小5女児の放った言葉「ウザイ」

最近ふと思い出した事がある。

あれは私が小学校5年生で、社会科の授業を受けていた時だ。

その日のテーマは「女性の社会進出について」

教科書と資料集、プリントを机めいっぱいに広げて先生の話している様子をぼんやり見ていた。

当時の担任の先生は大体30前半ぐらいの若い見た目の男性だった。中々爽やかで、時には熱い熱血漢だなという印象が強い。

今日もハキハキと元気な声が響く。そんな先生が子供たちに伝えていたのは次のような内容だった。

「これからは女性もずっと働いていく世の中になります。」「育児と仕事の両立。」「折角、昔の人が選挙権を男女平等に与えてくれました。君達はとても恵まれた環境に居るんだ。」

確かにそうだろう。あの授業から10年程経過したが、大きくは離れていない。だが、その説明が終わった後、あの和やかな空気は急に緊張感が増した。

「では、そういった時代が来る事に対してどう思いますか?女性の誰か、発表して下さい。」

きっと先生の中では誰かしら手を挙げるだろう、そういった計算の元問いかけをした筈だ。

だが実際には、誰も手を挙げなかった。そして、女の子は全員下を見て、机を見つめた。

これを書いてる私も女である。そして当時の私も机を見た記憶がある。

隣の席の女の子を、横目で見ながら様子を伺う。

まるで、顔をあげたら弾丸が飛んでくるような空間だった。

別に、どう思うかなんて自由だ。思ったことを言えば良い。各々思い付いていただろう。だが、この場で求められている事は個人の想いでは無くて、模範解答であったと考えた。

きっと、先生が望むのはこういう答えだろう。
「はい、これからは女性も男性と平等に働けれるようになるので頑張ります。」とか「いい時代になりました。」とかである。

だがまぁ、分かっていた。仕事が平等にできるのは良い。だけど家事はお母さんがするものだと。そして、そこを平等にすることを男性に求めたら、可愛げが無い子のレッテルが貼られる事。要は、全然いい時代とは思えなかったのだ。少なくとも私はそう考えていた。

出る杭は打たれるのだ。ここで口火を切り、先生の模範解答を言っても女の子は疑問に思う。では、自分の意見を言えば先生が微妙な顔をするだろう。どっちにしろこれは、答えたらどちらかに悪い印象を植え付けてしまうのだ。

かなり長い時間が過ぎている、そして業を煮やした先生が個人、個人に当て始めた。女子だけに。

「○○さん、どうですか?」

「分かりません。」

「っ、そうですか。では、その後ろの△△さんはどう思いますか?」

「分かりません。」

このやり取りは10人以上繰り返された。段々先生がイライラしているのが分かる。まだ当てられていない子は、その空気で震えているように見えた。

そして私は何だかもう馬鹿らしくなってきた。

何故、そこまで、言わせようとするのか、理解できなかった。

いよいよ、教室の1番隅の、クラスの最後の女子の私の番になった。

私は、模範解答を言えばよかった。でも、言ってしまった。

「ウザイ。」

そして、教室の空気は一気に爆発した。

「ウザイとはなんだァあああああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ。」

まぁ、それはそうである。目上の人に対してかなり失礼である。よく殺されなかったな、と今でも思う。当時は知らなかったが、先生という仕事は大変だ。授業もしっかり考えた彼の努力の結晶だ。それを、ぶち壊したし、踏みつけた。私がしたのはそういう事だ。

その後はまぁ、凄かった。教師を今までしてきて、お前が初めてだ。ウザイと言ったやつはとか。そもそもなんでお前達は、分からないって言うんだとか。先生は叫ぶ。悲痛な叫びだ。

そして、クラスの皆は私を見ている。お前のせいだぞ。っていう視線の意味は嫌でも分かった。男子も、女子も、先生も色んな感情を出した。

公開処刑ってのはきっとこういうことなんだろうなと身に染みた。

人の感情と付き合うのって難しいですね。人に押し付けれる人は良いですね。

私は空気が読めないやつなんでしょうね。でも、私は答えました。自分の意見。

きっとこんな私はクズだし、幼い頃から始まってたんだなと思う。

難しいものですね、生きるというのは。

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