夏休みの一幕
のどかな田んぼ道を歩く。二人の麦わら帽をかぶった少年。
空は晴れ、山の向こうには入道雲が見える。
夏本番ということもあって、気温は暑い。しかし、吹く風が体を優しく撫でることで不快感を覚えることはなかった。
「何する?」
「川でも行く?」
すでに夏によって上がっているテンションはこの何でもない会話すら楽しくさせている。
「昨日も行ったじゃんか、最近毎日行ってるし。」
「そうだっけか、まぁ楽しいからいいじゃん!」
「まぁそれもそっか! じゃ行こうぜ!」
毎日同じ提案を受けていることに一瞬飽きを感じたが、それもすぐに消えた。
なぜなら夏だから。
二人は田んぼ道を抜け、山のなかへ入っていった。
「そういえば、夏休みの宿題って終わった?」
「い〜や、俺は全然よ。お前は?」
「俺も全然。めんどくせーや」
二人してのんびりと話しながら山の中を歩いてゆく。
山中を歩いている中でテンションが上がった二人は、拾った棒を振り回しながらウキウキである・
「本当、夏休みってサイコー!」
「そうだね!」
「もうずっと夏休みが続けばいいのになー。もう、半分くらい終わっちゃってるよな」
「うーん、そうかもな」
「・・・・?」
隣の返答の歯切れが悪い。
ここで少し止まった。
「・・・・・・」
「どうしたの?」
少し先で麦わら帽の少年が不思議そうにこちらを向いている。
自分の中にあった違和感が徐々に溢れ出てきた。
あれ、ずっとこんな話してなかったか?
いつから夏休みだったっけ?
俺は小学生だっけか、中学生?
というか隣を歩いているこいつって誰だ?
「・・・・・」「おーい、早く行こうぜ」
「お前誰だ?というかここはどこだ?」
「何いきなり変なこと言ってんの。早く行こうぜ」
「すまん、一回答えてくんないか」
「あー、友達?じゃん」
「それ本当?」
「うん。てか、いきなりなんなんだよ。どうしたの?」
「い、いや。何でもない。」
少年の返答はどこか妙に納得できるものだった。
というよりは納得しないと、何か危険な感じがした。
再び二人は歩き出す。
しかし、一度感じた違和感は簡単に拭えるものではない。
「あ、あのさ!ごめん今日一回帰ってもいい?」
「いいよ」
この場を離れようと少年に言ってみる。
したら、案外すんなり帰れそうで驚いた。
「お、おう。お前はどうする?」
「俺は川で遊ぶよ。」
「そうか、気を付けろよー」
そういうと早足で山を降る。
山を降ると、目の前に先ほどまで歩いていた田んぼ道が見えた。
そこで歩いている友達を見つけた。
麦わら帽子の少年は知っている顔を見て安心した。
「おーい!」
その友達に手を振り駆け寄る。
こいつと遊ぼう。
それにしてもさっきは変な感じだったな。
まぁいいか。
なぜなら夏だから。
とりのこされた麦わら帽をかぶった少年は一人、山の中に立っている。
「あいつ誰だったんだ・・・・・」
そう、呟く。