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【コーチング講座#4】GROWモデルとは?
ビジネスの世界で注目を集めるコーチングですが、その中でも最低限のコーチングのモデルであるGROWモデルについてご紹介します。
本記事では、GROWモデルの基本から実践的な活用法、注意点まで詳しく解説します。さらに、他の有効なコーチングモデルもご紹介します。
具体的な質問例も載せているのでぜひ最後までお付き合いください!
GROWモデルの基本
GROWモデルは、目標達成へ導くビジネスコーチングの手法です。質問を通じて相手の考えを引き出し、4つのステップで目標到達をサポートします。GROWという名前は、各ステップの頭文字から来ています。
目標設定 (Goal)
現状把握 (Reality)
選択肢の検討 (Options)
行動計画 (Will)
目標設定(Goal): 理想の姿を描く
まずは、クライアントに理想の状態をイメージしてもらいます。目指すゴールが明確になれば、具体的な目標設定がしやすくなります。現在地と目標地点の距離感も把握できるでしょう。
現状把握(Reality): 今をしっかり見つめる
次に、クライアントの現在の立場を確認します。目標達成を妨げる要因も洗い出します。同時に、持っているスキルや人脈など、目標達成に役立つリソースも整理します。
選択肢の検討 (Options): アイデア、選択肢を広げる
ゴールと現状のギャップを埋める行動案を、クライアント自身に考えてもらいます。コーチは助言を控え、クライアントが自由に発想できる環境を作ります。多くの選択肢が生まれると、モチベーションも高まります。
ここでのポイントは否定的な思い込みを外すこと、思考の枠を広げることです。
クライアントの思考の枠を広げることが重要です。特に、「時間がない」といった制約に縛られているケースでは、適切な質問で新たな可能性を開くことができます。
例えば、こんなシーンを想像してみてください:
部下:「新しいプロジェクトを始める時間がありません。現在の業務で手一杯です。」
マネージャー:「仮に十分な時間があるとしたら、このプロジェクトをどのように進めますか?」
この質問により、部下は時間の制約を一時的に忘れ、創造的に考え始めます。その結果、以下のような気づきが生まれるかもしれません:
既存の業務の効率化ができそうだ
優先順位の見直しが必要かもしれない
チーム内で仕事の再分配ができるかもしれない
このように、思考のフレームを変えることで、「時間がない」という否定的な思い込みを超えて、前向きな発想が生まれます。さらに、この過程で時間をかけずに目標を達成する方法にも気づきやすくなります。
行動計画(Will): 実行への決断
最後に、出てきた選択肢に優先順位をつけ、期限を設定します。クライアント自身が具体的な行動計画を立てることが重要です。コーチは指示を出さず、クライアントの主体性を引き出すよう心がけます。
GROWモデルを活用することで、クライアントの自主性を尊重しながら、効果的な目標達成をサポートできます。
GROWモデルを活用するメリット
GROWモデルを取り入れたコーチングには、クライアントのアクションを促す様々な利点があります。ここでは、主な3つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
1. クライアントのやる気を長続きさせる
コーチからの一方的な指示では、クライアントのモチベーションは長く続きません。一方、GROWモデルを使うと、部下自身の目標として捉えられるため、やる気が持続しやすくなります。
自発的な目標設定: 部下が自ら目標を決めることで、内発的動機づけが高まります。
困難への対応力: 自分で決めた目標があると、壁にぶつかっても乗り越える力になります。
2. クライアントの当事者意識を育てる
他人から与えられた目標では、本当の願いとつながりにくく、当事者意識を持ちづらいものです。GROWモデルを使うと、部下自身の願いと仕事のつながりを見出せます。
自己認識の深まり: 自分の本当の願いと業務の関連性に気づくプロセスを体験できます。
宣言効果: コーチングの場で目標や行動を口に出すことで、実行への意識が高まります。
3. クライアントの責任感を後押しする
GROWモデルで決めた行動は、クライアント自身が主体的に選んだものです。そのため、責任を持って取り組む姿勢が生まれやすくなります。
具体的な行動計画: 願いを具体的な行動に落とし込むことが大切です。
自己決定の重要性: 部下自身が答えを見つけることで、真の責任感が育ちます。
GROWモデルを活用したコーチングは、部下の自主性を尊重しながら、長期的な成長と高いパフォーマンスを引き出す効果的な手法です。
GROWモデルの質問一覧:効果的なコーチングのために
GROWモデルを活用したコーチングでは、適切な質問が重要です。各ステップで使える質問例を紹介します。これらを参考に、相手の状況に合わせて質問を選んでください。
1. 目標設定 (Goal)
GROWモデルの「Goal(目標)」ステップでは、クライアントの理想の状態や具体的な目標を明確にすることが重要です。以下に、目標設定を深めるための効果的な質問例をまとめました。
理想の状態を描く
「理想の状態はどんな状態ですか?」
「現在、一番達成したい目標は何ですか?」
「あなたが欲しい成果は、具体的に何ですか?」
目標の具体化
「成果が手に入ったと何でわかりますか?」
「成果の他に副産物として手に入ることは何ですか?」
イメージの拡大
「理想のモデルは誰ですか?」
「もし仮に理想の状態になったら、あなたにどのような影響がありますか?」
「もし仮にすでに成果が手に入っているとしたら、組織はどう変化していますか?」
長期的視点の導入
「あなたが人生の中で、どうしても実現したいことは何ですか?」
「今年が生涯で忘れられない1年だったとしたら、何を実現していますか?」
これらの質問を活用することで、以下の効果が期待できます:
クライアントの内なる動機を引き出す
漠然とした目標を具体化する
目標達成後の影響を考えることで、モチベーションを高める
短期的な目標と長期的な展望をつなげる
2. 現状把握 (Reality)
GROWモデルの「Reality(現実)」ステップでは、クライアントの現状を正確に把握し、目標達成への道筋を明らかにすることが重要です。以下に、現状把握を深めるための効果的な質問例をまとめました。
現状の評価
「現在、できていることとできていないことは何ですか?」
「理想の状態を100点として、現状は何点ですか?」
「現在起きている課題は何ですか?」
ギャップの分析
「やりたいけどやれていないことは何ですか?」
「目標達成のために、すでにやっていることは何ですか?」
「成果を手に入れることを止めていることは何ですか?」
リソースの確認
「あなたがすでに持っているリソースは何ですか?」
「成果を手に入れるために、さらに必要なリソースは何ですか?」
取り組み状況の確認
「その目標について、どのぐらい考える時間を使っていますか?」
「協力してくださる方は、どのぐらいいますか?」
これらの質問を活用することで、以下の効果が期待できます:
現状と目標のギャップを明確にする
既存のリソースと不足しているリソースを特定する
目標達成を阻害している要因を発見する
クライアントの取り組み姿勢を確認する
3. 選択肢の検討 (Options)
「Options(選択肢)」ステップでは、クライアントの思考の幅を広げ、様々な可能性を探ることが重要です。以下に、選択肢を拡大するための効果的な質問例をまとめました。
サポート体制の確認
「解決のためにサポートしてくれる人は誰ですか?」
「どのようなシステムがあると、あなたは実現しやすくなりますか?」
理想状態へのアプローチ
「何があると100点に近づきますか?」
「実現可能な状態にするためには、何が必要ですか?」
仮想シナリオの探索
「もし仮にすでに実現したとします。あなたは何を克服したでしょう?」
「必要な条件が全て整っていると仮定します。何から始めますか?」
「もしあなたが社長だったら、組織をどのように変えますか?」
異なる視点からの考察
「もし、あなたの尊敬するメンターなら、どのような行動をしますか?」
「もし仮にあなたが相手の立場だったら、何を求めますか?」
小さな一歩の特定
「昨日よりも1歩前進できたと思うには、何をしていますか?」
これらの質問を活用することで、以下の効果が期待できます:
クライアントの思考の枠を広げる
新たな視点や可能性を発見する
障害を克服するための創造的なアイデアを生み出す
具体的な行動計画のヒントを得る
4. 行動計画 (Will)
GROWモデルの「Will(意志)」ステップでは、具体的な行動計画を立て、実行への意志を強化することが重要です。以下に、行動計画の策定と意志の強化のための効果的な質問例を5W1Hの観点から整理しました。
What(何を)
「セッション終了後、何から始めたいですか?」
「次回のセッションまで何に取り組みますか?」
「ここまで話してみて、挑戦してみたいことは何ですか?」
「ビジョンに近づくために、今からできることは何ですか?」
When(いつ)
「いつから取り組みますか?」
「いつまでに実現したいですか?」
Who(誰と、誰に)
「協力してもらいたい人は誰ですか?」
「成果を一緒に喜んでくれる人は誰ですか?」
「それを実行することを誰に伝えますか?」
Will(意志)
「成果を出すことは、あなたの人生にどのような意味がありますか?」
「もし、それを実現したらどのような気分ですか?」
「本当にその成果を手に入れたいですか?」
これらの質問を活用することで、以下の効果が期待できます:
具体的で実行可能な行動計画を立てる
時間軸を明確にする
サポート体制を構築する
目標達成への意志と動機を強化する
5.実行プランの最終チェック:GROWモデル「Will」ステップの仕上げ
GROWモデルの「Will」ステップの最後に、実行プランの実現可能性を評価し、必要に応じて修正を行うことが重要です。以下に、このプロセスを効果的に進めるためのガイドラインをまとめました。
1. 自己評価の実施
クライアントに実行プランへの取り組みを10点満点で評価してもらいます。
「あなたの実行プランに対する自信度を10点満点で評価してください。」
2. 評価の分析
評価が10点未満の場合、その理由を探ります。
「10点をつけられない理由は何ですか?」
3. 修正プランの作成
不足している部分を明確にし、それを克服するための行動を含めた修正計画を立てます。
「10点に近づけるために、どのような調整が必要だと思いますか?」
4. 柔軟な調整
必要に応じて、達成期限の延長や計画の規模の縮小を検討します。
「目標達成の期限を少し延ばすとしたら、どのくらいが適切だと思いますか?」
「日々の実行項目の中で、優先度が低いものはありますか?」
5. 再評価
修正後のプランを再度評価してもらいます。
「修正後のプランの自信度は何点になりましたか?」
6. 最終判断
8点以上になるまで修正を続けます。
8点以上にならない場合は、プランそのものの再考を検討します。
重要なポイント:
評価は客観的な指標ではなく、クライアントの自信度を表すものです。
低評価の理由を探ることで、潜在的な障害や不安を特定できます。
柔軟な調整を行うことで、より実現可能性の高いプランになります。
8点以上を目指すことで、高い実行力と成功の可能性を確保します。
このプロセスを通じて、クライアントは自信を持って実行できるプランを手に入れることができます。同時に、自己評価と修正のスキルも身につけられ、今後の目標設定と達成にも活かせるでしょう。
GROWモデルを効果的に活用するための3つの注意点
GROWモデルはクライアントの自主性を引き出す優れた手法です。しかし、効果的に活用するには、いくつかの注意点があります。以下の3つのポイントを押さえて、GROWモデルを実践しましょう。
1. クライアントの自己決定をサポートする
部下が自分で決断できるよう支援することが重要です。
焦らず待つ: 質問への答えがすぐに出ないこともあります。もどかしさを感じても、部下の思考を待ちましょう。
個性を尊重: クライアントの答えが自分の考えと異なることも多いです。これは自然なことです。
納得感を大切に: クライアントが本当に「やりたい」と思える目標になっているか確認しましょう。
2. 継続的にフォローする
目標設定後も、定期的なサポートが欠かせません。
進捗確認: 定期的な1on1ミーティングで、目標達成の進み具合を確認します。
行動の再確認: 必要な行動を振り返り、適宜調整します。
長期的視点: 1回で終わらせず、継続的な関わりを持ちましょう。
3. 適切な場面で活用する
全ての問題にコーチングが適しているわけではありません。
最適なテーマ: 重要だが緊急性の低い課題がコーチングに向いています。
緊急時は別対応: 「新しい業務の進め方がわからない」など緊急性の高い問題には、直接指示が適切です。
コーチングの特徴理解: コーチングの特性を正しく把握し、適切なテーマ設定をしましょう。
GROWモデルを上手に活用することで、部下の成長と組織の発展を効果的にサポートできます。これらの注意点を意識しながら、柔軟にアプローチすることが大切です。
GROWモデル以外のコーチング手法:3つの効果的なアプローチ
コーチングには、GROWモデル以外にも様々な手法があります。ここでは、ビジネスシーンで活用できる3つのモデルを紹介します。
1. CLEARモデル:段階的な目標達成プロセス
CLEARモデルは、コーチングを5つのステップで進める手法です。
Contract(契約): 目的や期間、方法を明確化
Listen(傾聴): クライアントの話をよく聞く
Explore(探求): 可能性を広げる
Action(行動): 具体的な行動を起こす
Review(振り返り): 結果を評価する
特徴:
初めに明確な契約を結ぶ
ステップを順に進め、確実な目標達成を目指す
2. OSKARモデル:解決志向のアプローチ
OSKARモデルは、ソリューションフォーカスドコーチングに基づいています。
Outcome(目標): 望む未来を描く
Scaling(尺度): 現状とのギャップを数値化
Know-how(ノウハウ): 強みや成功体験を活用
Affirm and Action(肯定と行動): 行動計画を立て実行
Review(振り返り): 行動を振り返る
特徴:
クライアントの強みに焦点を当てる
数値化によって進捗を可視化する
3. SCARFモデル:脳科学に基づくアプローチ
SCARFモデルは、脳内の反応に着目した手法です。
Status(状態): 社会的地位や評価
Certainty(確かさ): 予測可能性
Autonomy(自律性): 選択や決定の自由
Relatedness(関係性): 他者とのつながり
Fairness(公平性): 公正さの認識
特徴:
チーム内の不安や恐怖の要因を分析
安心できる環境づくりの指針となる
これらのモデルを状況に応じて使い分けることで、より効果的なコーチングが可能になります。各モデルの特徴を理解し、適切な場面で活用しましょう。
まとめ
GROWモデルは、目標設定から行動計画まで、部下の自主性を引き出す優れたコーチング手法です。各ステップに合わせた適切な質問を投げかけることで、相手の思考を深め、自発的な行動を促します。ただし、クライアントの自己決定を尊重し、継続的なフォローを行うことが重要です。
コーチングスキルを磨き、クライアントの成長をサポートすることは、組織全体の発展につながります。本記事で紹介した手法を実践し、より良いリーダーシップを発揮してください。
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