自転車日本一周の旅55日目
爆睡していると、ダースベイダーのテーマソングが聞こえてきて目が覚めた。音は斜め前の部屋から来ている。どうやらめざましのようだが、当の本人は唸り声のようないびきをかいていて一向に目覚める気配がない。
少ししたら止んだが、カプセルホテルで目覚ましをセットするというのはなかなか勇気がいることだと思う。僕には絶対にできない、と思ったらまたダースベイダーのテーマソングが流れてきた。笑ってしまった。
狭い空間にも慣れたので、寝転びながらスマホをいじっているとN先輩から連絡がきた。N先輩は大学のバレーボールの授業で仲良くなった方で、今は大分県で高校教師をやっている。僕のインスタを見て連絡してくださったそうだ。
「おいしいもの食べた?」と訊かれて、昨日は晩ご飯にカップラーメンを食べたことを思い出した。「カップラーメン食べました」というと、「なんじゃそりゃ笑」と先輩は苦笑いしていた。
お昼に合流して、先輩いきつけのお寿司屋さんでランチをすることになった。支度をしたあと、先輩に言われたお店にゆっくり向かう。
寿司屋の前で先輩と合流。先輩と会うのは2年ぶりくらいだが、まったく変わった様子はなく、元気そうだった。
毎週東京で会っていたので、やはり地方で会うのは違和感がある。
寿司屋に入った。お店の名前は「亀正くるくる寿司」。
かなり反省しないといけないのだが、せっかくのお寿司なのに写真を一枚も撮っていない。寿司を見たら嬉しくなってしまい、食べるのに集中してしまったのだ。どのネタも新鮮で、本当に美味しかった。
先輩は大分県の高校で体育を教えているそうだ。僕が二日目に野宿した場所の近くに学校があるという。こんなに元気よくて優しい体育の先生がいたら、体育の授業は楽しいだろうな、と思った。
お寿司を食べながら、これまで見た景色の話やこれからのことについて話をした。最後にNさんからカボスのジュースをいただく。Nさんご馳走様でした!楽しかったです!
その後、ぶらついていたら足湯ならぬ「足蒸し」があった。出発前に入ってみる。両足を突っ込んでそこに木の蓋をかぶせるのだが、じんわりと体が温まる感覚がとても心地よかった。
少しのんびりしたあと、出発した。別府は最高の街だった。次はまたゆっくり来たい。由布院にも行ってみたい。エッチな女の人と。もしくは野郎どもと。
あとはひたすら移動。別府の街並みを背にし、山に入っていく。途中急な坂道があったが、ヒーヒーいいながら無事にクリアした。
この旅を通して、継続は力なりだと痛感する。
昼過ぎに出発したので、坂を下る頃には15時を過ぎていた。
宇佐市にある小さなスーパーでコーラとカップ焼きそばを買い、稲が刈られたあとの田んぼを見ながら食べる。陽の光もだいぶ柔らかなものになった。秋特有の静けさと澄んだ空気が好きなので、住宅街の中をのんびりと漕ぎながら進んだ。
夕方過ぎに福岡県にイン。鹿児島市にはいけなかったが、無事に九州を一周した。
近くのスーパーでカツオのたたきや刺身などを買って、道の駅で食べる。道の駅は坂の上にあり、周囲にはなにも建物がないのではっきりと星空を一望できた。
下町のナポレオンを飲みながら、ボーッとこの数日間のことを思い出していた。いろんな場所に行ってさまざまな景色を見て、多くの友達に会い、たくさんの知らない人と喋った。
僕は小さい頃から周囲の人に恵まれていると思っていたが、この旅に出てそのことを痛感する。本当に、本当に楽しかった。
いよいよ、旅の終わりが見えつつある。明日本州に入り、そのまま地元を目指す。北海道以来トラブルもなく来れているので、何事もなく家に帰れたらと思う。下町のナポレオンを飲んだあと、歯磨きとトイレを済ませて寝た。
生きます。