見出し画像

自転車日本一周の旅62日目(最終日)

朝早くに目が覚めた。仕事の支度をしていたW先輩が「もう少し寝てっていいぞ」と言ってくれたが、目が覚めて眠れそうになかった。先輩が仕事に出るタイミングで一緒に家を出た。ありがとうございました!

画像1

新大阪の街並み。写真じゃ伝わらないけど、とても晴れていて爽やかだった。ビル群を抜け、川沿いに出て走る。朝日が気持ちよかった。

住宅街の中をゆっくり走り、国道1号線に合流。関西大学の横を通り、高槻へと向かう。少しずつ、旅の終わりに近づいているのを実感する。

お腹が空いたのでコンビニに寄る。朝からカップ焼きそば大盛と、野菜ジュースと缶の500mlのコーラを買った。

自転車を漕ぎ、1日に2500カロリーを消費するからこそできるこの食生活。もう朝飯にカップ焼きそばはないと思うので、朝日を浴びながらしっかりと味わった。おいしい。

昼ごはんは京都ラーメンにしよう、とか思いながらのんびり出発した。高槻駅を通り、駅を通過して、お昼前に京都府にイン。

さあ、あともう少しで終わりだ!がんばろう!

画像2

と思ったところでパンク。どうやらパンク週間に入っていたらしい。今日で旅終わりなのに。

パンクを修理しているとなんだか笑えてきた。冷静に考えて、相棒はこの旅で6000キロ以上も一緒に走ってくれたのだ。重い荷物を背負って。いろんな景色を一緒に見た。事故ったときも潰れずに耐えてくれた。ただただ、感謝しかない。

あと少し、一緒に頑張ろう。

パンクを直し終えて出発。京都市内に入る。ご飯をどうするか悩んだ挙句、あまりお腹が減っていなかったので実家で食べることにする。

そのまま五条を突っ切って清水寺の近くを通り、山を超えて山科に出た。

このとき午後の3時。朝からなにも食べていなかったので、さすがにちょっとお腹が空いてきた。

母には夕方に着くと言っていたが、からふねやを見つけたので、最後にパフェを食べて帰ることにする。

からふねやはパフェがたくさんある天国だ。甘いものは別にそこまで好きじゃないけど、からふねやはテンションが上がる。

画像3

パフェを食べた。この旅のファイナルメシはパフェ。ただただ至福だった。

食べ終えたあと、ゆっくり出発。

そして逢坂の関を超えて滋賀県に入った。最後だから滋賀県の標識を写真に収めようと思っていたのに、ぼけーっと坂を下っていたら大津駅の近くを通過していた。どんまい。

そのまま坂を下り、琵琶湖ホテルの近くに出る。ここからはもう、地元オブ地元である。通りを北上していく。

だんだん暗くなってきた。事故らないように気を引き締めて走る。スピードを出したいような出したくないような。ああ、まだまだエネルギーが有り余っている。もう旅が終わるのが信じられない。今日もどこかで野宿しているような気がする。

画像4

真っ暗な道を抜けると、そこはソープ街だった。古ぼけたネオンのギラついた感じがたまらない。ついに地元に着いた。

駅前に入る。あとは長い坂を1つ登れば、もうこの旅は終わりだ。

坂の入り口にさしかかる。いままで長いと思っていた地元の坂。だけど軽井沢や箱根に比べたら、終わりが見えているだけ全然マシに思えた。

最後は全力で登りきろうと思った。

息を整える。そして坂の頂上を見るとペダルを強く踏み込んだ。ギアは重たいままに、平坦な道を走るように自転車を走らせる。太ももに乳酸が溜まっていく。しんどかったが、晴れやかな気分だった。

僕はいま、日本を走りきろうとしているのだ!そしてその最後が、地元の坂なのだ!

坂の終わりが見えた。やっぱりまだまだ走りたかった。このまま地元を通過して、また旅に出ようか?そんな考えがよぎる。ああ、でも東京で友達と遊ぶ約束してたんだ。待ってくれている人がいる。

坂を登り切った。すぐに実家が現れる。ああ、走り切ったんだ!ふと見ると、母親と母親の友達たちが実家の前でゴールテープを持って立っていた。

僕に気づくやいなや、おばさんたちの歓声が上がった。

なぜこの人たちはここにいるのだ、そして名前の知らない人がいるけどこの方は誰なんだ!

そう思いながら、そのままゴールした。

なにか特別な感情が込み上げてきて泣いたらどうしようと思ったが、旅が終わった実感というのがあまりなかった。

そのうえ、おばさんたちが「4時からスタンバイしてたんやで」とか「ようやったなあ!」とか「すごいわほんまに!」と僕にマシンガンのように言葉を浴びせてくるので、全然余韻に浸れなかった。

でも、それでいいのかもしれないと思った。

画像5

あたたかい風呂に入り、母がつくったハンバーグを食べ、ゴロゴロ寝転がりながらテレビを観た。意外とすんなり日常に馴染めた。とっても不思議なくらいに。

テレビから、マチャミが皿うどんを食うシーンが流れた。それを観ていてふと、この旅で見た景色、出会った人、感じた温度、嗅いだ匂い、そして辛かった場面や楽しかった時間が走馬灯のように蘇ってきて、泣きそうになった。マチャミが皿うどんを食っているだけなのに。

やりきったんだな。おれ、今まで人生で頑張った経験あまりなかったけど。やり遂げた経験あまりなかったけど。おれ、走り切ったんだよなあ。旅、してたんだよなあ。明日から、テント畳まなくていいんだ。

なんか不思議な気分だった。この旅で得たものは、ぱっと見で筋肉くらいしかなくて。他にも何か得たような気がするし、だけどイマイチ目には見えないから、自信は持てない。

でも感じたのは、おそらく旅というのは人生をギュッと凝縮したやつなんだと思う。縮図みたいな。挑戦すれば応援してくれる人がいて、バカにする人がいる。近くにいてくれる人、手を差し伸べてくれる人を大切にしていきたいと、そんなことを考えてみました、日本一周したんでね。さすがに悟りたいですわ。

そして自分は、頑張っている人をバカにせず、応援する側の人間でありたいと思った。

ああ、明日からは何をしよう。
とりあえず就職先の課題はやらない。来月くらいからやる。明日はめっちゃ寝て、ご飯をたくさん食べて、観たかった映画をバーっと観て、読みたかった本をバーっと読もう。そうしよう。

少し休んでから、また違う景色を見るために走って行こうと思う。楽しんでいこう。

P.S. 日本各地でお世話になった皆様、本当にありがとうございました。おかげさまで完走できました。また遊びに行きます!

生きます。