 年 10 月 27 日(日)
【会場】TANERI STUDIO gallery & shop
【展覧会】”MEMBERʼS SHOW 2024”
会期:2024年10月12日(土)~11月4日(月)
【出品作家】
設楽陸 伊藤仁美 鈴木優作 近藤佳那子 日比野曜
内容
作品
「底に触れる 現代美術in瀬戸」と同時期にTANERI STUDIO GALLERYにて3回に分けて開催された”MEMBERʼS SHOW 2024”
その第2回の展示作品を鑑賞しました。
日比野 曜(HIBINO Yo)
《八ッ場あがつま湖》2024年
キャンバスにキャンドル、インクジェットプリント
鑑賞内容
ファシリテーター(以下 F):まずは作品をよくご覧ください。場所を変えて、近くから、遠くから見てみてください。
![](https://assets.st-note.com/img/1734698006-2iDUxzEhvIXSTG9a18oNOLR6.jpg?width=1200)
F:ご覧いただけましたか?まずはじめにこの作品をみて気になったところや作品の中で起こっていることを言っていただけますか?
▶蝋がポトポト落ちて形になって残っている。黒い煤なのか、黒い色と蝋が落ちてキャンバスにくっ付いているんだなというのが最初に感じたこと。
▶キャンバスの中央部分に紙が貼ってある二重構造になっている。その紙に黒色で何か描かれているが何が描かれているかはちょっと分からない。
▶なんで真ん中の部分はこんなに黒いんだろう。
F:そこから受ける印象とかはありますか?
▶特にないです。何の感情も湧いてこないがなぜ黒いのかなと思った。
▶私はちょっと怖いなと思った。周りの他の作品がカラフルなものが多い中で、この作品だけちょっと怖いと思った。
▶先ほど蝋が垂らしてあると言っていたが、そうか蝋なのかと思った。何かボコボコしているが黒いので土でも混じっているのかと思った。でも水でやってもこんな風にボコボコにならないし、と思った。確かに蝋なのかと思った。
▶真ん中の部分は絵なのか写真なのか何かヒントがないかなと思ってみていた。
▶木があるように見える。
F:先ほどの暗い印象というのはどこから感じましたか?
▶まず色みがないこと。でもよく見ると黒色だけじゃなくて赤色っぽい感じもある。
F:先ほど土が混じっているのかな、と仰っていましたが?
▶先ほど黒い煤かなと言っていたのは、作品タイトルの場所で拾ってきた土が入っているのかなと思った。
▶私も暗い作品だなと思ったが、なぜかなと考えたら、普通の白い蝋燭を垂らしたら煤は垂れなくて白い蝋しか垂れないはずなのに、黒いのが含まれているのがカビっぽく感じる。蝋を垂らすという行為は拷問を連想したり、呪術的な憎しみが含まれていたり、マイナスなイメージがある。
![](https://assets.st-note.com/img/1734698141-Z9Xf27rMhF1G8Vzqwam4gstU.jpg?width=1200)
F:蝋燭の印象についても仰っていただきましたが、皆さん、蝋燭に対してどんなイメージがありますか?
▶命の灯の意味合いとか時間を表していたり。
▶瞑想や癒しの時間にも蝋燭は使うが、そういうときはもう少し良い香りがしたりきれいな色だったりすると思う。
▶この作品の蝋は、どす黒い色合いや、蝋を垂らすという行為が癒しとかで使う場合と異なる。
▶先ほどの時間の経過を表しているということから、古さや昔の時代を表してるのかなという気もしてきた。
▶わざと汚してる感じがする。わざわざ黒い煤の混じった蝋を垂らしたり、それを真ん中の絵なのか写真なのかにも汚すようにしているのがネガティブな印象がする。
▶汚して見えなくすることで、何かを隠そうとしているのかも。
▶これが写真だとしたらあまり良い思い出ではなくて、それを隠そうとしているのか。
F:今のところ皆さん、ネガティブな印象ばかりですね。笑
F:作品の作り方の話も出たので少し情報を入れますと、こちらの作品はキャンバスの上に瀬戸でとれた赤土を敷いて、その上に写真を乗せて、その上から蝋を垂らしています。皆さんが仰っていただいたように、赤色とか黒色とかに見えるのは土が混ざっているからだそうです。
![](https://assets.st-note.com/img/1734698033-25tRNwpfemVx9yg0cl3ZozE6.jpg?width=1200)
▶真ん中の部分の方が、蝋が厚く垂らしてある気がする。立体感がある。隠したい感情が強いのか、逆に瀬戸の赤土の存在感を際立たせたいのかどちらなんだろう。
▶雨のあとのようにも思えてきた。赤土が敷かれたキャンバスが地面で、蝋が垂れた跡がそこに降った雨のようだ。
F:雨であることから受ける印象はありますか?
▶自然の営みを感じる。
▶真ん中の写真の部分が窓にも見える。そうすると、写真周りのキャンバス部分は壁になって、垂らしてある蝋がカビとか血しぶきとかになるかもしれない。
F:要するにここは室内で、写真の部分は窓の外の景色が見えているということですね?
▶そうです。
▶上から地面を見下ろしている視点と、室内から外の景色を見ている視点と見方が変わっておもしろいですね。
▶瀬戸の赤土を使っているということを聞いたら、この土地のものを使ってそれを積み上げている。この土地や伝統を大事にしているというイメージも感じた。最初に感じたネガティブな印象が和らいだ。
作家は瀬戸市出身ということもあり、本作品には瀬戸の赤土が使われていた。鑑賞後に参加したスタジオツアーでは、プロジェクターで蝋燭の影をカーテンに投影した作品を見ることができた。これは、かつて瀬戸の町に点在した窯の煙突に見立てた作品であり、また蝋燭は溶けて消えゆくものという点が、瀬戸の窯業の衰退と重ね合わさる部分があった。
【ファシリテーター・レポート】藤田尚之
【鑑賞時間】25分