ただ、良いものを創り続ける┃UNKNOWN PRODUCTSさん インタビュー
現在、浅草ものづくり工房を拠点としてUNKNOWN PRODUCTSというプロダクトブランドで企画・製作をしている、髙手 祐弥さんにインタビューさせていただきました。
UNKNOWN PRODUCTSについて
ーUNKNOWN PRODUCTS立ち上げまでの経緯を教えてください。
大学で建築を専攻し、卒業後は洋服が好きだったので、自分の洋服を自分で作ってみたいと思い、独学でテーラーリングを学び始めました。
しかし、洋服を作った経験は全くなかったので、正直何から手をつければいいかも分からず、自分の持っている洋服を解体して、どうやって作られているのかを調べてみたり、触ったこともないミシンを購入し、ひたすら作っていました。
その後、2010年に、メンズアパレルブランドYUYATAKATEを立ち上げました。立ち上げてからも、アパレル業界の商習慣や仕入先、工場など、右も左も分からなかったので、卸先を見つけるまで大変でした。
YUYATAKATEでは、メンズの洋服をメインで製作していましたが、"Leather reproduction of the bag in the street."(街中で見かけたバッグをレザーでリプロダクトする)シリーズとして、レザーペーパーバッグをはじめとした皮革製品等の小物も製作ようになり、皮革製品やプロダクトについてももっと幅を広げていきたいと思うようになりました。
そこで、ラインを一度見直し、洋服は洋服、皮革製品等の小物は小物としてブランドを分けることにしました。もともとレザーペーパーバッグの製作を依頼していた友人の革職人である藤原 拡くんと2019年にUNKNOWN PRODUCTSをスタートしました。
ーUNKNOWN PRODUCTSのブランド名の由来やコンセプトについて教えてください。
ブランド名や製作者にとらわれず、製品を見てほしい、という想いを込めて、「名前のない、不明の~」などの意味を持つ、“UNKNOWN”という表現を使っています。
”本当の良いもの"とは何だろう?と考えた時に、どこのブランドとか誰が作ったとか...そういったラベルとは関係なく手に取ってもらえるものだと思っていて、そういう製品を残していきたいと考えています。
この考えは、立ち上げ当初から今もずっと変わっていませんし、YUYATAKATEの時からも軸としてきたことです。
また、私たちの製品に触れて感じてもらいたいという想いを込めて、ブランドのロゴには点字を使用しています。
ーものづくりについてのこだわりや特徴を教えて下さい。
特徴はデザインプロセスが一般的なプロセスとは違っているところだと思っています。
アンノウンプロダクツのデザインプロセスは、具体的で明確なコンセプト(言葉)からスタートします。
次に、その言葉を具現化する為の素材や形、構造、縫製方法などを決めていきます。
その為、企画の段階では完成形が見えていないことが多いですし、既に世の中に存在しているものでは無いので、度々問題も起こりますが、それを解決することで、他のブランドには無いアンノウンプロダクツオリジナルの製品が出来上がると思っています。
僕は「他のブランドでやっていることは他のブランドの人に任せればいい」という考え方なので、アンノウンプロダクツだからこそやる意味があると思うことを企画するようにしています。
もちろんアウトプットした結果、他のブランドと似たものが出来上がることもありますが、そこに行き着くまでの過程や考えが、アンノウンプロダクツのオリジナルのものとなるようにしています。
素材は国内外のタンナーさんからそのコンセプトにあったものをオリジナルで製作する、または厳選して仕入れています。パーツもそのコンセプトを具現化するパーツが無ければオリジナルで作っています。
生産も普通の収まりの製品が少なかったりするので、プライドを持って仕事をしている職人さんにお願いするようにしています。
また、僕自身が企画やデザイン、サンプル製作といった全ての工程を一度行って、納得したものだけを製品として発表するようにしています。
僕自身が全ての工程を一度行う理由は、僕自身が製品を完成させるまでの全てのことを理解していないと仕入れ先や工場の方々と対等にお話ができないですし、生産してくれる方の気持ちや苦労が分からないと思っているからです。
そのように、アンノウンプロダクツの製品が出来上がるまでには多くの人が関わっていただいているので、その人たちもアンノウンプロダクツの一部だと考えています。
そんな想いから、アンノウンプロダクツとして発言する時には一人称に「私たち」を使っています。
ーLeather Paper Bag(革で作られた紙袋)について教えてください。
現在、UNKNOWN PRODUCTSの主力商品となっているレザーペーパーバッグは、2013年にYUYATAKATEの製品の一つとしてスタートしました。
街中で女性たちがブランドの紙袋を、バッグ代わりに使っている姿から着想を得て、「紙袋をレザーでつくってみたら面白いんじゃないか?」と思いつきで製作したのですが、意外と女性からの反応が良く、徐々に女性向けのセレクトショップで取り扱われるようになりました。
当初は、"Leather reproduction of the bag in the street."(街中で見かけたバッグをレザーでリプロダクトする)シリーズとして、ヌメ革にペンキを塗るというスタイルで製作をしていましたが、シーズンによって素材や仕様を少しずつアップデートしており、現在はクロム鞣の革をオリジナルで染めていただいた素材を使用しています。
その素材を限界の強度まで薄く漉いて、意匠を紙袋の様に仕上げているだけではなく、構造や仕様も紙袋と同様にし、折り目や中敷等の再現にもこだわって製作しています。
また、紙袋の良さと革のバッグの良さが両立できるような、そんな絶妙なバランス感を意識してデザインしています。
現在は、カラーとサイズのバリエーションを増やして、2サイズ×10色で展開をしています。
紙袋のほかにも、ケーキの箱やピザの箱、ポテトの箱等、様々なものを革で製作しています。
ーコロナ禍はどんな影響がありましたか?
新型コロナウィルスが流行り始めた頃は、緊急事態宣言でポップアップストアが1日で終了するということもありました。
しかし、コロナ禍は、販売方法を見直すきっかけになり、今までよりもECサイトでの販売に力を入れるようになりました。ECサイトやSNSの改善や、インスタグラム広告も実施しました。
アンノウンプロダクツでは、ペルソナやターゲットは細かくは設定していませんが、卸先様は女性向けのセレクトショップが多いこともあり、レザーペーパーバッグは女性の方が反応が良いと思っていました。
しかし、インスタ広告を実施してみると、意外と男性の反応も良かったのが興味深かったです。
今後は、広告の結果などもふまえて、さらに多くの人に知ってもらえるように工夫して発信していきたいです。
ー今後の展望を教えてください。
レザーペーパーバッグを、僕が作り始めた当時は、「レザーの紙袋」というのが異質なものだったのか、あまり反響は大きくありませんでした。
ただ、近年は、ハイブランドでも、同じようなレザーの紙袋が販売されていたり、世の中的にもバッグとして扱われるようになってきているので、売上も少しずつ伸びています。
アンノウンプロダクツでは、レザーペーパーバッグ以外のバッグや小物も作っていますが、今後はレザーペーパーバッグにさらに力を入れていきたいと考えています。“レザーの紙袋 = 珍しいもの”みたいな感覚ではなく、”みんなの定番のもの”になってくれると嬉しいです。
また、今後もビジネス面はしっかり考えながら、アンノウンプロダクツの軸である”一過性のものづくりではなく恒久的なものづくりをする”事をブラさずにいきたいです。
刺繍ブランド"SOUVENIR SHOP"始動
近々、新たに"スーベニアショップ"という刺繍ブランドもスタートするので、そちらも力を入れていきたいです。
“スーベニアショップ”は、”自分に買ってあげる「お土産」”がコンセプトのPOPな刺繍屋さんです。
刺繍のイラストは、食べ物や乗り物、動物だけでなく、日常で見かける一風変わったものまで、100種類以上用意する予定で、Tシャツやパーカー、靴下などのアイテムに、好きな刺繍を組み合わせてオーダーできる形にしています。
子供から大人まで、楽しみながらお気に入りの刺繍を選んでもらえたら嬉しいです。
まずは、今年中にECサイトでの販売を開始し、今後はポップアップイベントなども実施していく予定ですので、是非楽しみにしていてください。
編集後記
髙手さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました。
ブランドコンセプトの部分からも分かるように、自身が表舞台に出ることに対して消極的な髙手さんから今回は貴重なお話を沢山聞かせていただきました。
お話の中から商品へのこだわりだけでなく、製作をしていく中で携わる皆さんへの敬意や感謝の想いを強く感じました。
普段日常で利用する物をあえて別の素材で製作するなど、世の中に一石を投じるような企画することが多く、しっかりとブレない軸を持つ髙手さんだからこそ、今後、時代の中心や定番となるものを創り上げていくことを期待させてくれます。
この記事は台東区産業振興事業団 商工相談担当 額田が担当いたしました。
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店舗情報について
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■SOUVENIR SHOP "スーベニアショップ"
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