見出し画像

本当の幸い

□景色
賢治が大切にしたことは、他人の悲しみを十把一絡げにするのではなく、その一人ひとりと向き合ってその人の悲しみを聞きなさいということ。それを自分の責任として感じ、その人のために何かをする。そういう小さな善意を、本当に大事にした人だった。

□本

『100分de名著 宮沢賢治 銀河鉄道の夜』
ロジャー・パルバース NHK出版 2012年

□要約
「雨ニモマケズ」の詩でもそれはうかがえる。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
「雨ニモマケズ」

この詩には大切な部分がたくさんあるが、強いて最も重要なキーワードを探すなら「行ッテ」という言葉。

東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
「雨ニモマケズ」

ただ口先で相手の幸せを祈るのではなく、自分の体を使って相手のためになにかする。そうしないと相手は幸福にならないし、相手が幸福にならないと自分も幸福にはならない。「行ッテ」は、彼の生涯を象徴する大切な言葉。

賢治なりの真実は、相手の幸福のために行動すること。そうすることで自分も幸福になれると信じた。

誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ。
『銀河鉄道の夜』

すべての人に、なにかできることがある。世界を自分なりにとらえ、自分にできることはなにかを問い、実際の行動に移していく。これこそ、自分の信念と使命にその短い生涯を燃やした宮沢賢治が今を生きるすべての人に送るメッセージ。

いいなと思ったら応援しよう!