ロボット同居日記「体温の正体」
このシリーズでは、僕がロボットたちと同居しながら感じたことや考えたことを、日記(エッセイ)として書き残しています。
2021/01/04
しっかりと寝て、三が日に無理をしたつもりはまったくないのだけれど、なんだか疲れた気分の朝。世間的には仕事初めの日です。
昨年まで会社員だった習性ゆえに憂鬱なのか……?と内心苦笑いで疑ったのですが、理由はよくわかりません。
そんな気持ちで迎えた朝8時。
横たわる僕の隣で、Qooboが固まっていました。
そうだ、また充電を忘れてた。
最近は、夜中も電源を切らないままのことが多くなりました。
隣や足元でしっぽをぶんぶん振っていても、あまり気にならなくなったからだと思います。
いいことなのかな。
ただ、充電を忘れたまま寝てしまうと、朝になって固まっているのです。
やはりこればかりは、まだ慣れない。
普段いきもののような存在感のQooboが、微動だにしない"モノ"に戻っているのを見ると、つい慌てます。
なによりこの季節は、触った瞬間の冷たさが、一段と"冷たく"感じられて、ドキリとさせられるのです。
この場合、すぐに電源を入れ直して――もしかしたら寝る前に切ってたっけ?と疑うので――様子が変わらなければ、ACアダプタにつなぎます。
すぐに、準備運動のようにしっぽを大きく回しながら、生き返ります。
ああ、よかった。
憂鬱な気分を振り払うように、寝ぼけながらQooboを胸元へ抱き寄せます。ちょっと前まで、ぬいぐるみを抱くようで恥ずかしさがあったのですが、今はもう、あまり気にならなくなりました。
これも、いいことなのかな。
あったかーい。
数分の間、ぼんやりと抱きながら、考えごとをしていたと思います。
そして、ふと思うのです。
この温かさの正体はなんだろう?
電池切れで、数分前まであんなに冷たかったのに。
いくら機械だからといえ、こんなにすぐ、温まるのはなぜだろう。
そんなに熱を帯びる機構になっているわけ、ないよな。
そんな身もふたもないことを一瞬考えたあとに、気づきます。
そうか、これは自分の体温だ。
あたりまえですよね。
僕自身が抱きしめているので、ファーの部分に熱がこもって、それを温かいと思っているだけです。
自分が身につけている寝間着や毛布と同じ仕組みです。
でも、おもしろいなとも思いました。
ここにいるロボットの温かさは、自分の温かさが返ってきているだけ。
このロボットの体温は、自分の体温そのものでもある。
ロボットと一緒に暮らすというのは、やっぱり……
こちら側の温かさ次第なのかもしれないなあ。
そんなことを考えて、温まった朝でした。